漆
逃げた小雪を捜索する任務を請け負った七班は、雪で覆われた傾斜を走っていた。
小雪が逃走したーーならば、まさか走行中に飛び降りられるわけもない。カナが小雪の個室から退出した後の休憩時間に抜け出したのに違いない。つまり、その付近が一番怪しい。
やがてその地点に近づいた時、カカシから指令が下った。ここからは手分けして捜し、見つけたら連絡しろという。「了解」_そう返事したのはサクラとサスケだけで、ナルトとカナは黙りこくったまま、五人は他方に散らばった。
カナはいつしか巨大な森が見下ろせる崖に立ち、止まっていた。
まだこの気候の中、いつものように風を感じることは難しい。ーーだが、"自分"がこの下にいる程度のことは、なんとなく感じていた。
小雪はひたすらに森の中を走っていた。当てもなく、脱兎のように、ずっと走り通しだった。
火照った体に風は尚更冷たい。あのまま大人しく車に乗っていれば、三太夫に温かい飲み物を頼めただろうに。ホットミルクか、それともーーと考えたところで、小雪の脳内に銀色がちらつき、息切の為に開けていた口を閉ざして唇を噛み締めた。
必死に自分を守っていた言い訳は、カナによってあっという間に折られてしまった。
そうして小雪の心に残ったものは、飛ぶ意志をなくしてしまっただけの翼を持つ鳥だった。
言い訳という自分を守る殻もなくなり、小雪はじっとしていられなくなったのだ。
ふと、木の根に足をとられる。小雪の体は徐々に斜めに傾き、一面の雪が小雪を受け取る準備をしていた。
唐突に流れだした記憶は、随分昔のものだった。
あの四方八方 鏡に囲まれた部屋。幼い自分はその中の一つを覗き込み、傍らには父が座っている。
よおく見てごらん。未来が見えてくるから。
そう言われた幼い少女は目を凝らして鏡を見つめていた。けれどやはり、普通の鏡だ。
『何も見えないよ?』正直に、少しばかり不平を入り混ぜた声で言うと、早雪は『見えるさ』と柔らかく笑った。
『春になったら...見える』
『...春?』
幼い小雪は不思議そうに首を傾げた。__一年中 冬が滞る国、雪の国。そこで育った幼い小雪が他の季節のことを知っているはずもなかった。春、夏、秋もなく、国には雪が降るばかりーーー雪の国に、春が来ようはずもなかったのだ。
「(父上の嘘つき......この国に、春なんてないじゃない)」
どさり、と小雪は転がった。ーーしかし、小雪の顔を待ち受けていたのは、冷たい雪の感触ではなかった。
温かい。人肌を感じて、小雪はそっと瞼を上げた。
先ほど疎んだ銀色が、目に眩しく輝いていた。
体勢が悪く顔までは見えない__だが、それが誰であるかは言わずと知れたこと。自分の頭を受け止めた少女に、小雪はぽつりと呟いていた。「...早かったのね」
「...ごめんなさい。勝手だとは思ったけど、見張らせてもらってたんです」
「...そう。見越されてたのね」
なら、どうして止めなかったの?
