大きな猫(立聖)

2012/02/23

猫を拾った。
正確には転がり込んできた、というところだが。洗濯物を干そうと開けっ放しにしていたベランダの窓から入り込んで、ソファで寝ていた。白くて少し長めの毛の猫。ところどころに青みがかった緑色の毛が混じっているのが特徴か。
今も長い手足を小さく折りたたんで窮屈そうにソファに寝転んでいる。

「こらー、座れないだろ」

声を掛けるとぷいと顔を背ける。綺麗な顔をしているのに仏頂面ばかりで、勿体無いと思う。先がそり返った耳の付け根を指でなぞる。ぴくりと動く耳の輪郭をなぞるように指を動かすと、猫がこちらを向いた。

「嫌だったのか?」

眉を寄せているが、首は振らない。どういうことだろう。手を引こうとすると、節の目立たない指に捕まった。少し茶色の混じった黒い瞳がじっと見つめてくる。

「…もっと?」

何も言わない代わりに、この猫はいつも行動で示す。声を出さずに口が動いた。やれやれと内心で呟いて立向居は頭を撫でてやる。猫の頭は小さくて、立向居の大きな掌にかかればすっぽりと収まる。優しく手を動かすと、猫はうっとりと目を細めた。

「お前、名前はなんて言うんだろうね。きっと飼い猫だったと思うんだけど」

立向居はソファの横に座り込んだ。耳の付け根ばかりを繰り返しなぞると、猫が身体をよじる。手を離した隙に猫が起き上がって立向居に顔を寄せた。唇が触れ合うか触れ合わないかの距離まで近付いて、にいと口角を吊り上げ、すっと離れた。

「…このイタズラっ子め」

猫の頬に手をあて立向居は覆いかぶさる。にんまりと笑う猫の腕が首にかけられた。



―――
立向居と猫豪炎寺、その3。この話だけパラレルっぽい。

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