第六十三話 陰


なんとか二人の仲を緩和させたカナだったが、それだけに全力を費やしたせいで無駄に疲労した気がするのは気のせいではないと思う。それでもまだ喧嘩したりないようで、自分を挟んで睨み合うサスケと紫珀に、カナは強烈な居心地の悪さから渇いた笑いを漏らしていた。
それは傍観していたカカシも同様である。しかし「さて」と始める切り替えの早さはさすがだ。

「やっと本題に入ることができるわけだが。紫珀、だっけ?」
「なんやねんマスク野郎」

とんでもなく失礼なことを言い出した紫珀に、カナは慌てて「し、紫珀!」と咎めるわけだが、本人にしたらどこ吹く風。カカシも特に咎めなかった。

「気にするな、カナ。で、紫珀くん?キミに頼みがあるんだけど、これをある人物に届けてきてくれないかな」

そう言うとカカシはいつ書いたのか、小さく折り畳まれたメモ用紙を差し出した。無論書かれている内容を伺うことはできない。興味を持ったサスケとカナだが、カカシは紫珀に視線を向けているだけだった。

「頼まれてくんない?」
「はあ?なんでオレ様がそないなこと。大体、お前は誰やねん!オレは得体の知れんヤツのことなんか一切聞かんぞ!」
「いや、カナの担当上忍なんだけど」
「たんっ......や、やからなんやっつーんやこのすっとこどっこい!!」
「すっとこ......紫珀、口が悪いよ、先生なんだから」
「それくらいのこともできねーのかよ」

最後の台詞は紫珀の従来のライバル・サスケである。
嘲るようにサスケが言ったその数秒後、びきり、と聴こえた気がした。どこからだとは言わなくても分かる。カナを挟んで見えない光線が飛んでいる。言い合いに発展するまであと数秒もかからない!

「まあまあ、紫珀!紫珀なら届けるなんてこと、雑作もないことでしょ?カカシ先生は紫珀の能力を見込んで頼んでるんだから!」

カナが見えない光線を遮るようにして笑顔を向ければ、しゅううと事態は収束した。紫珀はふいとそっぽを向くし、サスケも一応口を噤む。しかも、紫珀はわざとらしい溜め息をついてから、カカシに歩み寄って乱暴ながらも紙を受け取った。
「しゃーないなあ、もう!」と大げさに言う紫珀を見ながらカカシは感嘆する。意外と主人には従順らしい。

「んで?誰やねん、その"ある人物"っちゅーのは」
「んー、いや、それはオレの忍犬が判断してくれるから。キミにはその足になってほしいのね。今から口寄せするから少し待って」

しかし何でもないことのように言うカカシに紫珀のほうが焦った。

「おい、ちょっと待てや。つまりアレか?お前のその忍犬をオレ様は背に乗せて」
「そういうこと」
「ノーサンキューや!オレ様は自分で認めたヤツ以外はそうそう乗せんねん!」

そう言ってそっぽを向いた紫珀を見て、カカシはついにナルトを思い出した。本当に主人とは正反対のやかましくて我が強い口寄せ動物である。
「もう、紫珀......」と溜め息をついたのはその主人で、カナは申し訳無さそうにカカシを見た。

「先生、紫珀はきっと一人でもその人を捜せると思うので、ここはワガママを聞いて上げて下さい。スミマセン」
「ワガママちゃうわ阿呆!」
「分かった、じゃあお前だけに頼むよ、紫珀」

誰かが何かを発言する度に突っかかる紫珀だが、カカシの発言には満足したようだった。するとカカシがちょいちょいと紫珀だけに合図し、「じゃ、こいつの顔覚えて」と言って指を指したのは、いつの間にかその手にあった、一冊のファイルの写真であった。

「それはなんだ」

サスケとカナには見せてくれないらしく、サスケが訝し気に問いかけるが、カカシは返事をしようとしない。一方で紫珀もまた首を傾げていた。

「(こりゃ......暗部のファイルか?なんでこんなもんを、コイツが)」

暗殺戦術特殊部隊、通称暗部のメンバーがずらっと並んだファイル。特にカカシが指差した先には犬らしき面をつけた男が載っていた。
沈黙数秒、カカシはぱたんとそのページを閉じた。

