「............う......」

ーー散々たるその場で、唐突に微かな声が響いていた。

黒雲は厚く、じめりとした風が吹く。今にも崩れ落ちそうな寺に、その境内に広がる残虐の痕。
だがその中央で徐々に覚醒し始めた彼はほぼ無傷で、ただ硬直がまだ解けないばかりに、暫しの間身動きがとれそうもなかった。
まだはっきりとしていないその頭には、密やかな声が響いていた。

"一刻も早く、木ノ葉へ"。



ーーそして火ノ寺を出た少し先。フードを深く被っているカナは今、違和感と戦っている最中だった。
その額にうっすらと刻まれている刻印。これは"暁"がカナを縛るためのものであったはずだが、そろそろ効力も切れようとしているはずなのだ。しかし、"暁"飛段・角都は一向に姿を見せようとしない。カナにすれば結構なことだが、どう考えても彼らがそれで良しとするわけもないというのに。

その上、何か嫌なものが近づいてきている気がしてーー。


「風羽、カナさんっスね?」


ーーー第二十一話 深淵


明朗な声に恐怖したのは、初めてだった。
どくり、どくりと騒がしい心臓が、やっとのことで自分を保つ支えとなっている。

あの声に見上げた瞬間、枝の上から見下ろしていた瞳と目が合った。その刹那で、背筋が凍った。
これまで毎日のように見てきた写輪眼の赤を見紛うことなどあるはずもない。カナの身体が動かなくなったのは果たして、その瞳力のせいか、単なる驚愕のためか。何にせよ、カナは容易く、俵のように抱きかかえられていた。

「随分軽いっスねえ!ちゃんと食べてます?忍してんだから栄養とらないとー、そのうちぶっ倒れちゃいますよ?あ、でもそっか、年頃の女性だからダイエットとか考えるんスかねえ。いや、失礼なことをお聞きしました!」

暁の衣を身にまとい、渦模様の面を被った男は、カナを肩に抱えながら悠々と枝を跳んでいく。

「飛段先輩と角都先輩にアナタを連れてこいって言われちゃって、全く、先輩ったらみーんな人使い荒いんですよーもう!」

その面の下の口からは次から次へと言葉が出てくるが、カナは一切 応えることができなかった。
恐怖だった。完全にカナは萎縮していた。この男の秘めたる力を、カナは既に思い知ってしまった。

「あ、忘れてました、僕はトビっていうんですよ!最近"暁"になったばっかりですけど、さっきなんか三尾の回収という大役を任されちゃいましてねー、ハハ!以後お見知りおきを!」
「......はな、して」
「それは了承できないッスね!まあ僕としても、こんな可憐な少女を誘拐するとか良心が痛んで仕方ないんスけど、これもリーダーの命令とあっちゃあしょうがない! 逃げたりしたら承知しませんよー?」

震える声に力はない。カナの頬を流れていく汗がぽたりと男、トビの衣に染み込んだ。
カナはこれまで、それなりの数の"暁"と遭遇してきた。イタチに、鬼鮫、サソリ、デイダラ、飛段、そして角都。誰も彼も当然の如く並大抵の強さではなかった。S級犯罪者というレッテルにそぐう力を有していた。
だがそんな前知識などまるで役に立たぬほど、この男は根本からして違うのだ。

"なにか違うもの"を見ている赤色の瞳。今 カナを襲うのは、ただ帰らなければという思いのみでなく、この男から一刻も早く逃れたいという切願だった。

「くッ...!」
「おっと、どうしようっていうんです?」
「行かない...!嫌だ!!」
「駄目だって言ったじゃないですか!何故なら僕があとで怒られるッスからね!」

カナは精一杯の力で逃げ出そうとした。カナが纏うコートがばさりと揺れ、フードがとれる。銀色が現れ、カナは必死の形相でトビの面を見上げた。
すると、ちょうど面から左目が覗く。
写輪眼、だ。

