風羽カナが捕縛されてから五日が経過した。"罪人"は、未だ口を開こうとしない。
確かにカナは経絡系その他体内の損傷が大きいため、幻術世界による拷問しかされていない。だが、それを考慮してもカナの自分の身における無関心さは異常。暗闇無音の牢の中、いつまでも座り込んでいるだけの少女は、誰が見ても息を呑むものであった。

「(サクラやナルト君たちと同年齢とは思えない......)」

火影邸の廊下を歩く足音。五代目火影の付き人であるシズネは、思い返して心が重くなる。
その理由は昨日 綱手の付き添いで見た拷問の様子にあったーーーー血の沼となったような空間、沼を埋め尽くすように積み上げられた何百もの死体、漂っていた濃厚な錆びた鉄の匂い、その中で磔にされていた風羽カナ。そして彼女しか生の無い空間のはずが、死体が怨霊のように呪詛の言葉を呟いていたあの地獄絵図。

思い出すと、シズネのほうが身震いするような光景だった。高度な幻術は視覚聴覚のみならず嗅覚まで刺激し、幻術とはいえど、死体には無視できない現実味があったのだ。だというのに。風羽カナはその地獄のど真ん中にいながら、ただ幻術を眺めるだけだったのだ。

シズネには信じ難かった。それは、いつかシズネが妹弟子である春野サクラから聞いた人物像と、あまりにもかけ離れていた。


ーーー第二十九話 偽りの灯り


「失礼します、綱手様」
「...あァ」

一拍置かれた返事にシズネが目を向けると、五代目火影・綱手は寝起きであると言わんばかりの醜態を晒していた。

「......また書類整理サボって寝てましたね。よだれ拭いて下さいよもう......」

呆れた調子の付き人に、「悪い悪い...」と返す綱手は常習犯である。誠意がない謝罪ということはシズネももうわかりきっているが、いつもならここでお小言を言うところを、今回ばかりはそれ以上は難詰しなかった。
ここ数日、綱手は十分に休めていない。理由は言わずもがな、現在は牢に捕われている少女にある。寝起きでもどこか悩んでるふうの綱手を目に、シズネも暗い面持ちを隠せなかった。

「拷問班から報告を受けました。昨日綱手様が様子を見に行かれてからも、数回に渡っての拷問が行われましたが......やはり、反応はないそうです」
「......そうだろうな」

シズネに朧げな目を向けた綱手は、重々しく頷く。死体が蠢く中で沈着を保っていたカナが二人の脳裏に甦る。何を気にしてるふうでもなさそうだった、あの瞳の色。一見、人の死など露ほども気にしない冷酷な人間でしかない。
シズネは思い、「けれど」と口を濁す。

「あれではあまりにも......サクラたちの話と矛盾します。あれで人が死ぬのを恐れていただなんて、とても思えない......」

表面上だけ冷酷無情を装っているのではないか、と擁護するにも、さすがに限界があった。
忍たる者感情を表に出すべからずーーー忍の掟項目には確かにそう記載されてある。だが忍もまた人間、一体この忍世界の何人がそれを徹しきれているだろうか。もしその極少数に風羽カナが含まれているのだとしたら、あの少女は十六歳にして忍の鑑だというしかあるまい。だが、シズネも綱手も、いくら大蛇丸の元で歩んできたとはいえ、風羽カナがそうであるとはとても思えなかった。
ならば何故か。

難しい顔をしたままだった綱手は、キィと椅子を回して顔を窓のほうへ向けた。夕暮れ時の光が里に差しかかっていた。

「今まで目の当たりにしてきたものがあるからかもな......」

ぽつりと呟かれた言葉。シズネは怪訝そうに「目の当たりに...?」と聞き返した。夕焼け色は、時として血の色にも見える。

「幼い頃に二度も......自身の一族と、うちはの大虐殺を最も間近で経験し......育て親となっていた猿飛先生も殉職、その上、大蛇丸の元ならば更に惨たらしいものを見てきたかもしれない。加えて今回の一連のことも......」
「......慣れた、ということですか?」
「いや......幻術では追及できない辛苦を、既に何度も知っているからではないかと思う。憶測にすぎないところだが......あの子は幻術以上の恐怖を、既に身を以て体験しているからな......」

