あの時。突如 会場のド真ん中に現れた白ゼツは、サスケの名前しか出さなかった。
だからこそ、過去の情報でカナはサスケといるはずだと知っていたとはいえ、我愛羅はカナまでもが襲撃して来たとは思わなかったし、それに先のサスケとの会話でもその可能性は打ち消されていたはずだった。

『アイツはいなくなったって言ってんだよ。今のオレは独りだ』

だが、カナはそこにいる。ということはつまり、サスケと共に行動していたはずだ。サスケのセリフと現実とが噛み合ず、それもこの混乱の一つの原因となっていた。

「本当に......我愛羅くん、なの?」

対するカナは、おずおずと確かめるように言ってから、初めて自分から動いていた。タンと足元を蹴り、一階の瓦礫の山に踏み込む。あちらこちらに侍たちが倒れていたが、"今のカナ"はそれを気にしない。

「どうしてここに。こんな、五影会談なんかに」
「......? 当然だろう、オレは風影だ」
「えっ......我愛羅くんが!?」

我愛羅やテマリ、カンクロウは尚更眉根を寄せた。

「......おい我愛羅。コイツなんかおかしいじゃんよ......大体、オレらの知ってるカナなら、こんなトコに来るか?」

カンクロウが我愛羅にぼそりと話しかける。テマリも同意見だった。だが三人の目前にいる人物は、間違いなくカナだ。

「カナ......お前はサスケを止めなかったのか?何でお前まで、こんなところにいるんだ」
「......"サスケ"?」
「ナルトたちから五代目火影に、五代目火影から風影であるオレに伝わり、オレたちももうお前の本心を知っている。復讐なんか嘘だった、という話だ。だから強がる必要はない。今のお前は何を考えてるのか、教えてくれないか」

敵意の欠片も見せず、我愛羅は一言一言に念を押すように言う。テマリとカンクロウは注意深くカナを見ていた。
すると、カナは明らかにおかしな戸惑いを見せる。

「"ナルト"?......火影?復讐って、私が?」

カナの中で我愛羅は、あのひと時会っただけの者でしかない。その思い込みが今、我愛羅が喪失した記憶へ繋がっていることをすぐにカナに考えさせなかった。

「どういう......」
「やっぱり偽者じゃないのか、コイツ」

テマリが胡散臭そうに一歩退く。我愛羅はそれを目で制し、それからまたカナを見据えた。

「オレたちの知ってるお前は、こんな所に乗り込んでくるようなヤツじゃない......お前は常に笑うことが好きで、争いのないことが好きだったはずだ」
「......!」
「それが何故こんな......それに、何でお前が付いていながら、サスケがあそこまで闇に染まってしまったんだ」

我愛羅の瞳の中で、カナが徐々に目を見開いていく。まるで一筋の光明を得たような表情だった。

「まさか、お前まで"うちはマダラ"に」
「我愛羅くん、"私"は」

我愛羅の落ち着いた声を掻き消すように、カナの震えた声が響いた。それは異常なほどの声色で、向かい合う三人はそのカナの表情に釘付けになる。だが次第にそれは銀色の髪に隠れていった。

「......"私"は、こんなことをするような人じゃなかった?こんなの、"私"じゃない?"おかしい"......?」
「......カナ?」
「我愛羅くんと"私"は、あの時の、嘘をついて別れたっきりの関係じゃなくなったの?もう二度と会えないかもって思ってたのに、またちゃんと会えて......それで"私"のこと、」

徐々にカナの中でピースが埋まって行く。最初から微妙に話が噛み合なかった理由を掴めていく。原因は、自分の記憶の欠如だったのだとカナはようやく気付いた。
そして、知った。今回の自分の行動は、"カナ"にそぐわないものだったのだと。

表情を隠していた銀髪が跳ね上がる。余計な思いを振り切ったカナは、すぐに"記憶を知る人"に尋ねなければならなかった。

「我愛羅くん、お願い!!"私"のことを教え───!」


だが、全てを言うには至らなかった。
真っ先に我愛羅たちが目を見開く。カナの口が急にガッと塞がれたのだ。


「!!?」


頭を固定され、カナは視線だけで後ろを見る。その全身は見えずも、もうこれまで何度か見た特徴的なそれを捉えることはできた。
橙色、渦巻き模様の面。その奥に見える写輪眼。