サスケならその瞳で、どこか知れぬところにいるイタチを見据えていた。カカシならその瞳に、"火の意志"を灯し温かく仲間を護っていた。だがこの男は、どうだろう。
何も捉えられなかった。あまりにもその瞳の求めるものが巨大すぎるばかりに、カナはいい知れぬ恐怖を抱くことしかできない。

「(嫌だ......!)」

それが、一瞬のみの力の増幅を呼んだ。


「はなして!!」


その途端、トビとカナの間に巻き起こったのは銀色の風だった。
流石に耐えきれなかったのか、トビの力はゆるみ、その隙にカナは飛び退って別の枝に着地する。風が起こったのは一瞬、金色の瞳も一瞬。
辺りに沈黙が滞った。

カナの肩は大きく上下している。茶色に戻った瞳は動揺しつつもじっとトビを見つめていた。今は仮面の奥の赤は見えずとも、そこに潜んでいる力は十分に滲み出ていた。「あなたは、一体、」とカナの口から漏れる。

「うちは一族は、サスケと、うちはイタチを残して、滅びたはず......!」
「......」
「あなたがうちはであるわけがない......あなたは、一体何なんですか......!?」

トビという名前も知った。"暁"だということもわかる。しかし、カナが言いたいのはそういうことではない。カカシという例外がそうあるはずがない。トビの髪色は確かに黒だ。だが、うちはにあの兄弟の他に生き残りがいるはずもないのだ。
先ほど見えた赤色が、カナの脳裏に焼き付いている。


「さァ、何だと思う?」
「!?」


突如、その気配はカナの背後に出現した。

瞬間的にカナは振り向くが、息つく間もなくその"赤"と目が合ってしまった。瞳の奥に焼き付くような燃える色ーーーその瞳力。
がくり、とカナの足は崩れ、だがその落ちゆく体をトビはすぐさま捕らえて腕を掴み上げた。

「だーから言ったじゃないっすか、カナさん?逃げたりしたら承知しませんよって......さ、行きましょうか!」

たった今の地を這うような声はなんだったのか。明るく言ったトビはぽんぽんとカナの頭を撫で、その銀色をフードで再び隠して抱えあげる。地を蹴る足音は軽く、実に軽快な足取りだった。



「何......火ノ寺が!?」

五代目火影・綱手は、ガタリと立ち上がって声を上げた。
火の国、木ノ葉隠れ、火影邸。その火影室に報告の為、つい今しがた入室したのは綱手の付き人兼補佐、シズネである。はい、と歯切れよく返したシズネは真剣な顔で火影を見つめていた。

「先ほど木ノ葉に駆け込んできた、庵樹という僧侶によれば......。漆黒のコートに赤雲、とくればまず間違いなく"暁"でしょう。その二人組が境内に侵入し、破壊の限りを尽くしたと」

そうして僧侶たちの命を奪っていったのも間違いないだろう。綱手は強く歯ぎしりする。ここ火の国で"暁"とくれば、目的とされているのは"九尾"の情報でしか有り得ない。
「で、その庵樹という僧侶は」と綱手が感情をできる限り抑制しつつ言えば、「......それが」と今度はシズネも口を濁す。

「彼はほぼ無傷ではあったのですが......それだけ報告したきり、気を失ってしまい。恐らく精神的なものかと......」
「......無傷?その場に居合わせたのにか?」
「詳しい事はわかりません。"暁"が温情をかけたりするはずもないですし......ただ、彼は意識を失う寸前、妙な言葉を口にしていました」
「妙な言葉?」

綱手は繰り返す。シズネはこくりと頷いた後、眉をひそめて正確に庵樹の言葉を繰り返した。


「"銀色の漆黒。彼女が救ってくれた"......と」


火影室がしん、と静まり返る。シズネの言葉を黙って聞いていた綱手も同じように眉根を寄せた。
"彼女が救ってくれた"、これはいい。問題は"銀色の漆黒"だ。何を示唆した言葉なのか。どこぞの忍の通り名なのか、はたまたその"彼女"の外見を表現してのことか。いずれにしても、綱手にもシズネにも、すぐさま思い当たる人物は浮かばなかった。