「覚えたか?」
「ああ、まあ......せやけど、そもそも何でコイツを探しとんや?」
「そう気にしない気にしない!あとでわかるから、多分」
「......顔がめんどいっちゅーてるぞお前。ホンマなんでこんなん持ってんねん」

「"こんなの"?」
「さっきから何の話してんだ」

いい加減 好奇心が抑えきれず、一歩前に踏み出すカナとサスケ。カカシはそれを「なんでもなーいよ」といつもの調子で誤摩化しつつ、紫珀を見て「行け」と合図を送った。
それを受け取ってしまった紫珀は、やはり面倒くさそうに溜め息を零す。だが、次第にその大きな翼を広げていった。

カナとサスケが何かを言う間もなく、紫色の忍鳥は優雅に地を発った。



───その空間は、日が入っているにも関わらず、相当な暗い雰囲気に包まれていた。

そこはある建物の一室だった。あまり掃除がされていないのか埃は溜まっている上 、天井のほうにはクモの巣も張り付いており、かなりの廃墟を連想させられる。ここ木ノ葉でも端に位置する家屋の内部。普段誰かが使っている様子もない。申し訳程度にぶら下がっている電灯は、果たして今も役割を果たすのか。
そこにいる一人の青年が、部屋の壁にあるスイッチを押してみた。しかしやはりというべきか、電灯は無反応であった。

「暗ェな」
「あら」

青年の言葉に驚いたとばかりの声が返ってきた。青年の背後の壁で、腕を組んでカビだらけの壁に体重をかけている男。

「意外な行動をするのね。灯りなんて必要ないわ。灯りを好んで必要とするのは、光に慣れた愚弄で平和ボケしている者共だけでしょう?お前だったら、それくらい分かっていそうだけれど」

青年は振り返って不敵な笑みを貼付けた。窓の桟に両腕をかけて、フン、と鼻で笑う。

「どいつもこいつも陰気なヤツばっかだな」
「キミが今"所属しているところ"もそうじゃないのかい?北波」

また違う声が飛ぶ。男とは反対の位置で真っ直ぐ立っている者の声だ。眼鏡の奥の目は、青年を突き刺すように睨んでいた。青年・北波は、その様子にまた、鼻で笑った。
音の忍として試験に臨んでいた北波、そしてその引率者として姿を見せていた大蛇丸、木ノ葉の忍を偽り スパイとして活動してきたカブト。決して広くはない空間に、この三人が顔を突き合わせていた。

ただ、今は試験ではないからか、それとも別の理由があるのか。北波は額当てを付けていない。

「オレの正体が分かった途端にこれだもんな、カブト。今までどおり"仲良く"しようぜ?」
「誤解するような言い方はよしてくれないかな。僕は一度だってキミと仲良くしたつもりはないよ」
「はは、ま、オレもだが」

北波は皮肉った目をカブトに向けた後、唯一の光をこの部屋に注ぐ窓の外へと視線を流した。深い茶の色をしている瞳の奥の真意は読み取れない。だが、ふとその目が瞬きする。切れ長の瞳に映る、青空以外のものがあった。

それは、紫色の小鳥だった。

強気そうな性格を十二分に現している瞳に、深く、沈むような紫色の羽毛。口に何かをくわえ、この雄大な空を真っ直ぐに突き進んでいる、忍鳥。

無意識に小さく口を開いていた北波は、すぐさま唇で閉ざして強く歯を噛み締めていた。まるで何かを殺さんとするように。
しかし北波の脳内に流れている記憶は止まることはなかった。



「どうしたのかしら?」

大蛇丸の絡めとるような声が北波の耳に障った。暫く脳裏に気をとられていた北波はゆっくりと現実の視界を認識する。
大蛇丸は目を細めて北波の様子を伺っていた。しかし、北波は動揺することも応えることもなく、「いや」とだけ返してから取り繕うように「そういえばよ」と続けた。とはいえ、北波がそのことを話題にしたいと思っていたことも確かだった。