「余計なことを言ってもらっては困るんでな、風影......」
「お前は......!」

即座に我愛羅の前に出て構えをとるテマリ・カンクロウ。しかしマダラはそれには無関心そうに、ただ今もまだ口を抑えているカナを見下ろした。

「一度入ってもらうぞ、カナ」
「!」

特にこれといった反応する間もなく、カナはその一瞬にして渦巻き模様に吸い込まれる。
「カナ!」と我愛羅が叫ぶも虚しく、既に跡形も無く気配が消えていた。残ったのは砂の三人とマダラ。特異な能力を見せつけられ、テマリとカンクロウは息を呑んだ。

「てめェが......うちはマダラか!」
「ふむ......ここでお前たちだけと話しても二度手間だ。一度元の部屋に戻るといい。面白い話を聞かせてやる......また後でな」

淡々と自分の言いたいことだけ言ったマダラは、そうして自らも渦の中に消えていく。それを追うすべもなく、我愛羅は眉根を寄せるばかりだった。



ーーー第六十話 その瞳の渇望



体が宙に浮き、浮遊感を感じると同時に吸い込まれた。その何とも言えない不快感にカナは思わず目を瞑ったが、数秒してそっと目を開けてみると、見慣れない空間がその視界に広がっていた。

「......どこ、ここ」
「マダラの異空間らしい」
「!」

背後から聞こえた声にすぐさま振り返る。

「イギリさん......」

そこにいたのは、鉄の国に入る前に別れたはずのイギリだった。この薄暗い空間にいくつも連なる白い足場に座り込んでカナを見ている。
頭に浮かぶ様々な疑問はあったが、カナはまず周囲を見渡してこの状況を確認した。どれだけ遠くを見てもずっと同じ光景ばかりが続いているこの空間。構成している色は白と黒ばかりで、薄寂しい印象を与えてくる。

「......ここ、出口はないんですか」
「さあな。ないんじゃないか?人の術の中だろ」

イギリはどうでも良さそうに言うが、カナは先ほどまで一刻を争う状況にいたのだ。
サスケが今どうなっているか気になっているということもある。それに、初めてサスケ以外に過去の自分を詳しく知ってそうな人物に出会えたのだ。にも関わらず詳細を聞く前に引き離されてしまった。

「(あのタイミング、わざと遮られたとしか思えない)」

カナは唇を噛む。我愛羅に『余計なことを』と言っていたマダラの声を思い返す。

「(でも、何でそんなことを......。我愛羅くんに聞こうとしたのが不都合だった?記憶が戻るきっかけを得ることが?)」

表情を読ませようとしないあの胡散臭い面を思い返す。今まで意識してなかった靄がどんどん視覚化されていくようだ。
そもそも関わった切欠だってそうだ。何故マダラはカナとイギリを選んだのか。「"暁"の部下たちを送り込んだのは力を量るため」だとか言っていたが、カナとイギリである必要はあったのか。それに、カナが"鷹"と知り合いだったのだって、改めて考えれば出来過ぎではないか。

「(最初から最後まで仕組まれてたって、そう考えたほうが納得できる)」

最後とは、カナとイギリが"暁"に協力するまで。
では最初とは───カナが記憶を失くし、イギリと行動を始めたところからか?


「マダラはある計画を練ってるらしい」

唐突に言ったのはイギリだった。その藍色の瞳の底にはサスケと同じ憎悪が眠っている。

「お前らが会談に乗り込んでる間、オレは大体その全貌を聞かされた」
「......それで?」

カナは注意深くイギリを見る。徐々に形を成して来ているマダラへの決定的な不審感がカナにそうさせた。イギリはどういう選択をとるのか。「オレは」とイギリのその口が動いた。

だが言う前に、二人の意識が逸れていた。


「!!」


カナとイギリの間に再び渦が現れたのだ。
一瞬でマダラの姿を想定した二人だったがその予想は外れ、吐き出されるようにして落ちてきたのは、人影。


「サスケさん!?」


その体が地面と衝突する前に、カナは咄嗟に手を伸ばして受け止めた。ここ暫くずっと復讐に染まっていたその双眸は今は閉じ、気絶しているようだった。

それに次いで、新たに渦。「うわあっ!?」と素っ頓狂な声がしたと思うと、今度は香燐が現れていた。意識がある香燐は倒れ込む前に自ら着地。「香燐さん!」とまたカナが声を上げた。