「......その件は一先ず置いておくことにしよう」

綱手がそう言うと、シズネは「では」と返す。綱手は「ああ」とシズネを見た。

「"暁"を火の国から逃がすな。新編成した二十小隊を、ただちに召集しろ!」

「はい!」という言葉が最後、シズネが扉から出て行ったことで、室内は再び静まっていた。小難しい顔をした綱手は今一度腰を下ろし、ゆっくりと息を吐く。そして何かを思い出したかのように机横の引き出しをゆっくり開けた。

そこにはシズネに何度もやめて下さいと嘆願されている、宝くじが入っていた。更に綱手の手は今日の新聞に伸び、当選結果を掲載しているページを開き、見比べる。
そうして"伝説のカモ"は顔を渋くすることになった。

「三等......」

なにか、嫌な予感がする。



その日、IQ200の超天才少年シカマルは、終日雲を見ながらのんびりする予定であった。
召集がかけられない限りは任務がない。中忍になってからというもの毎日が目まぐるしいが、その分シカマルは休日を重宝できるのである......といってもすることといえば、空を眺めることばかりだが。
幼い頃から変わらず 雲に憧憬を抱いているシカマルは、今日も今日とて自分の特等席を目指していた。

「あ!」

だがその道中 不意に声が聴こえ、シカマルは目を向けた。

「シカマル兄ちゃーん!」

元気よく手を振るアカデミー生が道の向こう側にいる。シカマルは確かにその顔に、というよりはその髪色に、見覚えがあった。バイバイ、と無邪気に言う少女の色は、この里には珍しい銀色。

シカマルはひらひらと手を振り返す。満足げに笑った少女はあっという間に消えていく。
シカマルは僅かに目を細めていた。脳裏に過った感情はひた隠しにして、だが、シカマルは足の向く先を変更して、再び歩き出していた。



ーーそうしてシカマルの眼前に広がったのは草原だった。
火影岩に近い丘陵。ここ木ノ葉で最も空に近いこの丘には何も無いが、木々は伸び伸びと生えている。その一本であるよく茂った木の下に腰を下ろし、幹を背にしてシカマルは目を瞑っていた。

その脳内に響き出す懐かしい声。ここ数年聴いていない声は、しかし鮮明に残っている。思い出すのは幼い少女の顔ばかりだった。

『あれ?シカマルくん?』
『!......カナ......だっけか?お前、何でこんなトコ』
『あはは、私もびっくりした。シカマルくんもここ知ってたんだね』
『オウ......ここは木ノ葉で一番空に近いからな。雲もよく見えんだ。ま、家から遠いから滅多に来れねえけどよ』
『雲?』
『そ、雲。雲っていいよなァ、日がな一日空でのんびりしてられるんだからよ...とか思いながら眺めんのが、オレの一番好きなコト』
『へー......。変わってるね、シカマルくんって』

ここは、シカマルがかの少女、カナと偶然遭遇した場所だった。たまに挨拶する程度の関係だった二人が、初めて会話らしい会話をした場所。ああ言ったらアイツ面白そうに笑ったよな、と思い返す。そしてその時、初めて思ったのだ。雲のような笑い方をする少女だと。

柔らかく、日常の何もかもを受け入れる、ふわりとした笑顔。

とてもじゃないが幼い子供がするような笑い方ではなかった。雲のようだと思った幼いシカマルも、どこかでそれは感じていた。その感覚は、ある時に確信となった。

いつかの放課後の演習場で、クナイを手に修行をしているカナを見つけた時だ。シカマルはその時 思わず瞠目していた。その時のカナの顔は、それほどに真剣だったのだ。

『......お前、何でそんな一生懸命なんだ?』

シカマルが声をかけると、カナはきょとんとした顔で振り返っていた。

『あ、シカマルくん。どうしたの?』
『いや、たまたま見えたから......。お前、なんかムキになってる気がしてよ』
『......そう見える?』
『......おう』
『そっか......うん......怖いから......だと思う』
『......怖い?何が?』

