オシドリ様、長、と再生しきった風羽一族の者たちも口々に零している。
カナと紫珀は特に息を呑んで、オシドリがたった今消えたところを見つめていた。
黄ツチの声が遠くから響く。
「穢土転生は、基本的には封印術でしか止められない!だが、魂の縛りのようなものを解けば、そうやって塵に戻るらしい!」
先遣隊の奇襲部隊による情報だ。あちらでサソリらを同じように浄化した情報が、既に連合軍の中で伝達されていた。
オシドリという一番の強敵を退けた。カナは感情を抑え込むように拳を強く握った。だが、まだこの戦場は終わっていない。暫くオシドリのことを悼んでいた風羽の者たちも、再び印を組もうとしている。
「…まだまだ…!」
カナが迷いを振り切るかのように呟き、肩に乗る紫珀が「オウ」と応えた。
「良いこと聞いたわ。封印術で止められるんやって」
「そうだね……やろう、紫珀。私がみんなの動きを止める。その間に、任せるね」
───他でもない族長に、一族の誇りだと言ってもらえたのだから。平和を為すために、立ち止まるわけにはいかない。
朱色の翼が今一度風を纏う。風が再び吹き荒れた。
少し離れた暗がりの場所で、カブトは押し黙っていた。それは、甘さを捨て、確固たる意志を持って、今までよりも力強く歩み始めた少女に対する、嫉妬のせいかもしれない。
ーーー第七十三話 背中を預ける
さすがにナルトも疑問に思っていた。そして、一度疑問に思ったら、後から後からそういえば、ということが湧き出てきた。
第一の疑問が、カナが突如消えたことなのは間違いない。あの後焦ったビーやら八尾やらにフォローされて、きっと神鳥との修行で違う場所に飛ばされたとかなんとか、本当かどうか分かりもしないことで流された。
そしてひとまず例の九尾チャクラでの修行を再開したが、今度はどこか遠いところから九尾のチャクラを感じて落ち着けやしない。それこそ気のせいだろ!と強く言われたが、変な感じが治らない。
ナルトの九尾の暴走を見張らないといけないはずのヤマトはいつまでも戻ってこないし、アオバやモトイも消えたまま。自分だけがいつまでもここに取り残される。
何かに置いて行かれている気がする。
修行に疲れてしばし仰向けになっていたナルトは、むくりと起き上がった。
「……トイレどこ?」
それに、ビーは疑いもせず返事した。
「外出て左の入り口に入れ」
ナルトはすぐさま走り出した。後ろでビーの中の八尾が焦ったことなど知りようもなく。
自分が渦中の人物のはずなのに、遠いところで守られているだけで良しとするような、大人しい性格ではまずなかった。
外に出た瞬間、ナルトは感じてしまう。まさに今、世界で目まぐるしく起きている事を。
■
空は夜に完全に染まった。
ゆっくりと戦火が各地で落ち着きを見せ始める。
夜の闇は誰もの視界を均等に奪う。だからこそ、互いに少しずつ退避を開始する。無論、常に夜襲に備えて緊張しておかなければならないが、それでも一時的な収束を見せた。
各地の戦況はかなりの動きを見せていた。
海側、ダルイ第一部隊。粗方の穢土転生は封印し、多くの増援を寄せたことは功を奏していた。
カカシ第三部隊も同じく、まだ全てとは言わないが、再不斬や白は浄化し、他何名かの忍刀七人衆も、サイの鳥獣戯画で封印を成功させている。
ミフネ第五部隊は、砂のチヨや音の君麻呂、霧のハンゾウを相手取っていたが、とりあえずハンゾウのみ浄化に成功したところで、一時退散を余儀なくされた。
そしてカナが突入した黄ツチ第二部隊。
その数が万となるゼツはまだまだ取り逃がしが多く、夜に入ってしまったが、今、カナの足元には、紫珀によって封印された風羽一族の者たちが多数寝かされていた。
風羽の者たちは全て封印を終えた───カナの瞳はいつまでも、じっと彼らを見つめていた。
「カナちゃん」