「ずっと聞きたいと思ってたんだが。予選の時の、カナ......アイツの反応。"あの事件"を改めて見せつけられた時、オレはてっきり風が暴走してアイツを守ろうとすんのかと思ったが、そうはならなかった」

雰囲気を豹変させ、瞳の色を金に侵食され、そして仲間の呼びかけにも応じず、挙げ句の果てには大切であるはずの仲間を戦闘に巻き込みそうになったカナ、を北波は思い出す。暗部に扮して試合を観戦していたカブト、音の担当上忍としてその場にいた大蛇丸も、北波の言葉に等しく思い返した。
あの時のカナの様子は、ある意味では暴走に違いないが、それは神人に現れるという危険信号、"風の暴走"でなかったことは確かだ。

「けど、オレの持って来た"資料"にそんなことは書いてなかったはずだ。───"神人"の能力は三つのみ。特定の条件下でのみ発動できるという"口寄せ"。"神人"の強い意思や身の危険を感じた時のみ発動する"風の暴走"。第三者の想いの強さを感じた時のみ発動する、"神移"......いわゆる瞬間移動能力」

すらすらと口に出す北波は、暗い瞳を大蛇丸に押し付けた。

「───アイツの両親は、あの時その"神移"でアイツをアンタから救った」

くすり、と笑ったのは大蛇丸。なにが面白いのか口元を吊り上げている大蛇丸に、カブトは怪訝気な目を、北波は胡散臭そうな目を向けている。だがそのまま北波は続ける。

「この三つは、いずれも"神人"に助力するものだ。この三つのみが、"神人"が特異に発動する能力......だったはずだ。古ぼけた資料には確かにそう記してあった」
「フフ。ええ、私も覚えているわ」
「なら、なんでアンタは......アイツの目が金色に変わった時にも、さした動揺を見せなかった?むしろ思惑通りとでもいうような顔をしてたよな。......アイツにつけた、"呪印の作用"か?」

カナの首筋にくっきりと現れていた、鳥を司ったような刻印。北波の脳内に死の森での記憶が甦る。大蛇丸の台詞。"カナにつけた呪印は、他のどれとも異なるもの"。結局北波はそれがどういう作用を伴うか、詳しくは聞いていない。

「なかなか鋭いわね。あの試合中、私の顔を見るような余裕があったのかしら?」
「なめんじゃねえ。アイツは怒りに呑まれて一切の躊躇がなくなり力を発揮しただけで、戦闘能力が格段に上がったわけでもなかった。まだ十二のガキに押し負けるようなオレでもねェよ」
「フフ、まあ当然といえば当然かしら。そこまで分かってしまったのなら、隠す必要もないわね」

しかしそこまで大蛇丸が口にした時、カブトは目に見えて焦り、「大蛇丸様」と口を出した。

「おやめ下さい。北波が"スパイ"であることは、既に明確となっているはずです。こうして傍に置くことなど、ましてや情報を与えるなど」
「もっともな意見だな、カブト」

だがカブトの忠言に真っ先に返事をしたのは大蛇丸ではなく、はたで聞いていた北波のほうだ。「だが」とそのまま続ける。

「前も言ったはずだ。元々、"オレが何者か"を一切詮索しねえことを条件に協力し始めたんだぜ?同時に協力"してもらった"んだけどな。......それを破ったのはそっちだ。とやかく言われる筋合いはねえだろ」
「それが大蛇丸様の敵じゃなければね。詮索はしてただろうけど、何も口出しすることはなかった。けど、キミは"あっち"の者なんだろう?」
「長年守ってきた契約を破られるとはな。大方、オレの有用性が尽きたと思われたってとこか?」

さも可笑しそうに北波は笑い出す。しかし、苛立たしそうにカブトがまた何か言おうとした時、大蛇丸はそれを片手で制していた。大蛇丸様、と呟くカブト。喉を震わすように笑っていた北波もそれに気づき、不敵な目を大蛇丸に向けた。