当時 カナの境遇云々を何も知らなかったシカマルは、問うておきながら、"不出来だったら先生や親に怒られるから"だろう、と思った。当然だった。共にアカデミーに通う同級生が、信じられないほど重たいものを背負っているなど、想像できるはずもなかった。
だが、弱々しく笑った小さなカナは、ぽつりぽつりと呟いた。

『だって......消えていくの......何もかも。何もかも、だよ。護れる力がなかったら、全部両手から落ちていっちゃうんだ。どんなに大切に思ってても関係ない......大きな力に、無力な私は勝てなかったもの。だから、私は強くなりたい』

それは予想以上に大きく、苦しい答だった。だが、そうであってもその時のカナの瞳は強かった。その時、シカマルは初めて、カナの芯に触れた。

現在のシカマルはそうっと瞼を上げ、自身の手を目の前に翳した。

「(あれからオレは成長した......けど、カナ。オレはまだ、あの時のチビのお前にさえ勝てない気がする)」

あの時の強い瞳。暗い過去を呑み込んでなお、真っ直ぐだった視線。平和が、平穏が何よりの幸せであるとカナはあの時から知っていた。だからずっと戦っていたのだ。カナの幸福ーーー周囲の笑顔。つながり。それを護りたいが為に。ーー今も、ずっと。

「(今は、一人で戦ってやがる.......。お前は昔っからそうだった。自分のことなんていくらも話さねえで、それで平気な顔しやがって)」

ーーーそれは、唐突に聞かされた"仮説"。第七班よりもたらされた、ある一つの可能性。

カナには復讐なんて言葉は似合わない。それは誰もが思っていたことだ。だからこそ、シカマルを含む同期たちの中では既に、その話が確かなものとなっていた。
あの時、ヒナタやいのは隠しきれないほどに泣いていた。チョウジやテンテンは鼻をすすっていた。話していたサクラも涙目ながらにだった。それ以外は、反応しなかったのではなく、しきれなかったというほうが正しいだろう。シカマルも、その内の一人だった。

「(......カナ、オレは......柄にもなく悔しかったんだ。頭脳の点では評価されてるオレだけどよ。見抜けなかったんだもんな。......それに......お前が、サスケ一人にとられちまったんだって、分かったから......)」

手の平を拳に、それを額に当ててまた瞳を瞑る。思い浮かぶのは雲のように笑うカナばかりだった。らしくもない感情を昔から抱いていた。
あの雲に、また木ノ葉で笑って欲しい。
事情を知る誰もが抱く気持ちであろうけれど、シカマルは一層強くそう願っていた。


「シカマル」
「!」

その声に思わず跳び上がってしまったシカマルは、しかし、目前の人物を見た途端大いに脱力してしまった。

「なんだ......アスマか」
「なんだとはなんだ、なんだとは。ったく、お前は相っ変わらず雲ばっかり見てんなぁ」
「......今日はまだほとんど雲なんか見てねぇよ」

シカマルは以前の上司、アスマに聴こえないほど小さく返してから、ゆっくりと腰を上げた。「なんか言ったか?」とアスマが問いかけられたが、くわりと大きくあくびをして応えない。それで「で、何のようだ?」と訊くもので、アスマはわざとらしく溜め息をついた。

「召集だ。五代目が今すぐ集まれだとよ」
「......めんどくせー」

珍しい休日が途端に日常に変わってしまったことに、シカマルもまた溜め息を漏らす。先行くぞ、とアスマはすぐさま消えたが、シカマルはまだ休日の余韻から抜けられない。先ほどまで座っていた木陰を振り返り、じっと見つめるーーーたまにその木陰で寝ていた少女の姿はもちろん、無い。

「(お前がどう思っていようと......オレにもそんなに余裕あるわけじゃねーんだ。無理矢理にでも、絶対に連れ戻してやるからな)」

それからシカマルはすぐ消えた。
残ったのは風に揺られる草花と、ざわめく木の葉。穏やかな日和は何も変わらず。






カナを連れながら、トビは休む間もなく移動し続けていた。景色はどんどん流れていき、森を抜け、川を飛び越え、宙を舞う。それなりの時間が経過しているはずが、トビが疲労している様子はまるでない。