そう口にした小雪に返事は返ってこなかった。小雪も再三問うことはなかった。一瞬震えたカナの様子がその答を物語っていた。
ーーカナの胸の中には、罪悪感が蔓延っていた。その全てが自分のせいとまでは言い切れずとも、小雪の脱走の理由の一部には、必ず先のカナの発言があるに違いなかったからだ。頑としてそびえていた心の殻を削り取ってしまった。その理由が正当であるか不当であるかはこの際問題ではない。
ともかくも、罪悪感ーーそれが、目に見えて震えとして現れたのだ。
「連れ戻すの?」
その質問が今のカナには酷だろうと思いつつも、小雪は言わずにはおれなかった。
案の定カナはすぐに返答できずーーーちょうどその時、雪を足で踏むあの独特の音が耳に届いていた。
「...カナちゃん?」
「ナルト...」
碧眼が丸くなっていた。木々の間から姿を現したナルトは、予想外の姿に戸惑っているようだ。「なんでこっちに...カナちゃんってば、確かオレとは反対のほうに」。この方角の森に、最初から向かったのは確かにナルトだけだ。本体のカナが途中で方向転換したとはナルトの知るところではない。
「私は風分身。...ずっと小雪さんの傍にいたの」
「......そうだったのか」
ナルトとてカナの心の内が読めたのだろう。若干眉根を下げて言ったカナに、ナルトは特別言葉はかけなかった。代わりに、ナルトの目は小雪のほうに向かう。小雪もカナから身を離し上体を起こしたところだった。
「...何度逃げれば気が済むんだよ」
感情を押し殺そうとして失敗したような、そんな声が響く。ナルトとカナの目線の先で、小雪は黙って服についた雪を払っていた。「皆、待ってんぞ」_言われ、小雪はようやくナルトと目を合わせる。眩しいほどの空色の瞳。
同じだ、と小雪は思った。カナの瞳と同じように、それは、小雪の心を突き刺すような光を放っていた。
帰りは小雪がいるため、なるべく安全な道を通ることとなった。更に、小雪はどうやらつまずいた時に足を捻ってしまったらしく、今はナルトがおぶりながら歩いている。
周囲は薄暗い。小一時間前通ったばかりの大洞窟の中を歩いていた。ここを抜けて少し歩けば皆のところに着く。また__逆戻り。小雪はそれを承知した上で大人しくしていた。忍者二人を前にして逃走が不可能であるということもあったが、ナルトとカナの瞳に押されたためかもしれない。
「......どうして...いつもあんたらなわけ」
ぼやくように小雪の声が言った。小雪を背負うナルトは振り返りもしない。二人の後ろを歩くカナは小雪の背を見つめた。これまでの小雪にあった、気が強く、触ったら棘に刺されそうなほどの気迫は、どこにも見当たらない。それを感じるのか、ナルトの返答も物静かだった。
「任務だからな。あんたがどんなに嫌がろうと、オレはどこまでも追っかけてやる」
「......」
「分かっちまうんだよ。姉ちゃんのにおい」
「...帰っても、私はカメラの前で演技するだけ......他の事は一切ごめんだわ」
それは暗に雪の国の頭首になることを示しているのだろう。ナルトはヘッとわざとらしく言うだけだった。_それ以上言及しないのは、ナルトも小雪の闇を感じているからかもしれない。
カナは小さく苦笑していた。そしてナルトの頭に目を向ける。ナルトはいつも真っ直ぐ前を見て、力強い言葉で人を惹き付ける。「(...他力本願だけど...今回もそうであればいいな...)」ーー小雪のことも。
その時だった。大洞窟の元来た道のほうから、唐突に耳障りな音が響いてきたのだ。それもどんどん大きくなっていく。
「...なんだァ?」
「なにか、来る......?」
カナとナルトは自然と立ち止まり振り返り、_そして違和感を感じて、足元を見た。
何かが浮き上がってくるーーーそれは、線路。
大洞窟を抜けたずっと先まで繋がっているそれは、映画スタッフらがいる場所にも届いていた。ナルトとカナが見ている異変が同様に起こる。幾人かがそれに気づき、なんだこれはと頭をひねった。
騒ぎをききつけた三太夫がーーようやく、その正体を見破っていた。「線路が...」
「微量のチャクラが線路に流されて、氷を融かしてる.........まさか」
とある可能性に思い当たったその額には汗粒が浮かびだしていた。ーーなにせ、今ここには頼りとなる忍たちがいない。しかしそれでも思いあぐねている暇などなかった。三太夫はすぐに映画スタッフたちに叫び回った。
「皆さん!!急いで逃げて下さい!!見つかったら大変なことになります!!」
それからすぐに雪の傾斜を駆け上がっていく三太夫の背には、当然 疑問の声が投げかけられるわけだが、三太夫は躊躇しなかった。ただ一心に、目的の場所へと向かって行った。
三太夫がすぐに気付いた事態を、未だ把握しきれていないナルトとカナは、立ち止まって元来た道を振り返るばかりだった。
しかし、それはすぐに現れる。まずは音としてーー震動としてーーそして、光と、重量感として。明らかに異常な何かだったが、ナルトとカナは"それ"を知らない為に、危機感を持ち得なかった。
ただ一人、小雪だけがハッとする。
「...汽車...?」
「キシャ?」
「キシャってなんだ?」
まだ安穏と首を傾げるだけの二人。__だが、いつしかその平常心も消え去る。
光としてしか姿を見せていなかった"キシャ"が、遂にしっかりとした輪郭を持って二人の目に飛び込んできたのだ。
「ええ!?」
「あれかァー!?」
「に、逃げなきゃ...!」
「走るぞカナちゃん!!」
サッと顔を青くした二人はすぐさま走り出した。当然逃避である。あんなものにひかれたらたまったものではない!