背後から声。ヒナタが気遣うように近づいてきた。
「ちゃんと休まなきゃ。見張りは、感知が得意な私たちがちゃんとしてるから…」
「…うん。そうだね…」
夜闇の中、いくつかの小さな焚き木がぱちぱちと音を鳴らしている。周囲には手当てを受けた多数の負傷者。そして、犬塚一族や日向一族などの感知に長けた者たちが率先して警戒している。
ヒナタがカナの横に立つ。カナは小さく笑った。
「ありがとうね、ヒナタ。何度か助けてもらっちゃった」
「私のほうこそ…カナちゃんが来なかったら、風遁に対抗できなかったもの」
「…まあ、私の一族だしね…私が止められて、本当によかった。紫珀に感謝だ」
紫珀も今は疲れて寝ている。寝場所は赤丸の背中の上だ。毛並みに埋もれて大層気持ちよさそうである。
ヒナタも微笑んでそれを見て、心底からの言葉を溢した。
「カナちゃんと、初めて並んで戦えた」
「!」
「不謹慎だけどね、カナちゃんが来て、嬉しかったの。私の記憶にあるカナちゃんは、いっつも強くて、前にいて……私、いつも引っ張ってもらうだけだったから。お互いに背中を預けられるまでになれて、本当に嬉しかった」
「……懐かしいね。そんな話、したね……アカデミーの時」
思い返す思い出は二人とも同じだった。アカデミー時代、授業での打合いに悩んでいたヒナタに、カナはこう返したのだ。いつか信頼して背中を預けられるようになるために、仲間同士高め合わなければならない、と。人一倍他人を傷つけることが恐ろしかったヒナタは、そうやってカナに背中を押された。
「…全部、思い出せたんだね…」
ヒナタの言葉に、カナは頷いた。
事のあらましをぽつりぽつりとヒナタに話した。
記憶を失った原因のこと。ナルトに強く励まされたこと。“自分“が思い出したくなかったこと。けれど真実の滝で自分に向き合って、ようやく取り戻せたこと。
「やっぱり、ナルトくんはすごいなあ…」
要約した話を全て言うと、ヒナタはぽつりと感想をこぼした。カナは心の底から同意する。
「本当に。ナルトはいつでもヒーローだよ。…ヒナタが好きになっちゃうのも分かるなあ」
「えっ………も、もちろん、カナちゃんもナルトくんを…その、好きになったって言うのなら、私、何も言えないんだけど、」
「あはは、大丈夫だよ。ヒナタの恋路は邪魔しません」
「も、もう…!」
「冗談はさておき……私、行かなきゃ」
唐突にカナは言って、両腕をうんと伸ばした。一瞬恥じらって頬を染めたヒナタだったが、すぐに「えっ」と焦る。
「どこに行くの?」
カナは足の先を紫珀が寝ている赤丸のほうへ向けていた。
問いかけられて、振り向いたカナは、周囲を気にするそぶりを見せる。初めは神人ということで注目を受けていたカナだったが、今は誰もが各々の持ち場にいるだけだ。
カナは今一度ヒナタに近づき、小さく言った。
「ナルトのところ」
「ナルトくんのところ…って、まさか、ナルトくんを呼んでくるの…!?」
「というより、多分、ナルトも気付いてるとは思う。だから、今まで助けてもらったお礼に、ナルトを助けたいんだ」
「…!」
ヒナタは何も言えなくなる。いや、ヒナタも納得はしてしまっていた。ナルトの強さやその心の真っ直ぐさを知っている者として、守られているだけというのは有り得ない。隠されていても、きっといずれ感づかれる。
ヒナタはしばらく黙っていたが、いつしか強く頷いて見せた。カナは笑ってお礼を言う。
「ヒナタも同じ気持ちだと思ったから、言っちゃった」
「…ナルトくん、だもんね」
「うん。力になってくる」
想いの種類は違っても、ナルトの強さを信じている気持ちは同じだ。
カナは暫くヒナタをじっと見つめた。ヒナタが首を傾げても。
思い返すのは、記憶のあるカナが、最後にヒナタと会った時のこと。一度木ノ葉に拘束され、脱獄した時に、本音を隠して、手段を問わず引き離した。