綱手自身、過去に二度 大切な者を失った。あの地獄を思えば術者によって作り出された悪夢など、一体どれほどのものだろうか。
椅子を回し、綱手は再び室内に目を戻す。

「あまり考えたくはないんだが......幻術以外の拷問は?」
「一応はまだ......」

ただし、幻術世界だけは何でも有りだ。詳細までは報告書にないが、幻術内では多少の肉体的拷問を行っていることだろう。しかしそれでも風羽カナは一切情報を吐露していない。

「なるべく早く情報部の手を借りられたらいいですね......」
「ああ......だが、今は情報部の人員も、ほとんど今回の騒動で使ってしまっているだろう?」
「ええ......あ、ですが」

シズネは執務机に置いてあったバインダーを手に取り、ぺらりとめくった。

「火ノ寺襲撃以前に長期で出ていたいのいち班は、明日には戻ってくると報告が入っていました。彼なら」
「......そうか。そうだな......いのいちならカナと面識もあるだろう。快く引き受けてくれそうだ」

綱手はようやく少しは肩の荷が下りたのか、微笑を零した。シズネも応えるように小さく笑って頷く。
拷問の必要がなくなったからといってすぐ解放できるわけではないが、少なくとも今よりはかなり改善される。二日前、綱手に謝りにきたナルトとサクラも、僅かでも光が見えれば喜ぶことだろう。

「......さて」

一息ついた綱手は、ゆっくりと立ち上がった。緩んでいた口元も引き締め、キッと強い瞳で前を見据える。

「シズネ。私はこれから暫く出かける」
「どこへ?」
「勝手にさせちゃおけないのさ。力をつけたとはいえ、ガキ共三人をS級犯罪者にぶつけるわけにはいかないからね」

かつかつとヒールの音と共に歩く五代目火影。シズネは思い当たったようにハッとし、「わかりました」と深く頷いた。
そうして無人となった火影室。ーーそこに差し込んでいた西日は徐々に暗くなっていく。

たった今 ここを出て行った二人は思いもしなかった。この建物に、今まさに魔の手が伸びていることなど。



暗闇の中に灯る小さなランプ。揺らめく小さな炎は歩く人影をぼんやりと照らし出している。
暗闇に同化しそうな漆黒のコートを羽織った影。顔を隠すように被ったフードで一見では正体を掴めない。その足が堂々と通路の真ん中を歩いていた。
木ノ葉の忍でないことは明瞭な人物が、それぞれの牢に通じている通路を。


ギィーーー


ある一つの扉が、その人物の手によって、ゆっくりと開かれた。



獄内にランプの灯りがゆっくりと入っていく。侵入者の後ろで重い音が響き、扉が閉まった。淡い光に照らされ、侵入者の姿形も多少は明確になる。体格からして男である侵入者の瞳に映ったのは、何の反応も示さない銀色の罪人だった。

抜け忍、風羽カナ。
まだ何にも気付いていないカナは、この数日間ずっとそうしてきたように、じっとうずくまっているだけだった。
男はそんなカナを目に、足を踏み出し、声をかけていた。

「何をやってる」
「......!」

びくりと動いたのは、カナだ。それは、今までにない確実な変化だった。

男はそんなことには我関せずというように、ただ懐から取り出したカギで格子のカギ穴を回す。ギィ、と嫌な音で戸が開き、男は悠々と足を踏み入れ、カナの前にひざまずいた。

「随分と簡単に掴まったんだな......今までの修行はどうした」
「......え......?」

ランプをかざした侵入者。そのフードの奥の顔が、ようやくはっきりと浮かび上がった。

カナは初めて顔を上げていた。それだけではない、朧げだった瞳は真ん丸に見開かれ、ぼやいた言葉は驚愕に震えていた。

フードの奥の端正な顔。闇に紛れそうな髪と瞳の色。見てとれるのはそれだけで、だが、カナにはそれだけで十分だった。
ずっと傍で見続けていた顔を判断するのに、それ以上の情報はいらなかった。