二人はただ前を向いて全力疾走するが、_一方で、小雪は後ろを振り向き振り向き悲壮な顔で叫んだ。
「追いつかれるわ!」
「追いつかれねえ!!」
「絶対無理よ!!」
「オレはっ諦めねえ!!」
「無理に決まってるじゃない!」
「うるせえ、黙ってろ!!」
ナルトは最後には振り向いて小雪に吠えた。それきり、小雪は押し黙る。だが、ナルトは続いて、隣で懸命に走っているカナに目をやっていた。「カナちゃん!」ナルトは数秒と考えないうちに呼びかけた。
「オレにチャクラわけてくんねェか!?」
「え!?」
「オレはチャクラ使って全力で走る!!カナちゃんは戻ってセンセーに伝えてほしい!!ねーちゃんの無事が最優先だ!!」
つまり、風分身を解けということだ。そうすればこの緊急事態をすぐに本体に伝えることができる。
数秒目を瞬いたカナも、深く考えることもなく「わかった!」と頷き、「小雪さん、お願いね!」「おう!」とやり取りを交わしてから、ナルトの手に肩を置いた。走りながら、ナルトにチャクラを分け与えながら、これまでの情報を脳内に反芻しながらーー
いつのまにかふっとカナが消えたあと、ナルトは更に速度をあげて走り出した。
今のナルトの体内にはカナのチャクラも巡っていた。
「__!」
本体であるカナはそして気付く。風分身の意識が戻ってきたのだ。
どうやら分身は、本体のチャクラの二分の一、全てをナルトに渡してきたらしい。チャクラは大幅に減ったが、それどころではない。カナはすぐに無線機を手に取り、ナルト以外の全員に呼びかけた。
「こちらカナ、私の分身とナルトが小雪さんを発見しました!今、大洞窟を"汽車"に追われて走っています!」
『キシャ?キシャって何よ、カナ』
『線路を走る大型の乗り物だ。大洞窟の線路を走っているということは......突っ切る以外に方法はないな』
『ナルトが走ってるんだな?』と念を押され、カナは「はい、小雪さんを背負いながら」と補足する。大洞窟のど真ん中を走っている線路だ、どうしても出口に向かうほか逃げ延びる方法はないが__どちらにせよ。『今すぐ向かうしかねェだろ』というサスケの声に、誰もがそれぞれ頷いた。
四人は全速で大洞窟の出口へと向かいだした。
ナルトもただ走るしかなかった。カナのチャクラで多少体力がのびたとはいえ、それで逃げ切れる保証にはならない。その証拠にナルトたちと汽車との距離はどんどん縮んでいくーーー歯を食いしばって絶えていた小雪だったが、いつ轢かれるかわからない恐怖は相当なものだ。
「こんなことしたって無駄よ...!もう終わりよ!!」
その気持ちは、同じだった。戦ったところでドトウへの勝利は不可能だ、と思う心と。
努力なんて全て無価値。絶対的なものに細々としたものが立ち向かったところで敵うはずがない。だから私は大人しく、運命に従って生きるのだと。
けれどーーそう決まっているはずなのに、頑張ることなんて疲れるだけのはずなのに、「終わらせねえ...!」_その一言に、小雪は目を見開いた。
「オレは絶対 諦めねえ!あんたが諦めるって言うなら、オレは意地でも絶対諦めねェ!!」
その目が暗いどこかを見つめることなどない。空色の瞳は、曇りなく、太陽だけを見つめ続ける。真っ直ぐ振り返らず、ただ出口だけを、希望だけを目指していた。ーーすると本当に汽車との距離が開いていくのだ。「うっらァーーー!!!」ナルトの咆哮は、汽車の轟音をものともしない。
