人里離れた岩場の真下。そばには日光を受ける小川が渡り、無音の空洞に微かな水音が響いている。

鳥たちは穏やかに笑いながらそこに降り立つ。一羽、二羽、三羽と、次第に増えた小鳥たちは、その場にいる人物を見上げていた。そのつぶらな瞳に宿るのは、不思議そうな色だった。小鳥たちはその場から動かない。その人影から逃げることもしなければ、近づくこともない。
"暁"の衣をまとった人影、北波。彼は岩場に座って小鳥たちを見下ろしていた。

「......見てんじゃねえよ。さっさとどっか行け」

漏れた声に小鳥たちはぴくりと反応し、ちょんと跳んでさがる。そして遠くへ飛んでいった。ふわりと落ちてきた羽根を、北波は煩わしそうに払った。

五尾は狩り終え、ノルマは達成した。相手も人柱力、弱くはなかったため、十分な休養をとっているところだった。北波のツーマンセルパートナーとして就いているゼツは今いない。というより、ゼツは元より戦闘向きでもない上、その能力で好きに移動できるため、ほぼ共に行動することもないのである。にも関わらず、ゼツと組まされている理由を、北波は知るよしもなかった。

暗い岩場の真下で、北波は目を瞑る。耳に届くのは水音、そして時たま風に揺れる草木のこすれる音。その脳裏に何度もよぎるのは"暁"のリーダー、ペインの声。飛段と角都が"神人"カナを捕らえ、そして続くようにトビがその捕獲に助力したと聞いた。だが、結局のところは今、あの銀色は"暁"に捕まっていない。
北波はそれを聞いた時ただ黙っていた。
胸の奥に広がる思いに気づかないようにしていた。
ただ、まだ自分でノルマを達成できるチャンスが残っていることに安堵しているのだと、自分に何度も唱えた。

「クソ......」

「現れた瞬間に悪態つかれるなんて、僕、すごく悲しいんですけど!」


不気味なほどに明るい声。


「!?」

北波はバッと声の方向を見た。目は驚きに見開かれている。
その姿は、小川の向こう側にあった。

「......お前」
「どもども!お久しぶりッス、北波センパイ!」

"暁"の衣に、赤い渦巻模様の仮面。右目にある穴からは何も見えない。今の"暁"で最も新人の、トビだった。
北波はその姿を現実で初めて見る。いつもはペインの術でチャクラのみを引き合わせられるだけだった。"暁"の中では場違いなほどに明朗にぺらぺらと喋って愛想を振りまく人物。
北波は今、その人物に警戒していた。

「いやー、初めて北波センパイのお顔を拝見しましたが......見事なイケメンで僕、ちょっとショック受けちゃいました......」
「......そりゃどーも。で、お前は何しに来た?いや、どっから現れた」
「どっからって、そりゃ、そこの茂みからフツーにガサガサ現れたッスよ?」
「それで気づかねえはずがねえだろ。......まあいい。で、なんか用か?」

ぴりっとした緊張感を保ったまま、それでも北波は一応警戒を解く。トビは上機嫌に小川を飛び越え近づいた。相変わらず仮面の奥の目は見えない。表情も無論、なにを考えているかも。

「カナさんの件、気にならないんスか?」

言われた途端北波は射殺すほど強く睨みつける。

「てめェに聞く気はねェよ」
「彼女、木ノ葉から逃げたらしいッスよ。里外にいてくれれば手も出しやすいし、センパイもこれで安心でしょ?」

北波は再三目を見開いていた。
トビの口調からでは、まるで北波のカナに対する執着心を見破っているかのような印象が絶大だった。ペイン以外は知らないはずの北波の心の奥底を。見開かれたその目はそのままトビに向かう。北波はそこで、初めてトビの目を見た。

赤い色。うちはイタチと同じ。一度消えた警戒心が、倍以上になって帰ってきた。

「お前......何モンだ。いつものそれは、演技か?」
「センパイこそ。アナタの憎しみは演技じゃないんスか?本気でカナさんを恨んでるようには、」
「!!」

北波の姿がその場から消える、その瞬間に、トビは胸倉を掴まれていた。

「激情型ッスねェ」

トビは余裕でからころと笑っている。北波は次第にこのトビから得体の知れないものを感じだしていたーー悪寒に近い。
間違いなく、トビはただの"暁"の一員じゃない。

胸倉を掴んだ手はそのまま、北波はトビから目を逸らさない。ふっと脳内にペインの姿がよぎる。組織のトップがこの男の本当のところを知っているのかどうか。だが知っているならば、この組織の大元が崩壊する。