ヒナタもナルトと同じように、責め立てるようなことは全く言わないが、その優しさが心に沁みる。
「ヒナタ……全部終わったら、たくさん謝らせてね」
もう心のうちを隠すことは何もない。
ヒナタは目を瞬かせたが、すぐに思い当たったようだった。ほんのりと微笑む。
「うん。私だって、ちょっとは怒ってることもあるんだから」
「……うん。たくさん怒られる」
カナは歩き出した。赤丸の上で寝ていた紫珀を抱き上げる。
赤丸が首を傾げて見上げる。傍にいたキバが「どうかしたか?」と声をかけてきたが、カナは何でもないように首を横に振った。
ヒナタ以外には誰にも言わず、こっそりとこの戦地を後にした。
■
夜闇の中、夜襲はひっそりと始まっていた。
あちこちの野営地点で、どんどん連合軍の忍が殺されていく。しかし、ゼツも穢土転生の者の姿も見えない。幻術使い───例えばうちはイタチのような能力の高い者に操られているのか、との疑いは、あまりに広範囲すぎることからあり得ないとされた。
そこに、医療部隊のサクラから連合本部に緊急連絡が入る。
同じように闇討ちをかけられそうになったサクラが、ゼツの変化に気づいた。それもただの変化ではない、連合軍の忍たちのチャクラを吸収したことによる、ほぼ完璧なコピー人間になるという───
『───カナ』
「えっ…」
『それと、紫珀とかいったか』
「ん?」
空が白んできた。
目を覚ました紫珀と共に木々を伝っていたカナはビクリと震えた。足は走らせたままだが、思わずあたりをキョロキョロと見渡す。
朱雀のものではない声が脳内に響いた。
『聞こえるか』
「えっ……もしかして、シカクさん…!?」
『記憶を取り戻したそうで何よりだよ。またカナちゃんに名前を呼んでもらえたのもな……とまあ、色々世間話はしたいが、今はそれどころじゃないな』
「あはは…たくさん言いたいことはあるんですけど、先にそちらの話を聞きます」
会う人話す人全員に謝罪して回りたいのだが、今は余計なことだ。山中一族の能力だろう、遠隔で脳に直接語りかけられているのは言われずとも解った。
『まず、確認なんだが』
「はい」
『お前はもう…こちら側の人間と考えていいんだな?』
カナは思わず数秒閉口した。改めて、自分の立ち位置の曖昧さを思い知る。だがもう答は決まっている。
「はい。…あの、全ての罰は、終わってから受けるつもりです。忘れていません。でも、今だけは、一緒に戦わせてもらえますか」
『…いや、それを聞けて安心したよ。嘘じゃねえのは分かる。罰云々の話は後回しだ。オレたちとしては、喜んでお前を歓迎する…よろしく頼む』
言葉は堅苦しいが、雰囲気は昔、木ノ葉でカナの頭を撫で回していたシカクだ。カナは心から、ありがとうございます、とお礼を言った。
『よし…お前は今どこまでこの戦争を理解してる?』
「えっと……うちはマダラの計画については、聞いてます。十尾に人柱力が必要だってことと、神鳥も十尾のコントロールのために狙われているっていうのも」
『ああ、自分の立ち位置を理解しているならそれでいい。だがお前、第三部隊を無断で離れたな』
どうやら何もかもバレているようだ。本部には感知球があるので、カナのような特殊なチャクラの位置は分かりやすいらしい。
「勝手な行動は筒抜けってこったな」と紫珀は意地悪い笑みをカナに向ける。カナは「すみません」と苦笑いした。単独行動が危険なのは当たり前だった。
『まあ、今更戻れとは言わねえが……ナルトのところに行くつもりだな?』
「えっと……」
『ナルトはもう出てきてる』
「!」
『ビー殿と一緒にな。まあ、囲っとくのは無理だったってこった。綱手様と雷影様も見送って、二人も戦場に合流させることになった。カナ、お前の位置はもうわりと近いから、とりあえず二人と行動しろ』