そして、小雪の目にも見えてくる光があった。それは汽車が放つそれのようにギラギラとはしていなかった。
出口だ。
小雪は自然と手を震わせ、ナルトの肩を強く握っていた。_まだ掴みきれない、胸に宿る熱い気持ちに惑わされながら。
二人は、遂に光の元に飛び出したのだ。
「おわァっ!?」
すぐさま線路の左手に逃れた二人を追う風圧。ごろごろと転がった二人は、雪まみれになったが、それだけだった。
ナルトは仰向けに寝転び苦しそうに酸素をとりこんでいる。汗もだくだくだ。だがそれでも、ナルトは笑い始めていた。至極楽しそうに、嬉しそうに。声を上げてまで笑い出したナルトを、小雪も多少息切しながら見つめる。ナルトのその表情が、小雪の目によく焼き付いた。
ーーだがそんな一時の平和は、すぐに姿を消していた。
汽車がゆっくりと止まっていたのだ。急停止する耳障りな音を聴き、小雪は自然とそちらに顔を向ける。
そして聴こえてきた声に、顔を強ばらせた。
『久しぶりだな...小雪』
拡声器ごしに聴こえてきたのは、野太い男性の声。ナルトは首を傾げたが、小雪にとっては懐かしい、だが、再会を望んでいなかった者の声だった。まさしくこの男の正体は、昔の平和な雪の国をぶち壊した、小雪の父の弟だったのだ。
「風花...ドトウ...!」
『十年ぶりか......さあ、もっと顔を見せておくれ』
それは純粋な懐旧の念のための発言か否か。恐らく後者であると知っている小雪は尚更 眉根に皺を寄せる。その上に、ナルトが小雪の前に躍り出ていた。険しい表情を貼付けて。
今の今まで小雪しか見ていなかったのだろう。ドトウは誰だと言わんばかりに目をすがめるが、ーーそれきりだった。
突如として誰もの耳に届いたのは、小さな雪崩れを起こす音だった。
ナルトと小雪から、汽車を挟み、向こう側の傾斜から、数十本の巨大な丸太が転がってきたのだ。勢いよく斜面を転がったそれらは汽車にぶちあたり、その車体を多少揺らす。そればかりで、汽車は倒れはしなかったが、騒音が地を伝い響くようだった。
「なん...」
ぽつりと呟いたナルトが、丸太に向けていた目を傾斜の上に戻すと、ハッと息を呑んでいた。
そこには、武装をした大勢の、しかし"一般人"たちが、目をギラつかせてドトウを見下ろしていたのだ。そしてその中の一人である三太夫ーー彼が代表するように前に出ていた。
「みなの者!!我らが小雪姫様が見て下さっておる!勝利の女神は、我らに有りじゃ!!」
いつもの穏健そうな顔はない。その表情には、ドトウへの憎悪が貼り付くばかり。三太夫は高々と刀を振り上げる。その姿にドトウへ立ち向かうことに対しての恐怖は全く見えない。
「風花ドトウ...この日の到来をどれほど待ったことか!!この浅間三太夫以下五十名、亡き御主君・風花早雪様の仇、積年の恨み、今こそ晴らしてくれようぞ!!」
オオオ!!と三太夫の声に合わせ、彼の同志が腕やら武器やらを振り上げる。みな気持ちは同じ、ただ昔を見ていた。
それを見上げるドトウ。彼は無感情に、「まだこんな連中が残っておったか...」と漏らした。いち早く隣に立ったナダレがドトウにひざまずき、申し訳ありません、と謝罪する。そして、鋭くその目を光らせた。_すぐに片付けて参ります、と。