「二人とも......良かった、無事で」
「カナ、それにアンタ......イギリも!お前らこんなトコにいたのか!?」
「私はさっき、マダラに捕まって。そっちは?会談はどうなったんですか?」
「ウチとサスケはあの後、会場のド真ん中に突っ込んだんだよ。けどピンチになって......サスケは死ぬとこだったけど、マダラに助けられた。んでウチも......って、そんなことより今はサスケだ!」

香燐は唐突に焦ってサスケの顔を覗き込む。チャクラをほぼ使い切ってしまったのか、顔色は悪いが特にこれといった大ダメージは無さそうだ。カナが目を瞬いて、イギリが興味無さげに視線だけ送っているうちに、香燐は自分の歯形だらけの腕を無理矢理サスケに噛ませていた。

「っう......よし。これで多分、そのうち目を覚ますはずだ」

香燐が安堵の息をついている横で、カナもサスケの顔を見つめる。憎悪を目に灯さないその顔は、今はどこか幼く見えた。

「......水月さんと重吾さんは?」
「アイツらは......分かんねえ。雷影と戦り合ったところで、その、別れちまって。捕まってないといいけど」
「そうなんですか......」
「......話を戻して良いか?」

割って入ってきたイギリの声にカナも香燐も振り返る。寸前までの二人の話を知らなかった香燐は首を傾げたが、カナはすっと表情を引き締めた。空気もピリッとしたものに戻る。
イギリは何でもないことのように続けた。

「オレは、マダラの計画の邪魔はしないつもりだ」

カナの中で警鐘が鳴る。イギリとは違い、カナはそのマダラの計画をまだ知らないが、既にマダラへの明確な敵意が芽生え始めている。もしイギリがマダラ側に付くのだとしたら自然、カナはイギリに対しても警戒しなければならなくなる。
そこで香燐がおずおずと声を上げた。

「さっき、マダラも似たようなこと言ってたけど......計画とかなんとか」
「!」
「五影たち相手に。───"月の眼計画"って」

「"月の眼"......?」とカナは繰り返す。香燐はどことなく不安そうな表情で頷くも、「その詳細を聞く前にここに連れて来られたけど」と言い、視線をイギリに向けた。

「イギリ......お前はもう詳しく知ってんのか?」
「ああ」

すると躊躇いもなくイギリは返した。本当に、何にも頓着していない目の色。カナは猜疑心を隠した瞳を向ける。イギリはそれをも見破っているだろうが、やはり「だからどうした」と言わんばかりの目だった。

「聞きたいなら聞かせてやる」

イギリは提案する。カナはもちろん、こっくりと頷いた。

数日間共に行動したのにも関わらず、未だに全く気の置けない関係になれなかったのは、共に深く内面まで関わろうとしなかったせいだろう。それもやはり、マダラがカナの記憶を奪ったのが原因だった。



我愛羅たちが再び元の部屋に足を踏み入れた時、そこには既に異様な空気が流れていた。

サスケと"影"・護衛たちの戦いで荒れた部屋。しかし肝心のそのサスケがいない。騒ぎが起きる前に全員の反感を得た、火影とその護衛も消えていた。シーを回収し、腕を治療され終えた雷影は既にこの場に辿り着き、火影を除く"影"と護衛はみな一様にして同じ人物を睨んでいる。だが、一触即発というわけではなさそうだ。

"暁"の男、マダラは段の上にゆったりと腰を下ろしていた。

「よう。遅かったな風影、待ちくたびれたぞ」
「カナは......サスケはどこだ」
「まァまずはオレの話を聞け。これからオレの野望、"月の眼計画"について話すところだ」
「"月の眼計画"......?」

初めて聞く我愛羅がいる一方で、既にそこまで聞いている雷影が「とっととその先を話せ!」と声を荒げる。とはいえ、マダラは全く急かずに「その計画の内容とはこうだ」と異様に穏やかな声で言い、写輪眼を覗かせた。

「全てがオレと一つになる。全ての統一を成す、完全体だ」

まるでさも難しいことではないと言うような言い草。しかし聞く側にとってみたら、話があまりに飛躍し過ぎで理解不能だ。

「一つになる?全ての統一じゃと?どういう事じゃ」
「......うちはには代々伝わる石碑がある。今も木ノ葉の地下に存在する」

マダラはとうとうと語りだす。それは今の世で神話として語られる、伝説的な存在の話に関わる。
六道仙人。その名で知られる彼が、そのうちはの石碑を書き残したという。そして、マダラはその文書が読める条件───写輪眼、万華鏡写輪眼、輪廻眼の保有を満たしていたがために、その教えを得ることに成功したらしい。

