もしカカシと同期なら2


オレがカナに下忍、つまりナルトたちを受け持つことを言わなかったのは私情だった。要するに、ガキ共にカナをとられたくなかった。穏やかなカナのことだからナルトやサクラはすぐ懐くだろうし、下手すればサスケもカナになら心をゆるすかもしれない。おまけにカナ自身も子供好き。こりゃ教えたらオレの苦悩の日々が続きそうだな、ってことでオレは一言も言わなかった。いずれはカナの耳に入るだろうとわかっていながら。
......でもその日が訪れるのはあっという間だった。

「カカシくん、アカデミー出たてのルーキーさんたちを受け持つことになったんだって?ついに上忍師になれたんだね、おめでとう!いつも試験落としてばっかりでもう受け持つ気ないのかと思ってたよ!ねえ、今度の任務 一緒させてもらってもいい?」

その時のカナは瞳も笑顔もキラキラしてた。ガイからその話を聞いたらしい。いつものことだけど、ほんと余計なことしかしてくれないね、アイツ。まだアイツら受け持って四つ五つしか任務してないのに。でもオレはもちろん断れない。断る理由もないし、カナにそんな顔で詰め寄られちゃあどうしようもない。本当勘弁してほしい。誰にでもそんな顔してるんだったら本気で怒ってやろうか。

次の任務っていっても、それは今からだった。毎日のようにあるDランク任務だ、休みなんてないに等しい。ただ今日は珍しく午後からだけだったくらいだ。こう言う場合は遅刻する理由もないのだが、大抵はわざと小一時間遅れていく......のが通常なんだけど、カナがついて来ると宣言した手前、そういうわけにもいかなかった。「集合時間に遅れるなんて!」とか説教じみた話を喰らうよりも、時間通り行ったほうがかなりマシだと思う。


そんなわけで、カナもつれて集合場所に行ったのは、集合時間から十分経ったくらい。三人はそれはそれはとてつもなく驚いていた。この場合オレが連れて来たカナという"女性"にではなく、多分オレが一時間も遅刻しないで現れたことにだろう。わかってるけど上忍の威厳がないな、オレ。

「天変地異でも起こるんじゃないかしら......」「きっと空から槍が降ってくるんだってばよ」とか失礼な会話をしているナルトとサクラ。カナがそれに小さく吹き出したことで、ようやく教え子たちはオレの隣の存在に気付いたらしい。三人はまた目を丸くした。

「ちょっ......なっなっ!?」
「......なんでオレを見て驚いてるわけ?ナルト」
「なんでカカシせんせーがキレーな女の人連れてくるんだってばよ!?」
「どういう意味よ、それ」
「どういう関係なの、カカシ先生!!」

さすが思春期のくノ一。恋愛ごとでも絡んでると思ったのか、サクラの瞳が好奇心に輝いている。無駄な期待をさせて悪いけど、少なくとも今はオレとカナにそういう関係はないのよね。
この無駄に元気いっぱいな奴ら相手にどう反応してるのかと隣を伺えば、カナはやっぱり笑ってた。

「カカシくんが......"先生"だって......!」

どうもオレが笑われてるようだけど。
この下忍なりたての三人のうち、素早く冷静に戻ったのは言うまでもなくサスケ。子供のくせに大人ぶってる声が「あんた誰だ?」と普通にカナに問いかける。カナは下忍達の目線に合わせて腰を曲げ、ようやく自己紹介をした。

「風羽カナっていうの。カカシくんの同期なんだ」

再び三人の間に衝撃が走ったらしい。何も言わなかったけど顔でコイツらが何を思ったのかわかる。要するにオレとカナが同年齢には見えないってことだろ?カナは今でも二十代前半に見える顔をしてる。ま、悪く言えば童顔なんだろうけど。

「今日はキミたちに興味があってカカシくんについてきたの。えっと、サスケくんにサクラちゃん、ナルトくんでよかった?」
「ど、どうして私たちの名前を知ってるの?」
「あはは、カカシくんにさっき教えてもらっただけ。あ、でもナルトくんのことは知ってるよ?」
「え?」