「フン......さすが、話が分かるな、"大蛇丸様"」
「北波、キミは」
「いいのよ、カブト。確かに契約だったのは確か。それを破ったのはこちら。それに知られたところで別に構いやしないわ」

大蛇丸は言った後、初めて敵意のある視線を北波に送っていた。

「一度手に入れたものは、絶対に......手放さないのが私のポリシーだからねェ」
「......さて、それはどうかな」

その途端だった。
カブトは、ぞくりと背中に嫌なものを感じていた。
カブトの目前には睨み合う二人。蛇である大蛇丸と、獣である北波。どちらも紛れもない捕食者。その尾で絡みとったものは、決して逃しはしない。

カブトは初めて感じていた。この北波という自分とそう年の変わらない青年に、悪寒を。普段の態度の裏に潜んでいた本性が、じっとりと姿を現し始めている。北波は───強い。

「フフ......」

沈黙に幕を下ろしたのは大蛇丸。目つきは変わっていないが、戦闘の意思はないと言うように腕を組んだ。

「中々のチャクラね。今の今まで実力を隠していたのかしら」
「よく言うぜ。あんたのことだ、人の力を見極めるのは得意だろうが」

やれやれと首を振った北波は、「んで?」と切り替えて再び窓のほうに顔を向けた。

「結局、教えてくれんのか?アイツの呪印のことを」

大蛇丸も北波から視線を外し、トン、と壁に背をつける。大蛇丸様、とカブトは短く呟いたが、やはり大蛇丸はそれを制した。向けられた視線にカブトは余裕を見て、ようやく諦めたように瞼を下ろした。

「カナちゃんにあげたのは、"柵"という呪印よ」
「......"しがらみ"、ね。アンタらしい、嫌な名前だな」
「あら、いいネーミングだと言ってくれない?風羽という鳥を"押さえ付ける"のに、ぴったりでしょう?」

その言葉に、北波は思わず思考を停止して、無意識に大蛇丸に顔を向けた。大蛇丸は相も変わらず意を読み取れない顔をしているばかりだ。

「"押さえ付ける"?」

北波は、その大蛇丸の言葉に違和感を覚えていた。北波の頭にある呪印についての知識がそれを促進させている。呪印は、まさに、"力を増幅させる"呪いのはずだというのに。
北波の脳内に死の森での大蛇丸の言葉が過った。

『籠の中の鳥......素敵じゃない』


「そう。察しのとおり、"柵"は他の呪印とは逆ベクトルの呪いよ。増幅じゃない......抑圧。抑制し、"最大の効果"を発揮させない。そう......"神鳥"、のね」
「......理解し難いな。他人の力を利用してばかりのアンタが、なんでんなこと」
「そう言わないでもらいたいわ。この事は、私も不本意ではあったのよ」

大蛇丸は肩をすくめる。

「私が"神鳥"の力を間近に見たのは、たった一度きり。十年前、捕まえていたはずのカナちゃんが、突然私の前から姿を消し......同時にカナちゃんの両親が血を吐いた時のみ。あの瞬間すぐに理解したわ、これが"神鳥"の能力なのだとね。......戦慄したわよ。人一人を印も何もなく、時空を超えて動かす力。その力の強大さに、私は確かにおののいた」
「......」
「北波、お前の情報によると、"神鳥"は意思を持っているのよね?」

大蛇丸の問いに北波は軽く頷く。それは風羽の集落に残されていた情報である。北波の頭に、"神鳥"に関してのことは一言一句違わずに残っている。
"神鳥"は、"神人"の意思ではない。"神鳥"自身が意思を持ち、"神人"とは独立せし存在。