言葉にならなかったカナの吐息が、やっと形になった。


「サスケ...............?」


ここ暫く無表情だったカナがそれを崩す。
ーー目前にいるのは、確かに、カナと同時期に抜け忍となった、サスケだったのだ。

沈黙が訪れた。サスケはその刺すような瞳をずっとカナに向けていた。カナもまた、今 見ている顔が信じられず、それ以上は何も言えないほどだった。

「(なんで......)」

だが、その思いは結局、言葉にならず終いになっていた。

数秒の沈黙を以て、カナは次第にサスケから目を外し、肩の力を一気に抜いたのである。


静寂を破ったのは、カナの溜め息だった。


「やられました......」
「......」
「悪趣味ですね......人の皮を被るなんて。サスケだったら私も反応すると思ったんでしょう?思惑通りじゃないですか」

カナの顔が再び上がる。そこにはまたも冷静さが姿を見せていた。"うちはサスケ"はそんなカナとは逆に、目を瞬く。それは最早 今現在のサスケにはありえない表情だった。しかも、次には皮肉気な笑顔に変わる。

「やっぱり、分かるんだね」

口調すらも違うと、もう明らかな偽者でしかなかった。

「どうして気付いたんだい?顔も声も全く変わらないだろう?自信作だったんだけどな」
「......今のサスケは、復讐しか見ていない。私の為に木ノ葉まで乗り込んでくるわけありませんし......それに、あなたとサスケでは、まとう雰囲気がまるで違う」
「......ふうん。後半部分はともかくとして、サスケくんは随分 冷たく映ってるんだね、キミの瞳には」
「事実でしょう。サスケは復讐の為に三年前 音隠れに行って、その目的は今も変わってない。私の為に時間を割くくらいだったら、大蛇丸に修行を頼みますよ。サスケの強くなりたいという思いは、それくらい」
「ハハ、珍しく弁舌じゃないか」

カナはそこで、ようやく口を止めた。
"サスケ"の最後のセリフだけは受け止めきれず、口を噤む。この空間ではどちらかが喋っていなければやはり、"個"を許さざるm無音の世界。
唯一 今はある灯りに目を落とし、カナは唇を噛んだ。"サスケ"のくぐもった笑い声が響く。

「やれやれ......動揺するなんて、キミも案外脆いね。もう慣れたんじゃないのかい。こんな、ただ独りの空間も」


カナは、拷問は怖くなかった。
幻術の中での肉体的苦痛や群がってきた死体に辟易するものはあったが、ある程度の痛みならば辛抱できたし、どんなに現実味ある死体であってもカナにとっては全て作り物臭いだけだった。風羽やうちはの死、大蛇丸による幾多もの虐殺に比べれば、幻術で作られた血生臭い地獄などどれほどのものだっただろうか。

だが、"里"がカナに科した刑罰の全てが、無意味なものではなかったのだ。
人並みの感覚を持ち合わせているカナに恐怖心がないわけがない。

暗闇と無音が侵食している、この牢獄。
何に関与することも許されないこの場所で、襲い来る孤独感。
尋問、拷問室に連行される度にすれ違う、他の罪人たちの悲惨な精神状態。

忍たる者 如何なる時も不動心を徹し耐え忍ぶべし。

カナは必死に自制していた。非情、無関心を装い、冷酷に逃げ出す隙を探すことだけに努めた。だが、ひしひしとにじり寄る闇が徐々にカナを蝕んでいたのだ。自分もいつか他の囚人たちのようになってしまうのかと思うと、恐怖心の膨張は凄まじかった。

一度唾を呑み込んだカナは、静かに息を吐き出した。目前の人物に必要以上の感情を読み取られたくないがゆえに、心をなるべく落ち着かせ、口にする。

「そんなことより......その姿形、声を、直して下さい」

すると、今度はいかにも面白いと言わんばかりの笑い声があがった。不満そうにカナが睨むと、"サスケ"は「しょうがないな...」と肩を竦める。そして自身の顔に手をかけた。