しかし。
武装しているとはいえ、一般人が忍に敵うはずもない。ただでさえ勝敗は既に決しているという事態に、ドトウは更に非道な考えを頭に浮かべていたのだ。ーーー「いや......ああいう手合いには、完全なる絶望というものを味合わせなければならない......」
「行けェエエ!!!」
声高に、三太夫の声が空を突き刺す。
それぞれの手に持つは刀、槍、棍棒、様々。忍術が使えずとも、彼らは懸命に最後まで戦うつもり、_だったのだ。
小雪は、そしてナルトは、何も言えないまま、だが確かに、いい知れぬ嫌な予感を感じていた。立ち向かう総勢五十名が虚しく映ってしまう。三太夫たちの意志も決意も本物だ。誰が口を挟めるわけもない恨みつらみ、それは、勝てない戦いであると知っていてもなお、燃えたぎるほどに熱く。
まさかこんな結末になるとは、彼らのうちの誰が知っていただろうか。
ーーー何十、何百、何千ものクナイが、どしゃぶりの雨のように、彼らを突き刺していった。
目で追う暇も、まして避ける暇もなく、たった五十人の一般人に、それだけのクナイが一斉に襲いかかったのだ。
ナルトと小雪は、呆然とその光景を見ているしかなかった。それだけ悲惨だった、想像を絶した。
汽車の内部に設置されてあった機械から、一切の慈悲もなく。既に息絶えている人間にさえまだクナイが降り注ぎ、雪を鮮血で染めていく。戦うこともできないまま、クナイが自分の身に刺さることを待つことしかできない。武装などなんの意味ももたない。
次々と雪に伏し、死んでいく同志たち。何も為すこともすることすらできぬまま。
"浅間三太夫以下五十名"は、一瞬で散っていったのだ。
高笑いするドトウの声を、耳に残しながらーーー。
機械が全てのクナイを吐き尽くした頃には、誰も立ってなどいなかった。白い雪に痛いほど映える血の色。皆殺し。
やっと自分の感情を掴み始めたナルトは、わなわなと震えだすほどに激しい怒りを胸にしていた。未だ笑っているドトウを、射殺すかのように、強く睨みつけていた。
だが、それが一瞬で、緩んだーーそれは、傾斜の上で動く人影を見つけたからだった。「__!!」瞬間、ナルトはあらん限りの声で叫んでいた。
「カナちゃんッ、見るな____!!!」
__しかしカナは動かなかった。いや、動けなかった。目を逸らすことができなかった。
一瞬でその脳内を巡っていた記憶。
風羽、うちは、二つの惨劇。重なる。今の今まで生きていたはずの者たちが、大勢苦しみ、息絶え、転がっている_!
侵食し始める。金色が、その瞳に現れ始める。
ナルトは咄嗟にまずいと思った。以前 カナがその目になった時、どうなったか。周囲のことなど目もくれず、感情に任せて戦っていたカナの姿が思い返されるーーーーー早く、止めないと。
でも、どうやって。
ナルトがぐっと足に力をこめたとき、それと同時だった。カナの金色の侵食は、唐突に止まった。
首に走った衝撃のためだった。
「っ...サス、ケ......」
ぐらりとカナの体が後方に傾く。だがそれを受け止めた姿__サスケ。
見るからに蒼白な顔色を、サスケは数秒見たあと、ゆっくりとカナをそこに下ろしていた。
そして、強くドトウを睨みつける。__