「......何を考えてるんスかね、センパイ?放しちゃあくれませんかね?」
「......"暁"っつー組織体制をもう一度考える必要があるようだと思ってな」
「あらら、意外に頭の回転が早い」
「正解ってことだろ?ペインはトップじゃなかったのか」
「でも、そこまで知る必要はないッスね。それにセンパイにとったらこっちの話題のほうが興味深いんじゃないスか?」

トビが北波の手を掴み、無理矢理離れる。あざ笑うかのような声で言った。

「"神鳥"について」

北波の目は一瞬丸くなるが、すぐに眉根を寄せてトビを睨む。そうでもねェよ、という声が漏れた。そうなんスか?とトビが続ける。北波の目は嘘を言っていなかった。

「オレにとっちゃ"暁"が"神鳥"を狙ってることなんざ興味ねーんだ。オレはオレの目的が果たせればそれでいい」
「ふーん......センパイが今知ってる情報だって微妙に間違ってるのに?」
「お前が何を知ってるっていうんだ」
「全て」

トビの声も同じく、嘘ではない。北波は品定めをするようにトビを見る。安易に嘘つけとは言わない。この数分で、トビがまともでないことはよくわかった。何故北波との接触を謀ったのか、それも恐らく。さっきからトビはペラペラと喋る。何かを伝えに来たのだ。

「......いいぜ。言いたいこと全て話してけよ。聞いといてやる」
「ひとーつ!"神鳥"が千年に一度しか転生しないなんてのは大ウソ。風羽が"神鳥"を守るためのね」

北波は数秒考える。いきなり大前提がひっくり返された。"神鳥"の情報の大半は、北波が自力で集めたものだ。風羽の集落で資料を集めて回ったのだから、偽の情報があるとは思えない。

「......その根拠は」
「根拠なんていりません。僕が本当のトコを知ってるってだけッスよ。センパイは自分で集めまわった情報が確かだと思ってるでしょうけど、そもそも、風羽は自分たちの一族の情報を文献に残さなかったんですよ。伝えるべきものは全て口伝......つまり、資料は全てダミーだ。敵をだますためのね」
「......お前がそういうことを知ってるワケのほうが、オレは気になるがな」

フフン、とトビは笑うが、それに答えるわけもない。

「"神鳥"は風羽の貴重な戦力だった。そんな力を持つ"神人”が常に集落にいると知れては、常にその力を狙う輩に襲撃されることに怯えなければならない。だから風羽は"千年に一度"とかいう、信じがたいほどの長期間を経なければ転生されないと公に言ったんですよ。協力関係にあった五大国にも。本当はいつも生きていたっていうのに」

北波はトビを見続ける。トビはつらつらと迷いなく説明口調で言い続けている。未だに何のためにそんなことを北波に吹き込み続けるのかもわからないし、何故トビがそんなことを知っているかが一番問題だ。その説明が確かだとすれば、トビは直接風羽の人間に聞いたことになる。もう十年以上も前に滅びた一族に。

「ふうん......で、次は?」

北波は促す。謎を聞いたところで、自ら言う以外のことは言いそうにないからだ。

「傷つくッスね、もうちょっと興味を持ってくださいよ!じゃ、ふたーつ!"神鳥”は神話の時代にも生きていた!」
「それは本気でどうでもいいな。六道仙人が本当にいようがいまいが、オレには関係ない」
「えー、そっスか?北波さんは"神鳥"と対峙したことあるんでしょ?そいつが六道仙人にも会ってたと思ったら、なんか感動しません?」
「いや、別に。で?もう終わりか?」
「うっ酷い!......じゃー、最後ッスよ。みーっつ!」

北波の銀色の髪がざわりと風に揺られた。小川を照らしていた太陽光が雲に遮られる。
トビはもったいぶるように言葉を繋げない。北波は訝しがるように眉をひそめた。再びトビの赤い目、写輪眼がちらりと顔を覗かせた。

「"神鳥"の能力、"神移"で"神人"が飛ばされる先は、発動した人間が最も心の拠り所にする場所、または人物の元」
「......?」
「カナさんはあの襲撃の日、木ノ葉の門前に吐き出された。風羽の集落が襲われたあの時には、彼女の両親が思い描いたのが平和な木ノ葉だったんでしょうね。おかげでカナさんは救われた。三代目に引き取られることによって」
「...それがどうした」
「カナさんを移動させたい時には、心に強く思い浮かべるんですよ。飛ばしたい、行先をね」