「その事はきっと、"神人"にとっては都合のいいことなんでしょうね。体内に自分の仲間が一人、生きているということなのだから」

大蛇丸の言いように北波はようやく合点がいったようだった。

「なるほどな......"神鳥"の力の膨大さ。それは味方になれば心強ェけど、仮にアイツがアンタ側に来たとしても、"神鳥"がその意思に反しようとしてたら、厄介なことになる」
「そういうことよ。"神鳥"の力は、あるいは尾獣一匹と同等かもしれない。そこは断定できないけれど、先に押さえ込んでいた方が楽でしょう。多少 私の欲する力は落ちるけれど、面倒なことになるよりは断然いいわ。つまり、私の呪印のおかげで、"神鳥"は今 フルに力を発揮することはできない」
「......んで」

北波は目を光らせた。

「その"神鳥"が現れようとした結果が、あの"金の瞳"ってわけ、か」

───"神鳥"を宿している本人は、闇の中で真実が語られているとも知らずに。訪れる未来も知らずに、穏やかに笑っている。



面をつけた一人の暗部が火影室の戸を静かに叩いた。その数秒後、入って良いぞ、と威厳があるとともに柔らかな声が響く。開いた戸から頭を下げつつ部屋に入る暗部を前に、部屋の主である三代目は「すまんの」と切り出した。

「暗部のお主にこのような仕事をさせて......疲労はせんであろうが、拍子抜けじゃろう」
「いいえ。確かに普段の任務とはかなり差がありますが、それでもまだ遂行できていませんし。火影様が今 最も気にかけていることを、僕なんかに命じて下さっているのに」
「気にせんでもよい。まあ恐らくカカシあたりじゃろうとは目星がついとる......二人同時に消えたのだからの」

と暗部をフォローしつつも、それでも三代目は心配そうに苦笑した。冷静に考えれば、今述べたようにカナの担当上忍であるカカシによるものなのだろうと分かるが、カナやサスケが消えたとの報告を受けた時の三代目の驚きようといったらなかった。

「しかし、カカシが付いとるとはいっても、安心はできん。カナとサスケ、二人の捜索をまだ暫く続けてくれ」

「御意」と返した暗部は、その場から瞬身で消えていた。


木ノ葉の里を見守るようにして作られているものがある。言わずと知れた火影岩のことだ。そこには歴代の火影の顔が揃っており、厳しくも優しい表情で里を見下ろしている。つまりその顏岩までいけば木ノ葉全体を見渡すこともできる。
暗部は一瞬で頂上まで上がると、面をつけたまま「やれやれ」と溜め息をついた。

風羽カナ、うちはサスケが病院から抜け出し今日で四日目。ある日 三代目に命じられてから連日二人の捜索を行っているが、いくら捜しても見当たらない下忍二人。
まさか下忍に出し抜かれている!?と思った頃に、三代目にカカシについて聞き、暗部は納得さえしてしまいそうになった。カカシほど抜け目がない忍も早々いないということを、この暗部は知っていた。

「(まったく、あの人は)」

カカシのことをよく知っている者にしてみたら、またあの人は、ということになるのである。果たしてあのカカシを出し抜ける人がこの世に何人いるのやら。
そう暗部が一人考えに耽っているときだった。


「オラッそこの暗部!!」
「!?」

いきなり背後から怒鳴られ 暗部はすぐさま振り向いた。が、まさかの敵襲かと思って引き締めた顔も面の中ですぐ崩れる。

何せ、そこで「発見や!なんやえらく早う見つかった、オレ様ってやっぱ天才か!?」などと叫んでいるのは人ですらない。紫色の羽毛に強気そうな金の瞳。本当にただの鳥だった。
とはいえ、喋って怒鳴る鳥というのは珍しいので"ただの"は語弊かもしれないが。

「おぉ?何 ぼーっとしとんや、聞いとんのんか?」
「え、えーっと......僕に何か用かい?」
「マジで聞いとらんかったんかいお前......カナの忍鳥・紫珀様の言葉ァ無視するとはいい度胸やな」
「忍鳥......カナ?......風羽カナ!?」
「うおおっ!!?」

暗部の面越しの瞳に、忍鳥が足に掴んでいる紙切れが目に入った。


 
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