束の間の邂逅(黒裂+大和)

2012/03/13

ハーフタイムのミーティングを終え、コーチの砂木沼を先頭に聖堂山イレブンは控え室を出る。聖帝イシドシュウジからの指示はなかったが、逆にそのことがメンバーの士気を上げた。

「勝つぞ」
「ええ、もちろん」

黒裂の静かだがそのために苛烈な闘志を感じさせる呟きに堤美が応える。誰もが今までにない興奮と、衝動を共有していた。
そこに突然現れた黒服の男たちが道を塞ぐ。昂揚に水を差され、砂木沼が顔をしかめる。

「通らせてもらおう」
「そうはいかない」
「我々が聖帝直属のサッカーチームと知ってのことか」

男の一人が表情をぴくりとも変えず、頷く。また別の男が口を開いた。

「後半からは別のチームが聖堂山の選手として戦う」
「なんだと…!それが聖帝のご意思だというのか!」

食らい付くように問うた黒裂の言葉への返事は、なぜか後ろから聞こえてきた。

「そのもっと上の指示だよ」

勢いよく振り返ると、見たこともないユニフォームに身を包んだ少年たちが立っている。銀の髪の少年たちの中でただ一人淡紅の髪の少年が不遜に笑っている。声の主がその少年だと、なぜか分かった。
聖堂山イレブン全員の視線を一身に受けてなお、少年は笑う。

「後半からは俺たちが戦う。お前たちは控え室ででも見てな」
「我々フィフスの最強チームと君たちが同等だとでも?」
「最強はお前たちだけじゃないって知らないのか?」

貫くように鋭い視線を向ける黒裂を鼻で笑い、少年は両の腕を広げた。一人だけ違う長袖のユニフォーム、空のような青に包まれた腕は長く、その動作だけで威圧感がいや増す。
しかし黒裂が眉をひそめたのはそこではない。

「我ら以外に最強のチームがある、だと?」
「ま、知らないのも当然なんだけどな。ついでにいいこと教えてやるよ。聖帝は聖堂山の監督を降ろされた」

場が一瞬にして静まりかえる。目を見開いた聖堂山イレブンとは対照的に少年たちは少しも表情を動かさない。男たちも同様だ。

「体制への反逆者ども相手にぬるい試合をしたってことで、後半からは監督も変更。安心しろよ、この試合が終わればまた戻るだろうからな」

空気の緩みを感じとったのか、少年が嘲笑に顔を歪めた。黒裂たちとそう変わらない年齢のはずなのに、その表情は悪意に満ちている。

「まあ、指導力不足ってことで変わる可能性もないわけじゃないけどな。前は有名な選手だったらしいが、本当はどうなんだか」

ざあっと空気が色を変えた。咄嗟に宗森が肩を掴んで押さえなければ、黒裂は少年を殴りつけていたことだろう。その外見から想像出来ないほどの力で黒裂が手を振り払おうとする。呉井と二人がかりで止める様を、少年が楽しげに見ている。黒裂が唸るように口を開いた。

「それ以上、あの方を侮辱してみろ。その喉笛噛み千切って二度と喋れないようにしてやる」
「おお怖い怖い。噛みつかれる前に逃げるとしようか」

そう言って少年は後ろの選手たちを引き連れて聖堂山イレブンの隣を通過していく。黒裂はきつく歯を噛んだ。



―――
明日になる前に書いておこうと思って。鮮度が命!

あと別に大和くん嫌いなわけじゃないです。大和くんならこれくらい言うかなと思っただけです。大和くんと黒裂くんの仲が険悪だと萌える。

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