予想通りの展開だ。ナルトが大人しくしているわけもなかった。分かりました、とカナは素直に頷き、それから少し考えて口を開いた。
「あの、ちなみに今、戦況は大丈夫ですか?」
『ああ……そうだな』
シカクは手短に今の状況を説明した。
基本的には順調に敵側の戦力を削っていること。親玉である面の男・トビはまだ出てきていないこと。穢土転生の術者を探し出さなければならないこと。
「穢土転生を一斉に止めるには、やっぱり術者を叩かないとダメなんですね…でも、こんな広い戦場で…」
『まあな。だが言ってたってしょうがねえ。とにかく今はヤツらを相手しつつ、術者探しになる』
「…なあ、質問なんやけど」
紫珀が口を挟んだ。
「この結界は、連合軍の忍の術やないんやな?」
『…結界?』
シカクが初めて聞くかのような反応を示した。カナも意味が分からず紫珀を見る。
紫珀は前に進みながら空を見上げる。戦争開始前から紫珀だけが感じていた、この膨大な範囲の結界についてだ。
「オレ様も使える術なんやけど、要するに感知系の結界や。結界内のことは大概分かる。めちゃくちゃ広い範囲で、多分この戦場ほぼほぼ入っとる」
『…そんな範囲で…!?いや、だが確かに』
シカクの意識が一瞬離れた感覚がする。本部の方でなにか話しているのかもしれない。
『…これだけ戦場をバラバラに配置しているというのに、穢土転生の忍はまるで狙ったように、それぞれの近しい人物の元に現れていた…まるでこちらの戦意を削ぐかのように…』
「あー、そりゃ多分、本当に狙えとるんやと思うわ。…そう考えると、オレが風羽に当たったんも、バレとったからか」
偶然だとか運命だとか言うよりも、断然しっくりくる話だ。結界の術者と穢土転生の術者は繋がっている。
「…それって」
カナは、不意に思い当たって顔を上げた。それと、シカクの頭の中で情報を探り当てたのは同時だったようだ。
「ああ…だとすると、その結界の術者は、カナ、お前の記憶から見た相手に間違いがなさそうだ」
「って、そいつもう分かっとるんか!?」
紫珀が目を見開いてカナを見るが、カナの頭はしばらく、頭の中で様々な情報がパズルのピースのようにくっついていく感覚でいっぱいだった。
「渦木、イギリ………」
ぼやいた名前に紫珀のスピードが落ちる。
「北波兄さんを…ずっと探してた。私も、暫く記憶がなかったから…兄さんが死んだことを覚えていなくて…」
『…大方、復讐心で敵側にいるな』
渦木。───そうだ、風羽一族が殺した、渦木だ。北波の本来の故郷。同郷の人間。ということはつまり、とカナは隣にいる紫珀の顔を伺った。
紫珀は、北波とずっと共にいた。だとすると、紫珀が知らないわけも無い。カナの予想通り、紫珀は苦虫を噛み潰したような表情をしていた。
「イギリ……生きとったんか……」
「……紫珀」
「……いや、大丈夫や。でも……そうやな。やとしたら、イギリに関しては、オレがどうにかする」
紫珀の声は重いが、悲観的ではない。
「どうにかって……でも、場所は分かるの?」
「分かる。時間は少しかかるかもしれんけど、同じ術を使えるオレには見破れるモンがある。少し時間をもらえればな」
本当か、とシカクが返す。これからの戦争の流れを考えても、いつまでも敵に感知されたままというのは非常にまずい。
だとすると必然的にカナも同行することにはなるが、カナも異を唱えずにシカクの言葉を待った。
『……目には目を、結界使いには結界使いを、だな。分かった、任せよう。助けが必要そうなら呼んでくれ』
「おう、任された。カナ、場所を特定するから、少しの間別行動とるで」
そう言った紫珀は、一時停止し、ばさりと上空へ上がる準備に入る。カナは頷いた。
「……今回は色々と大活躍だね、紫珀。気をつけて」
