第三話 遅刻の上忍


散らかり放題のその部屋には今、二人の男の影があった。
一人は"火"の文字が書いてある笠をかぶった老人。そしてもう一人は、顔の半分以上を覆面で隠した銀髪の怪しい男である。

「ここがナルトの家ねえ」

その呟きに老人が「そうだ」と返すのを聞きつつ、男はテーブルの上の牛乳を手に取った。そして呆れ顔を見せる。賞味期限切れだ。

「間抜けな奴だが、お前に見張らせるのが一番だからの......お前は鼻が利く。それとお前の受け持つ班には、例のうちは一族のサスケ、風羽のカナもいるぞ。大変だろうが、健闘を祈る」
「......了解」
 
こりゃ大変な事になりそうだ。覆面男は面倒くさそうな顔を隠そうとせず溜め息をついた。

この後、彼はすぐ今の話題の中心となっていた"彼ら"と顔を合わせることになる。
彼にとってはすぐでも、"彼ら"にとってはかなり遅いのだが。



カナがサクラと共に教室に戻った時、卒業生はほぼ集まっていた。時間に大体正確なサスケももちろんのこと。ただ、ナルトはそれから数分遅れてやってきてサクラにガミガミ怒られることになったが。
そしてそんな二人の横で負のオーラを出しっ放しだったのがサスケだった。

「......なにかあったの?サスケ」
「別に、なにもねーよ」

サクラが何かおどおどしていたのと関係があるのか、それともそれは無関係なのか。とにかくずっと不機嫌オーラを包み隠さず発していて、今も七班以外がいなくなった教室をそれで埋め尽くしているようだ。何故か来ない上忍に苛ついているというのもあるだろうが。

それから結構な時間が経った。

「ちょっとナルト!じっとしときなさいよ!」
 
サクラの声で視線が集まる。教室内をうろうろと意味もなく歩き回っていたナルトは、ぶーっと頬を膨らませるナルトは、我慢できないというように吐き出した。

「なんでオレたち七班の先生だけこんなに来んのが遅せーんだってばよぉ!」

ごもっとも。

「でもナルト、何してるの?」
 
カナが不思議そうに首を傾げる。どうやら黒板消しをドアの間に挟もうとしているらしいが、いたずらにしては定番すぎるものだ。

「遅刻してくるヤツが悪ィんだってばよ!」

ニシシ、と さも楽しそうにナルトは仕掛け終え、身長足らずのため乗っていた椅子から降りた。「ったくもー!」と怒るサクラにも、楽しそうな表情が見える......というのは気のせいという事にしておこう。

「......さすがナルト」
「褒めてどうする。大体、上忍があんなベタなブービートラップにひっかかるかよ」

まして上忍が、だ。サスケの中の確固たる自信として、もしあれに引っかかる者がいれば、サスケは決してそいつを敬うことなどできないだろう......果たしてサスケの中に人を敬う気持ちがあるかは微妙なところだが。

しかし。


バフッ


間抜けな音が教室に響き渡った。
見事に白チョークの粉を被ったのは、覆面をした銀髪の男。

しーん......という静寂が教室を襲ったのも束の間、ついに「ぎゃっはははははははは!!!!」と馬鹿にしたナルトの笑い声があがった。

「引っかかった!引っかかった!上忍がひっかかったってばよォ!!」
「先生ごめんなさい、私は止めたんですがナルトくんが!」

涙を堪えて笑い続けるナルトと、弁明しつつも心中笑っているサクラ。

「(これで本当に上忍か?頼りなさそうな奴だな)」
「......!?」

本気で白けた目線を送るサスケと、ポカーンと男を見ているカナ。
その四人のそれぞれの反応に、銀髪上忍は手を口に当て、わざとらしく考える素振りを見せたのだった。

「んー......なんて言うのかな。お前らの第一印象はぁ......キライだ!」

にっっっっこり。満面の笑顔でキライ発言をされ、その場の空気はずーんと重くなった。


 
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