「なぜ彼が伝説となり、忍の神のように崇められるようになったか、知っているか?そこにオレの目的とこの男との繋がりがある」
「......聞こう」

土影が全員の総意を代弁する。マダラは続けた。

「彼はかつて、世界を救った......あるバケモノから。我愛羅、お前もそのバケモノの一部が封印されていたに過ぎない」
「!?」
「ソイツは尾獣全ての集合体。最強のチャクラを持つ存在」

今度こそ全員が目を見開く。これまでの忍世界で信じ続けられていたことが、覆される。


「十尾だ」


その生物はかつて、存在した。一尾から九尾まで、全ての尾獣を一つにした集合体、そんなバケモノが実際に生きていたのである。だが余りある力は当然全てを破壊しようとする。それを止めるため、立ち上がったのが六道仙人だった。
仙人は自ら人柱力になることで、十尾の力のコントロールを成功させたのだ。そうして世界を救ったことこそが、六道仙人の名が今の世まで語り継がれている理由だった。
しかし、その功を蝕むのはいずれ必ず訪れる死。そこで仙人がとった手段が、十尾を九つの力に分散することだったのである。

「そして十尾のチャクラを抜かれた本体は封印され、力の及ばない空へと飛ばされた。それが、"月"となった」


余りにも突飛た話だ。
「話がでかすぎる。そんな神話レベルの話、信じられねえな」とダルイは言い放つ。マダラは肩をすくめた。「他のヤツにも言ったが......神話は事実に基づいて語られる」と渇いた笑いと共に言う。

「六道仙人、尾獣......それに、神鳥もな。無から一は生まれない。火の無い所に煙はたたないとも言う」
「神鳥......風羽の保有物か。アレまで六道仙人が関わっていたとでも言うつもりか?」
「"まで"ではない。アレ"こそ"が六道仙人の力だ」
「!!?」

今なお生きている仙人の力。「正確には、その一部だがな」とマダラは補足する。我愛羅はその力を持つ張本人の顔を思い浮かべて、「カナの......神鳥の、"安定"の力が、か」とその頬に冷や汗を流した。

「さすが友人なだけはある。その通りだ」

マダラは続ける。

「神鳥の力は、十尾を抑え込みコントロールしていた六道仙人の力に由来する。だからこそ"安定"の力を持つ。死に際、仙人は十尾を九つに分散すると同時に、自分の力をもこの世に残しておいたのだ。万が一にも尾獣たちが暴れだした時のためにな」
「千年だかも眠っている時間があるクセにか!」
「残念だが、それは嘘だ。神鳥を保有することになった風羽が作り出したでまかせだ。尾獣ではないとはいえ、仙人の力の一部だ、その力は凄まじいからな。お前ら大国に狙われることを恐れた風羽のとった防衛策がそれだ」
「......なぜ風羽一族が神鳥を?一族そのものも神話に由来すると言うの?」

水影がもっともな問いかけをする。マダラはそれに「いや」と否定したが、続ける前に雷影が怒鳴った。

「それで、それら神話の事物を集めて貴様は何を企む!?」
「......やれやれ、せっかちなことだ。オレの目的......まだ分からないか?」

かつて十尾を構成していた、一尾から九尾までを集めていた"暁"。それだけでなく、その十尾をコントロールしていた仙人の力に基づく神鳥も狙っていた。つまり、"暁"━━━マダラの狙いは。


「十尾復活!そしてオレは、十尾の人柱力となる」


かつての六道仙人と同じ力を手に入れるということに等しい。だが、尚もマダラの野望は止まらない。「そしてある術を発動させる」と続ける声はどこか恍惚としている。それこそが、この男の渇望。


「月に己の眼を投影する大幻術、"無限月読"」


写輪眼。その、血の海に浸かり引きずって上がって来たような眼が、鈍く光る。

「地上に存在する全ての人間に幻術をかけ、オレが全ての人間をその幻術の中でコントロールし、世界を一つにするのだ。わだかまりも争いもない世界......全てがオレと一つになる、全ての統一」