びり、とめくる音。サスケの顔が目の前ではがされていくことに、カナは眉根を寄せる。札に支配されたこの空間でチャクラを使った変化はできない、ゆえに"サスケ"の変装はこのように原始的なものだと予想していたとはいえ、不快感から完全に免れられるわけもなかった。

顔と声とをすっかり元に戻せば、そこにいるのはサスケとは全くの別人だ。

「これで満足かい?」
「......ええ。これであなたが帰ってくれれば万々歳ですよ」
「酷いことを言うね。僕のおかげで脱出できるチャンスができてるっていうのに」
「頼んでません。それよりもご自分の事を心配したほうがいいんじゃないですか......カブトさん」

ーーー薬師カブトはほくそ笑む。

「何を言っているんだいカナ。数年前まで、僕がここのスパイだったことを忘れでもしたのかな?」

無論 それはカナにとっていい思い出であるはずがない。それを知ってか知らずか、立ち上がったカブトはカナの望み通り格子から出て行くわけでもなく、格子内の隅にある曾末な寝台に腰をかけただけだった。それを目で追っていたカナはふっと視線を逸らす。

「助けてこい......とでも言われたんですか。大蛇丸に」
「いいや、そんなことは言われてない。といっても、言われてないだけだけどね。さすがの大蛇丸様でも、キミが木ノ葉に捕らえられてるとまでは考えなかっただろうし」

揶揄を含むセリフに、しかしカナは何も言わない。こうなったことは自分の不甲斐なさのせいだとカナ自身 重々承知していた。と思うと同時に、どうしても浮かんでくるアスマの顔を、今だけは考えずにいようと頭を切り替え、カナは暗い面持ちでそれで、と続きを促す。

「ああ。僕は大蛇丸さまに命じられて、キミが消えたあたりから痕跡を辿ってね。大変だったんだよ?僅かな情報だけでここまで来たんだ。キミ自身も、随分波瀾万丈な数週間だったようだけど」
「......それで、ここに辿り着いて、入り込んだんですね。今は木ノ葉の警備も固いでしょう......よくもそこまで」
「僕は子供の時から数年間、スパイとして暗躍してきたんだ。あまりなめないでもらいたいね。少し頑張ればこの通り、全くバレてないよ。......まあ、今はタイムリミットがないことはないんだけど」

含みのある言い方にカナは眉を寄せる。

「看守の見回りのこと、ですか」

そのカナの当然の疑問に、「それもあるけど...それだけじゃない」とカブトは返す。疑念の籠った目が自身に向くのを見て、カブトは緩やかに笑む。

「この地下牢に来るには、通り道は一つしかないんだよ......」

カナはすぐさま思い当たった。つまりカブトが何を言わんとしているのか、全を聞かずとも十分だった。気絶したまま連行されたカナは見てはいないが、地下牢に来る入り口には見張り番がいるに決まっている。目的の前に立ちはだかる者がいるのなら、カブトは。
カナは急く思いをすぐさま口にした。

「殺し...」
「て、ないよ」

が、カブトは分かっていたかのようにカナの言葉を遮った。

「キミがそういう顔をすることは目に見えていたからね」

にっこりと笑顔を向けられ、カナのほうは目線を逸らすが、安堵の吐息を漏らしていることは明らかだ。そこまで計算していたカブトはくすりと笑う。カブトの目的は飽くまでもカナの脱獄の補助、もし木ノ葉の忍を殺しでもしていたら、カナは素直に従おうとしなかっただろう。

「ちょっと催眠に落とさせてもらっただけだよ。"結界を見破ったヤツ全員を通せ"ってね......その催眠が続いているうちは、入るも出るも簡単だ。そして僕は今、君を縛るこの牢のカギを開けた......つまり。君はもう、自由さ」