「阿呆、オレ様はいつでも活躍しとるわ。お前もな」
紫色の翼がぐんっと昇っていく。カナは黙って見送って、再び枝を伝って走り出した。
『よし……あともう一つ、問題がある』
シカクは続いて説明を挟んだ。今何より重要なことだ。
「…見破れない変化…?」
『そうだ。それを今からナルトに解決させる』
ナルトの九尾チャクラモードは敵の悪意を感知できる。憎しみを由来とする九尾の能力の一部らしい。感知できる者がいれば、この味方をも信用できないこう着状態を打破できる。
つまり、ナルトはこれから各戦場へ影分身を送るだろう。
そう思い当たった時、カナは瞳を金色に変化させた。再びチャクラの翼が背中から具現する。
『───もうナルトに会うぞ!』
森を抜けた。だだっ広い平野が視界に広がった。
カナと紫珀の視界に入ったのは、まず、黄金色に光るナルトだった。その隣に大柄なビーも剣を構えて走っている。
そして、ナルトたちの真っ向から押し寄せる数十名の忍たち。
「全員敵だ!!」
ナルトの号令が飛ぶ。その声で、カナも理解して、戦闘に加わった。
ナルトの螺旋丸で取り逃がした数名を、風の刃で斬る。
「カナ!!」
「ナルト、ビーさん、一日ぶりです…!」
戦闘は一瞬だった。なにせ、ナルトの九尾チャクラの勢いが凄まじい。カナが手助けしたのはほんの一瞬だ。
忍たちは確かに全員ゼツだったらしく、九尾チャクラの影響を受けてその身から木を生やしている。
「カナ、やっぱ先に来てたんだな」
「うん。呼びに戻るとか言って、結局間に合わなくてごめん」
「おかげでなんかオカシイって気づけたってばよ」
「お前の体に生えてるそりゃなんだヨウ?」とビーが至極真っ当な質問をする。カナに生えている…というには違うが、チャクラで具現している鳥の翼だ。
「朱雀の力の証みたいです。ちょっと恥ずかしいんですけど…」
そう言って、カナは両手を胸の前にかざした。朱色のチャクラが身にまとう。
「ナルト、戦場を回るんだよね」
「ああ、こういう変化した敵がわんさかいるなら、オレが全部見破らなきゃならねえ。オレにしかできねえことだ」
「じゃあ、これをみんな一枚、持っていってくれる?」
カナがすっと両手を差し出すと、そこには朱色の羽が生み出されていた。少し疲れた様子を見せたカナだが、気力で通常通りを装う。
「“神位のトバネ”っていうの……これを各戦場の隊長に渡しておいて欲しい。もしかしたら、助けになるかもしれない」
■
完全に朝日が昇った。同時に、再び戦況が動く。
ナルトの影分身は各地の戦場へ散った。九尾モードでの分身はいつもの多重影分身よりは格段に少なかったが、それでも一人一人の強さが圧倒的で、各地の戦場を有利に進めた。
我愛羅第四部隊は、ようやく開戦。我愛羅の父、四代目風影が封印され、他の影たちもナルトの参戦で押し気味になる。
各戦場に潜んでいたゼツの変化も浮きぼりに。やはり戦況は比較的、連合側が有利だった。
朝日が照らす道で、その二人は歩いていた。
「ずっと歩かされっぱなしだな……誰に会うこともなく」
「術者が何を考えているかだな」
穢土転生の姿。一人は疲れ切ったような白髪の頭。体力もないのか、もう一人に支えられている。そしてそのもう一人は、長い黒髪を束ねている姿。
だが、二人は同時にぴくんと反応を示した。
すぐに反応できたのは、その両名共が、特殊な目の持ち主だからだ。
たった今目の前に現れた、ナルト、カナ、ビーを実際に見るよりも早く、二人は気が付いていた。
「うちはイタチに…長門!?」
「まさか、お前と戦わされることになるとはな……ナルト」
ナルトが真っ先に声を上げる。
「知り合いか?」と聞くビーの横で、カナは呆然と目を見開いていた。
「イタチお兄ちゃん…!」
「……ナルトと一緒にいるのか……カナ」
長門とイタチが、三人の前に立ちはだかった。