ご自分が最も信頼できると思うところへ。
トビは、一つ一つの語句に重みを込めていた。北波にはその意図がわからなかった。
"神移"。第三者が、自分への重大なダメージと引き換えに、"神人”を時空間忍術へかけることができる能力。それは北波の知識にある。だが、なぜトビはそれを北波に言うのか。なぜそんな詳細を。

「......お前は何がしたいんだ?」

「そのうち分かりますよ」とトビが笑った頃には、もう写輪眼の姿は消えていた。そして北波からゆっくりと離れていく。北波がそれを呼び止めることはない。

「じゃ、僕の用事はこれで終わったんで!多分そろそろリーダーに呼び出されますし、その時にお会いしましょーね!」

北波の目に最後に映ったのは、渦のように消えていったトビの姿だった。

その姿が次に現れたのは、北波のいる場所から数キロ離れた土地、森の中。赤い仮面はその瞳を隠したまま大木を見上げる。そこの枝に座っているのは明るい金髪の"暁"デイダラ。トビは数歩歩いてデイダラの視界に入った。

「トビ!お前どこ行ってたんだ、うん!ツーマンセルが基本だっつったろ!勝手に動くんじゃねーよ!」
「すみませんセンパイ!でもさすがに、用を足す時にまで声をかけるのは、ちょっと......」
「くねくねすんな!気色悪いんだよ、てめーは、うん!!」


ーーー第四十一話 三竦み


重吾を連れてアジトから出る。多少の戦闘になったものの、小隊の目的は無事果たされた。
サスケは水月、香燐、重吾の三人を前に向き直っていた。カナは中途半端な位置でその様子を伺っている。その目には深刻な色が映り、眉根を寄せて、主にサスケを見つめていた。サスケがそれに気づいて目が合ったのは数秒だった。一方的にサスケが逸らす。そして再び今回連れ出した三人を見た。

「オレの目的は、"暁"のうちはイタチを殺すことだ。そこでお前たちの力を借りたい」

カナは強く拳を握るが、他三人は気にしない。「やっぱりね」と水月が肩をすくめた。

「ただ、香燐。お前は用があると言っていたな......どうする?」
「!! そ、そ、そうだな......よく考えたら、別に、あんまり急ぐ用でも、」
「......香燐、キミは素直になったらどうなんだ?ホントはサスケとずっと一緒にいたいだけだろ?」
「そ、そんなわけあるかァ!誰かっ、誰がそんなことでも言ったのかァそれっ、え、えっと!」
「ほら図星だ。カミすぎでしょ、バレバレ。ホントは知ってんだよ?昔、キミは__」

二人のやり取りは最後、水月がなにやら確信を突こうとしたところで、香燐が水月の頭を殴るまでに至った。バシャっと殴ったところが水になる。チッと香燐は舌打ちし、サスケがようやく口を出す。

「水月、香燐を煽るのはよせ。初めに協力はしろと言ったはずだ」
「分かったよ......悪かったね香燐。でも悪いけど、僕はサスケにべったりくっついてくよ。霧隠れ七刀の一振り、うちはイタチと組んでる干柿鬼鮫の大刀・"鮫肌"を手に入れるまではね」

それを聞きつけ、今度は香燐が煽るように「ただの刀集めかよ、くだらねェ」と零す。今度は水月が癪に障ったように動こうとしたが、それはまたもサスケに諫められる。ため息をついた水月は次に「重吾は?」と促すと、重吾は改めてサスケを見ていた。

「君麻呂はサスケを自分の生まれ変わりのような存在だと言い、命をかけて守った」
「......」
「お前がどれほどの忍か見届けてやる」
「......よし」
「いや、まだでしょ」

重吾の答えは聞き、サスケは区切ろうとしたが、止まらなかったのは水月はだった。サスケのセリフを遮って視線の矛先を向けたのはカナだ。カナももちろんその視線に気づく。そう言われることの予想はできていた。水月に続くように全員の視線が集まった。

「カナ、僕たちキミからは何も聞いてないんだけど。キミの目的はなんなわけ?」
「...? 何言ってんだ、サスケと同じだろ?」
「......私は」

香燐のセリフは真実じゃない。カナは、サスケとは違う。
サスケの目的、それは、うちは一族の仇であり、サスケ自身の兄でもあるイタチを、殺すこと。

カナは目を伏せた。
脳裏に思い描いたのは、カナが知るイタチの顔だった。幼い頃に向けてくれたその笑顔、優しく撫でてくれたあの手。三年前に遭遇した時のあの無表情。そして、うちはが殺された時に確かに見た、イタチのあの涙。
それから、このまま"暁"に接触すれば出会う機会があるかもしれない、あの銀色の青年のこと。