カナはゆっくりとカブトを見た。カブトとカナの視線が交差する。
嫌な目だと、カナは思った。







ーー夜はもう、随分と更けた。
しっとりとした空気が漂い、昼間の陽気な住民たちの声もなく、ただただ静寂を落としたような夜陰である。火影岩の下にそびえる火影邸もまた、多少の電灯はついているものの、静まり返っているのは同じ。
しかし、毎夜とただ一つ、違うことがあった。

一人の男がとある結界の中、瞬きも身じろぎもせずに、突っ立っている。
その男の脳裏で響いている声があった。

ーーー"ごめんなさい"。

ごめんなさい、と姿の見えない声が謝っていた。だが意識の中の男には意味がわからなかった。それは男の記憶の中には一切ない声だった。聞いた事もない少女の声が自分に謝っている。

ーーこれは、夢か?

ーー夢?

男はそう思った時、唐突に焦燥感に苛まれた。
男は確かに勤務中であったはずなのだ。どこともわからぬ世界に放り出され、知りもしない少女に気を取られている場合ではなかったはずなのに。


ーー何だ、オレは、どうしたんだ!


「オレはっ!!」


男は、立った状態のまま叫んでいた。目を大きく丸めて、汗をだくだくとかき、体は火照っている。男はずっとここに立っていた、それは足の感覚から男自身も判る。だが、男の意識は今の今までここになかったのだ。それは、いつからか?

「た......確かコートを羽織ったヤツが、この火影邸に入ってきて......それで真っ直ぐこっちに向かってきて......それで......」

ーーーそれで?

「気付いたら、声が......」

ごめんなさい、と繰り返し男の脳に響いていた声は、本当に心苦しそうなものだった。だが、男にとったら意味不明なこと、真っ先に不審感を抱くのは禁じ得ない。とはいえ結界は切れていないし、今 何か特別な変化が周囲に起こっているわけでもない。

これはこのまま気にせず仕事を続行すべきなのか、それとも真っ先に五代目に報告すべきなのか?

男が、そう思った矢先だった。


「おい、お前!!」


がごんと盛大な音が男の背後からし、叫び声が男の耳をつんざいた。振り向けば、この地下牢の看守をこの時間に任されている同僚、その顔に自身と同じ汗が流れているのを目にし、男は嫌な予感に苛まれた。

「な、なんだよ......どうした?お前、仕事は......罪人どもに食事をやる時間だろ」
「やらかしたんだ!!油断しちまったんだよ!!」
「は?ちょっと待て、もうちょっと落ち着いてなにが、」

男は胸を太鼓のように叩いてくる心臓を抑えながら、片手で同僚の肩を叩いた。だが、それはすぐに振り払われ、逆に両肩を掴まれて叫ばれていた。


「収容されてから一切抵抗してこなかったアイツ、あの風羽一族の罪人に!!カギ開けて食事入れた瞬間、気絶させられたんだ!!」


男は呆然とした。焦っているはずなのに、体がすぐには動かなかった。
ここ数時間の記憶がまるで無い男が確実に言えるのは、地下牢の出入り口はこの場所しかないということだった。


ーーーごめんなさい。


男は再び夢の中で聞いた声を思い出す。今となってはこのタイミングで、この声が脱獄者の声じゃないと思うほうが不自然だった。

「(なんてこった...!!)」

男はギリッと歯ぎしりした。ここまでわかれば、ここで狼狽えているのはバカバカしいにもほどがある。
まだ喚いているだけの情けない同僚の手を払い、男は叫んだ。

「それじゃこんな悠長なことやってる場合じゃないだろ!!今すぐ五代目様に報告を__!!」
「聴こえているよ」

若い女性の声ながら威厳があり、凛とした声。

男とその同僚はすぐさま火影邸入り口の方向に顔を向けた。

見えたのは、四つの人影。

苦渋の色を見せる女性が一人と、驚愕の表情を浮かべている、三人の少年少女。
その背後ではさらに、一匹の犬がクゥーン、と鼻を鳴らしていた。


 
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