カナの視線がナルトに向かって、指名されたナルトはぽかんとした後 頬を赤くした。何か勘違いをしてるらしい。そのことに気付かなかったカナが「里一番のいたずらっ子くん」とあっさり言えば、ナルトはあからさまに肩を落としてた。
それからカナは、「あと、サスケくんのこともほんの少しなら」と続ける。サスケもまた片眉をあげて反応したけど、オレはカナが何かを言う前にカナの口を塞いだ。

カナがサスケのことを知ってるというのはサスケの兄、イタチつながりだ。そんなこと言い出せばこの場が凍り付きかねない......と目で合図したら、カナは察したようだった。ただしサスケがまだ理由を聞きたそうにしてるから、カナはえっと、と言葉を濁す。

「ほら、アカデミーですごく優秀な子がでたって噂があったから......それだけだけど」
「......フン。オレも噂程度ならあんたのこと知ってるぜ」
「へえ、どんな?」
「里一番の風遁使い。風羽一族唯一の生き残り」

しまった、サスケの口も塞いどくべきだったか。前半はともかく後半はカナだってあまり触れてほしくない内容のはずだ。けどきょとんとしてるナルトとサクラと違って、サスケは自分が言ったことが何も悪くないというようにカナを真っ直ぐ見てる。カナはというと、一瞬制止して、それから苦笑して腰をあげた。

「いい目してるんだね、サスケ君。将来カカシくんと並ぶくらい強くなれそう」
「カナ、お前ね......」
「並ばねえよ。追い越す」
「お前もついこの間 演習で負けといてそれ言う?」
「カナねーちゃん、オレは、オレは!?オレも将来 火影になれるくらい強くなれるよな!!」
「火影になるのが夢なの?」
「おう!将来は今までのどの火影をも越して、皆に認めてもらいてえんだ!」
「......さすが先生のお子さん」
「え?」
「ううん、なんでもないよ。頑張ってね、応援してる」
「へへっあんがとだってばよ!」
「えっと、カナ......さん?」
「なあに?サクラちゃん」
「あのっ私、どうしたらキレイになれますか!?」
「えっ」
「実は、」

どうもカナの存在はやっぱり場を和ませることに適していた。子供達は三人が三人とも、それぞれ嬉しそうに見える。サクラはカナの腕を引っ張って屈ませ、なにやらこそこそ話をし始めている。大方想像はつくな、女の子同士の話ってヤツ?
というか、サスケとナルトには無駄に期待させちゃって......とオレはカナを責めるように見たが、カナの顔は存外自信満々だった。世辞などは口にしてないらしい。つまりそれは本当にサスケがいつかオレに追いつくって思ったってことで、複雑だ。でもカナの笑顔に溜め息一つつく気にもなれなかった。


それからオレたちは任務にとりかかり......といってもオレはいつも通りナルトたちを働かすだけなんだけど、カナは積極的に取り組んでいた。
おかげで更にコミュニケーションし始め、オレが予感していたことは見事当たったようだ。ナルトとサクラはカナに完全になつき、サスケもカナが近づくことに嫌がらない。カナと話していることが楽しそうにまで見えて来た。担当上忍よりもその同期に懐くって、どうよ?

「ほんと、余計なことしかしてくれないよね、ガイはさ......」
「何言ってるの、カカシくん。元はと言えばカカシくんが教えてくれないから。先生のお子さんもいるのに!」
「だってアイツらお前のこと好きになるし」
「そうなったら嬉しいなあ。私も子供好きだし」
「......もうちょっと頭働かせてよ。一度告白された相手を前にそういうこと言う?」
「告白なんてされたっけ?」
「......カナを口説くのはアスマに禁煙させるくらいムズイって噂、あながち間違ってないかも」
「あはは、そんな噂があるの?」

まあ、でも、下忍達の子守りの間もこうやってフツーに会話できる点では、結構嬉しいかもしれない。子供に懐かれるカナは気に食わないけど、子供と無邪気に笑ってるカナの、その笑顔をいつもの倍見れたから、ほんの少しくらいはガイとガキ共にも感謝、かな。
要するにオレは 別にカナの恋人になれないからって不幸なんかにゃ感じない。そこにカナがいればそれでいいのかも。

 
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