「詳しくは言えない......だけど私も水月と同じで、このまま進めば、私の目的に近づける。だからサスケといるの」

カナの目が再びサスケと合う。お互いに探り合うようだった。
二人は同志だ。だがこのまま進むのなら、もしかしたら意思をたがえるかもしれないことを、どちらも予想していた。それでも、共に進むことも。



───サスケ・カナがいるその地から遥か離れた場所、木ノ葉隠れ、火影室。そこには四人の人影が集まっていた。この部屋の主である五代目火影綱手、同じ三忍の自来也。そして、ナルト・サクラ。−−二人は今、信じられないことを続けて聞かされて、目を見開いていた。

二人の仲間であるサスケが大蛇丸を殺した。だが、サスケも、無論共にいるカナも、木ノ葉に戻るつもりはなさそうだ、という。情報源は自来也、それが間違っていようはずもなかった。

「ど、どういうことだってばよ!なんでもう大蛇丸はいねェのに、二人は里に戻って来ねェんだ!?」
「サスケのヤツは復讐に憑りつかれとる......兄であるイタチを殺すために、"暁"に近づくようだ」
「あのヤロー、まだ......!」

ナルトは歯を食いしばって悪態をつく。「...ですけど」と反論するのはサクラだ。

「カナの目的は、サスケくんを大蛇丸から護ることだったはず......!それでも、カナも、まだ......?」
「いや......悪いが、カナの詳しい行動はわからん。噂が流れとるのは大体サスケのことばっかだからのォ......だが、カナはサスケといるってェ考えるのが自然だろう。これまでもそうだったようにな」
「......じゃあ!」

バッと顔を上げたのはナルトだった。


───カナの返答に、水月も「ふうん」と納得したのを見て、サスケは改めて「決まりだな」と切り出した。これから運命を共にする四人をざっと見渡す。

「これより我ら小隊は、"蛇"と名乗る」

カナが僅かに身じろぎする。これからは蛇のように、狡猾に目的に近づこうとしなければならない......首元の呪印がうずく。


───ナルトは意気込んでこの里のトップを見た。

「オレたちも小隊組んでさっさと行くってばよ!"暁狩り"の任務はまだ継続中なんだろ!」
「ああ」
「なら、サスケとカナちゃん、二人に会うために、最も確率の高い"暁"のメンバーを探すんだってばよ!」

サクラはじっとナルトを見ていた。仲間のためならといつも必死なその姿が......サクラの背も後押ししてくれる。



「もちろん"蛇"の目的はただ一つ」

サスケはひたすらにその暗い瞳で。

「つまり、オレたちが狙うのは......!」

ナルトは何があっても諦めない心で。


「「うちは、イタチだ」」


二人の声は、二人があずかり知らぬところで重なる。
その少年たちを、誰よりも傍で見ている二人の少女は、感化されるように拳を作り、強く握りしめていた。



トビが急に北波の目の前に現れ、好き勝手なことを言って消えたその日。その予言通りに"暁"リーダー・ペインから召集をかけられた。
今回は外道魔像の姿はない。呼びかけに応えて現れた北波は、まずそのことを確認し、次いで今日現実でも見た姿を探した。しかし、トビが目を合わせる様子はない。それで北波も早々に目を逸らした。

「何の用だ?封印じゃねえみてーだが」
「まあ待て。まだイタチと鬼鮫が来ていない」

その時、ちょうど更に二つの幻身が姿を現した。これで八人。「遅いぞ」とペインが言うと、鬼鮫がなんとかと言い訳をする。それからこの場にいるメンバーの不備に気づいたように周囲を見渡した。

「まだ飛段と角都が見えませんが」
「二人はやられた」
「そうですか。クク、あのゾンビコンビでも死ぬんですね」

この組織では他人の生き死にに大した興味を示さない。それでも一応、ペインはその口ぶりを咎める。鬼鮫は肩を竦めたようだった。

「やったのは?」
「木ノ葉の連中だよ」
「マタ、カカシト"九尾"ノ人柱力ノ小隊ダ」
「強いッスねー、その小隊!デイダラ先輩もぼこぼこにされるわけだ!」

トビの軽口にそのデイダラの怒鳴り声が炸裂する。どうやらこの二人のコンビはまるで噛み合っていないらしい。トビが続けて無意識に挑発するようなことを言い、デイダラが我慢できず大声で凄む。肉体があるならともかく、意識だけの今の状態なら口達者なトビのほうが上手だ。