写輪眼は遠い何かを思うように細まる。そこにはただの独裁希望者には似つかわしくない感情もあるようだった。

「それがオレの"月の眼計画"」
「ふざけるな!!お前などに世界は渡さん!!」

だが、支配されると言われる側にすれば、当然 戯言以上に悪質だ。雷影の怒鳴り声に続き、風影、水影と全忍の代表者がマダラを睨みつける。「世界を一つにする、か。確かダンゾウも同じようなことを言っとったが」と土影も同じく抗する。

「お前のは世界を一つにするというより、世界を自分一人のものにしたいとしか聞こえん」
「そういうお前たち五影に何ができたと言うのだ」

皮肉っぽく笑ったマダラは、これまでの忍世界を作ってきた五影を見下す。

「お前たちなら本当は理解しているはずだ。希望など無いことを」

こうして実際に五影が集まろうとも会談は混乱を極めた。誰もがその心で望んでいるであろう平穏は一向に形を成さないままだった、それは事実。「希望とは諦めに等しいものだ」とマダラは肩をすくめる。それこそごまかしのセリフであると。
その代わりに先ほど提案したマダラの計画こそが、実現可能な代替策であると。

「残りの八尾と九尾を差し出し、オレの計画に諸々協力しろ。───でなければ、戦争になる」
「戦争だと......!?」

八尾・ビーが未だ捕まっていないことに初めて気付いた雷影が喚いたが、それは別として、何事にもそう動じない我愛羅は真っ直ぐマダラを睨み据える。脳裏によぎるのは、二人の友人。

「うずまきナルトは渡さない。風羽カナも取り返す」
「ほう.....」

「私も同じく」と水影が。「雷影、お前は?」と土影が視線を投げると、ショックから立ち直った雷影も「もちろん弟は渡さん!」とがなった。
不在の火影を除く、全里の代表の総意。例え尾獣のほとんどを今"暁"が保有していようとも、希望を持ち得る限り。

「いいだろう」

マダラもまた、その意志に恐れをなさない。その口は淡々と言い切った。


「第四次忍界大戦......ここに、宣戦を布告する」


雨降って地固まる───大国は初めて一つの意識となり、"暁"との対立は今ここで決定的となった。
"忍連合軍"となった忍五大国 対 "暁"の戦争が、遠くない未来に勃発する。






大国は戦争のために動き出した。

影たちは鉄の国から各里、またはそれぞれが赴くべき場所へと出向き始めた。土影は自里へ戻り、大名へいち早く報告を。水影はダンゾウを追った部下の回収に行き、雷影は弟を探し出す。

そして風影・我愛羅は、ダンゾウの代わりに木ノ葉の信頼に足る忍、カカシの元へ訪れた。

「お前たちにすぐに聞いてもらわないといけないことがある。五影会談で何があったか、全て話す」

無論、そこにはナルトもいた。

マダラによるサスケとカナの現状の話。次いでサクラの告白、サイがその裏の真実を告げたところへ、五影会談での騒動の事実。その全てがこの国に降り続ける雪のような冷たさを以てナルトの心を突き刺していた。

だが、それでも諦めることを知らないその目は、つながりを断ち切ることを許さない。



そしてその頃、鉄の国を出て火の国の方角へ向かったダンゾウの前に、クナイが突き刺さっていた。護衛の二人・フーとトルネがすぐに前に出て、柱の上の敵の姿を確認する。

「久し振りだな、ダンゾウ......うちはの事件以来か」

渦の中から現れたその衣は"暁"の。会談で遭遇していなかったとはいえ、そのセリフでダンゾウはすぐさま判断した。この人物こそが"うちはマダラ"であると。
カラン、と音をたて杖が落ちる。その音に護衛二人が振り返ると、ダンゾウは常に隠していた右手を晒そうとしていた。

「フー、トルネ。援護しろ......右腕の封を取る。ヤツを引き付けておけ」
「ふむ......なるほど、まずは護衛たちに任せるか」

マダラは余裕綽々の声でそれを見下ろす。「ならばこちらもそれ相応のヤツらを出そう」と、そう言う頃には再び渦模様が空間に現れていた。
フーとトルネはそれを息を呑んで見る。吐き出されたのは、二人。

「......!」

「"神人"......それに、"渦木"......か」

風羽カナ、渦木イギリ。
突然表に出された二人も、目を丸めてマダラを、それからダンゾウに気付いて見下ろしていた。


 
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