「もうお二人に近づいてきましたよー!」

トビが明るく声をあげた。しかし対して抱えられているカナはといえば、ぴくりとも反応を示さなかった。深く被ったフードの中の瞳は朦朧とするばかり。


たん、と軽やかにトビは地面に降り立った。それと同時にカナも下ろされる。急のことにカナはよろめいたが、その腕はトビが掴んだままなので尻餅をつくことはない。しっかりして下さいよカナさーん、とトビは声を張り上げたが、カナに応えを求めるでもなく、そのままカナの手を引いて歩を進めるだけだった。
その先は、トビと同色のコートを羽織った男である。

「飛段せんぱーい!ほんのちょっとお久しぶりでーす!やっと追いつけましたー!!」
「あァ?」

飛段が大鎌を背負って座っている。その瞳は気怠そうに上げられ、いつもの如くテンションの高いトビと、引きずられるように歩いているカナを見比べた。

「あー、忘れてたわ。お前らか」
「ちょっとちょっと、人に命令しといて忘れてるなんて酷いでしょ先輩!」

ぽりぽりと頭をかく飛段に、トビは不満そうに声を上げる。そうして、トビが「よっと」とカナを放した、瞬間。

「!!」

ーーハッと我を取り戻したカナはびくりと揺れ、瞬時に飛段とトビから距離をとっていた。
肩で息をしている様子からは、とても今の今まで黙っていた者とは思えない。目を剥かんばかりに開いているカナに、飛段が実に怪訝そうに目を向けた。

「んだよお前、トビに掴まれてた時はやけに大人しいと思ったら......はなした途端、反抗的な態度に逆戻りか?何したんだよ、トビよォ」
「えーっ僕なんもしてないですって!あ、でも、敢えて言うならァ......僕の格好よさにトキメいちゃってたとかじゃないッスかね!」
「......ありえねェわ、ホント」

戯れ言を並べ立てているトビには溜め息をついて、飛段は改めてカナを見た。しかし、そのカナはといえばトビを食い入るように見つめるだけで、飛段のことなどはなから目に入っていないようだ。飛段は更に眉をひそめた。

「...オイ、"神人"」

...だが返事はやはりなく、カナはぴくりとも反応を示さない。さすがにカチンときた飛段である。

「オイ、聞いてんのかテメェ!!このオレに返事しねーとかどういう了見だコラ!!」
「キャー飛段先輩こっわーい!」
「お前はうっせーぞトビ!!オラ"神人"、ちょっとは反応見せやがれ!!」

冗談めかして腰を振るトビは放り、飛段はもう一度 カナに呼びかける。しかし、結果は同じだった。額に青筋までたて始める飛段をなんとかトビが止めているが、更にヒートアップしてるだけにも見える......二人共が騒ぎ、うるさいことこの上ない。そ
れでも、カナは動けず、荒れる息を押し殺して、動揺が残る瞳でひたすらトビを見つめるばかりだった。

「(.....いつの間にか、意識を奪われてた......気付けも、しなかった)」

どうやって幻術に捕われたかすら、カナにはわからなかった。それほど自然な動作でカナは幻の渦中に誘われたのだ。今にもまた嵌められるかもしれないと思ったら、気が気でいれるわけもない。

「(意識を、外せない...!!)」

今までに会った誰よりも、トビは嫌な感じがする。

そんなトビを前にして、そう簡単に、目を離せるわけがないーーーーー


キィン___!!


ーーその時 聴こえてきた金属音も、カナがトビから意識を外すまでのことではなかった。

けれど、今の今まで何にも反応しなかったカナが、突然 我に返ったのは、懐かしいチャクラを肌で感じ取ったからだった。

フードの下のカナの瞳が大きく見開かれる。

猿飛アスマが、奈良シカマルが、そこにいた。


 
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