北波はそのトビの様子を横目で見ていた。一度本性を見てしまえば、今の無邪気を装う姿が痛々しい。ため息をつくペインの苦悩も窺えた。鬼鮫も呆れて冷笑しているようだ。

「そんなことより、四尾の人柱力をさっさと封印したいんですがね......」
「待て。まだ話は終わっていない。もう一人殺されたヤツがいる」
「もう一人?」
「大蛇丸だ」

その言葉には、全員に少なからず衝撃を与えたようだった。
イタチが赤い目を上げてペインを見つめている。北波も僅かに目を見開いた。大蛇丸が死んだ───つまり、北波のノルマである少女を縛る蛇が消えた。

「じゃあ......リーダー。風羽カナは今どうしてんだ?トビが逃したと聞いたが」
「ちょっ北波センパイ、人聞きの悪い!」
「まあ待て北波。順を追って話す。殺したのはうちはサスケだ」

その名に数名がイタチを見る。だがイタチの写輪眼は冷静を保ち、感情は一切伺えない。反応するのは周囲ばかり、「大蛇丸はオイラがぶっ殺すって決めてたのによ」とデイダラが、続いて鬼鮫がさすがイタチさんの弟と称賛する。
隠密行動を得意とするゼツが主な情報元のようで、続いて黒ゼツの声が響く。

「今 サスケハ仲間ヲ集メ回ッテイル......ソレモ厄介ナ忍バカリヲダ」
「というと?」
「お前もよく知っているだろう。霧隠れの鬼灯兄弟、あれの片割れだ。それに天秤の重吾とうずまき一族の女。後は北波のノルマ、"神人"風羽カナももちろん同行している。せいぜい気をつけろ、イタチ、鬼鮫......恐らくお前たちを狙っているからな」

鬼鮫は舌なめずりをしているが、イタチの反応はやはり薄い。ペインはそれからその他のメンバーにも注意を促す。イタチの情報を得るため、サスケの小隊が他のメンバーをも襲うことも十分考慮済みだ。
北波はそれらの話を受けながら、視線の先をイタチと鬼鮫に向けていた。その目には並々ならぬ不穏な色が映っている。
まず目が合ったのはイタチで、北波はそれを機に口を開いた。

「イタチ、鬼鮫......あんたらは今どのあたりにいる?」

鬼鮫も刺々しい視線に気づいたようだ。「それを聞いてどうするおつもりで?」とイタチの代わりに応える。

「決まってんだろ。"神人”はオレのノルマだ。お前らにさっさと遭遇されて横取りされるわけにはならねえ」
「私も成長した"神人"と戦りあってみたいんですがね......三年前が懐かしい」
「オレたちはこれから四尾を封印するために暫く歩く。居場所は随時教えてやろう」

渋った鬼鮫とは対照的に、イタチは意外にもすぐさま好意的に応じていた。一瞬目を見張ったのは北波だけではない。イタチはこの組織の中でももっとも口少なで、なおかつ周囲との壁を堅固に崩さない人物だ。それが、自発的に情報を与えるような事を言うとは。

「......ありがたいが、どういう風の吹き回しだ?」

北波が慎重に問う。しかしそれには答えようとしない。イタチはそれきり口を閉ざすつもりのようだ。
次に声をあげたのは、そのやり取りを遠巻きに見ていたデイダラだった。「オイラもその小隊ってのに興味があるな、うん」と不敵に笑う。

「鬼鮫、どんなヤツなんだ?その水月ってのは」
「......もう十年も前だ。かわいい顔で笑う子でしてね。決まって相手の手足をぶった切ってから頭にとどめを刺すことから、鬼人・再不斬の再来と呼ばれた神童ですよ」
「へェ......じゃ、天秤の重吾ってのと、なんとか一族の女ってのは?」
「重吾は大蛇丸が呪印開発に利用した男。女のほうは能力がわかっていないが......連れてく忍の能力は選りすぐりされてるだろう」

今度はペインが応えてやる。そして残りの一人である"神人"は、デイダラも直接会ったことがある。チャクラの質ばかり優れていて本人の戦う意志が弱かったことが印象的だが、あれから三年、どう成長しているか。
なんでもいい。デイダラの目的はとにかく、己の芸術の素晴らしさを証明することだ。

「そいつら色々面白そうだな......うん」

デイダラの手のひらの舌がべろりと顔を出していた。


 
|小説トップ | →
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -