第三十二話 再不斬、雪に散る


今まで戦闘の場に立っていた四人の瞳に映るガトー、そしてその配下の男達。彼らの下卑た笑い声がところどころから聴こえてくる。
先に切り出したのは再不斬だった。

「ガトー、どうしてお前がここに来る。それになんだ、その部下共は!」

その再不斬の言葉がいかにも面白いというようにガトーは笑い、「少々作戦が変わってねェ」と杖をコンクリートについた。

「悪いが再不斬。お前にはここで死んでもらうんだ」
「何だと」
「正規の忍を雇えばやたら金がかかる。そこでお前らのような抜け忍を雇ったのだ。ついでに忍同士相打ちにでもなれば、手間も金もかからずにすんだんだがなァ?」

再不斬も知らなかった裏の作戦がそこにはあった。それはあまりにも卑怯で汚い手、怒りを誘うのには十分な言葉。ガトーは笑いながら唾を吐く。

「全く、霧隠れの鬼人が聞いて呆れるわ!私から言わせりゃぁなんだァ?ただの可愛い小鬼ちゃんってとこだなァ!」

すると何が可笑しいのか、その後ろの集団が喚き笑い出す。悪党そのものがそこにはいる。
ナルトとカナは 自然と下唇を噛みしめ、今にも表に出てきそうな怒りを押さえ込んでいた。一方で、再不斬とカカシは至って冷静だ。

「......カカシ、すまないな。戦いはここまでだ」

睨むように大群を見る再不斬が口をきく。今、再不斬がタズナを狙う理由がなくなった。それは必然的にカカシとの戦いの意味もなくなったということになる。カカシは「ああ」と静かに返した。

二人が見つめる先にいるガトーは未だ笑っていた。が、ガトーはふと気がついたように前に歩き出た。カカシ、再不斬とガトー一派の間に横たわっている白の姿を見つけたのだ。ガトーは靴の先でゴンと白を蹴った。

「そういえば、コイツには借りがあった。私の腕を、折れるまで握ってくれたねぇ......オラァ!!」
「てんめェェ!!何やってんだってばよコラァ!!!」

途端に激怒を口にして走り出すナルト、だが、カカシに襟首を掴まれて呆気なく遮られる。

「迂闊に動くな。......お前もだぞ、カナ」

カカシが視線を向けた先、そこには今にも動き出さんばかりに震えていた姿があった。カカシの言葉を耳に、カナは痛いほど拳を握りしめ、はい、と震える声を漏らす。
しかし、ナルトはそう簡単に止まらない。怒りの矛先は、隣にいる再不斬へ。

「お前もなんとか言えよ!仲間だったんだろ!?」
「......黙れ小僧。白はもう、死んだんだ。ガトーがオレを利用したように、オレも白を利用していただけ......オレが欲しかったのはアイツの能力で、アイツ自身じゃない。......未練は、ない」

だが返ってきた再不斬の言葉はあまりにも冷静で、それこそ───"忍そのもの"だった。だがそうだとしても、ナルトにはそれが"正しい"とは思えないのだ。

「お前ってば......お前ってば、本気でそう言ってんのか......?」
「やめろ、ナルト。もうコイツと争う必要はない」

今にも爆発しそうなナルトの声を聞きつけ、カカシは宥めるようにナルトの肩に手を置いた。
ナルトの言葉への再不斬の答はない。ナルトの胸にまた黒いものが疼いた。言葉に出来ない嫌な塊だった。
ナルトはカカシの手をも振り払っていた。

「うるせェ!オレの敵はッまだコイツだァ!!」

ナルトの指は真っ直ぐ再不斬を差した。再不斬の目がギロリとナルトを向く。しかし、今のナルトはそれに怯むこともない。次々とナルトの脳に甦る記憶、白が言っていた言葉の数々、それらがナルトを後押しする。

「アイツは......アイツは!!お前のことが本気で好きだったんだぞ!!」

今思えば、森で白は再不斬のことを想っていたのだろう。

「あんなに大好きだったんだぞ!」

想いながら、ナルトに"本当に大切なこと"を教えていたのだろう。

「それなのに......それなのに、本当に何とも思わねェのか!!ホントにお前は、なんとも思わねェのかよ!!」

白の言葉の中心はいつでも再不斬だった。白の世界はそれほど再不斬を中心に回っていたのだ。部外者でも分かるほど、再不斬への白の想いは強かった。

「お前みたいに強くなったら、本当にそうなっちまうのかよ......」

ナルトは涙を零し始める。敵だったはずなのに、ナルトへ襲う哀しみは尽きない。

「アイツは、お前の為に命まで捨てたんだぞ!」

ナルトの心底からの言葉はカナをも突き刺す。カカシ同様カナも黙っていたが、思わずその瞳に涙を浮かべた。言葉にしきれない想いがナルトの涙に現れていた。

「自分の夢も見れねぇで......道具として、死ぬなんて......!そんなの......そんなの、辛すぎるってばよ......!」

道具として、死ぬ。それは白自身が望んでいたこと。けれどナルトにとってそんなもの納得できない。そんなことが幸せであっていいはずがない。
ナルトの涙は冷たいコンクリートを濡らしていく。ナルトは強く瞼を閉じ、それを止めようとした。

けれど、ふいにナルトの耳に再不斬の声が届いた。

「小僧......」

それは、どこか震えているような。

「それ以上は、何も言うな」

ナルトはゆっくりと顔を上げた。そこに見えたのは、再不斬の涙。
再不斬は、確かに泣いていたのだ。ナルト、カナは目を見張る。カカシは静かに再不斬の言葉を聞いていた。

「白は......アイツは、オレだけじゃない。お前らのためにも、心を痛めながら戦っていた。オレにはわかる......アイツは、優しすぎた」

再不斬の頭にもこれまでの思い出が流れていた。初めて出会った頃からずっと柔らかく笑っていた白。その笑顔。本来なら戦闘をするような性格の持ち主じゃなかっただろう。しかしこれまで幾度も戦ってきたのは、再不斬がそれを望んだから。

「......最後にお前らとやれて良かった」

使えない両腕の代わりに、再不斬は口布を歯で噛みちぎった。その露になった顔で再不斬は小さく笑う。

「そう......小僧。結局はお前の言う通りだった。忍も人間だ......感情のない道具にはなれないのかもしれないな......。オレの負けだ」

そこに、今まで何度も殺人を犯してきた顔は、ない。ナルトを見る再不斬の目は柔らかいものだった。しかし、いつしかその目はガトー一派のほうへ向き、表情は段々と引き締まっていった。
再不斬の顔が、また"霧隠れの鬼人"のものへと変化していく。

「小僧。クナイを貸せ」

そう言われ、僅かにナルトは戸惑う。しかしすぐに「うん」と返し、ホルスターから抜き取ったクナイを再不斬へと投げた。

クナイはゆっくりと宙を舞う。その間に再不斬はもう一度だけ白を思い出した。
その笑顔は、確かに、再不斬が最も好きなものだった。

「(白)」

白を想い、再不斬の顔が柔らかくなったのは、その一瞬のみ。

途端に鬼の形相となった再不斬を目の当たりにしたガトーは、思わず身を引いて男たちの背後へと回った。

「もういい!お前ら、アイツらをやってしまえ!」

ガトーがそう命令する間にも再不斬は刻々と大群へと迫っていく。指令にやる気を見せた男達と再不斬。
明らかに多勢に無勢、再不斬が不利、のはずだった。しかし、勝利を確信した男が手柄を貰おうと前へ出ても、それは一瞬にして避けられ、ただまっすぐ奥へ奥へと進んでいく再不斬に男たちは戸惑いを見せ始めた。近くの者たちはたった一本のクナイで斬られていく。横に避け、地を舞い、宙へと飛び───

再不斬は確実に奥へと、ガトーの元へと近づいていった。
一瞬の隙をつかれ背に槍を刺されようとも、それさえ気にせず進んでいく"鬼"。

最奥と進んだガトーだが、すぐに再不斬に追いつかれ、腹を刺されていた。


カナは、どくりと跳ねた心臓を感じた。


「ぐぁあっ!!」

吐血したガトー。それを見てもなお引かない再不斬。だがその背に大量の槍が一気に刺さり、再不斬はよろめいた。

「そ、そんなに、仲間の元へ行きたいなら、お前一人で、行けェェえ!」

慌てふためいているガトーは叫ぶ。だがそれでも、再不斬の瞳の強さは変わらない。

「生憎だが...オレは白と同じところへ行くつもりはねェ...」
「な、なんだとッ、つ、強がりよって!!」

再不斬の言葉を"死ぬ気はない"というように理解したガトーはそう喚いた、が、実際の意図は違う。

「てめェはオレと一緒に、地獄へ行くんだよ!!」

その再不斬のあまりの迫力に、ガトーの顔は恐怖に引きつっていく。再不斬の顔に、声に、この世への未練など微塵も見当たらない。あるのはガトーへの滲み出る怒りのみ。再不斬はその口に強くクナイを噛みながら、笑う。

「大したことはねェ。霧隠れの鬼人も、死んで地獄なら本物の鬼になれるぜェ!」

護衛のために用意したはずの軍勢ももう、再不斬を恐れて動けない。ただ再不斬の瞳がだけが厭に光っていた。
そして卑怯な小悪党は、命の終焉を悟った。

「楽しみにしとけ。小鬼ちゃんかどうか、地獄でたっぷりと確かめさせてやるよ!!」


どくりと跳ねた心は、躊躇に躊躇を重ねていた。
戸惑いは大きく、焦燥が焦げ付く。どの想いも嘘ではなく、どの想いにも嘘はつけない。


動きだした再不斬に、ガトーはなす術もなく、ただ斬られていった。そして最後に、再不斬は一際大きく振りかぶり、とどめの一撃を刺した。ガトーの体が宙を舞う。抵抗も何も出来ないガトーは、橋の向こうへ、姿を消していく。


静寂の中、風が吹く。
鼓動はなおも早いまま、未だ、落ち着きを払える余裕はなかった。

沈黙。

再不斬は全ての仕事を終えたというように、先ほどまでの気迫を消し去っていた。
背に何本もの槍が刺さったまま、ゆっくりと歩を進める再不斬。白に、ゆっくりと近づいていく。軍勢はそれを止められず、むしろ恐れをなして道さえ作る。しかし、再不斬の足はいつしかもつれ、白へと届く前に、静かに地へと倒れていった。



ドクン__。

何かが鳴り響いた。光もない漆黒の世界が視界に広がり、瞬間的に"死"を思う。だが死んだというのならこの意識はなんなのだろう。次に思ったのは、幼なじみだった。

幼なじみ。ずっと共に歩んできた、かけがえのない存在。
意識を失う前に見た、彼女の涙を思い出す。

「(不安で......ゆっくり死ぬこともできねえ......)」

意識の中で微かに笑った。自分は確かに想っている。あの少女とずっと一緒に生きていたいと。ずっとそのそばにいたいと。
そう簡単に死んでたまるか。オレはアイツと約束したんだ。

そう思ったのは、確かにサスケの意識だった。




「.....どうした、カナ」

青ざめた顔で俯いているカナに、真っ先に気付いたのはカカシだった。その声に反応し、余韻が醒めずぼうっと再不斬を見ていたナルトも、カナに視線を向ける。
そうっと顔を上げたカナは、両腕で体を抱きしめたまま、力無く首を振った。

「いいえ、なんでも......」


「カナー!ナルトォー!!」

その時、重かった空気をつんざくような声があがった。カカシも、もちろん、カナもナルトも振り向き、そしてその表情は途端に驚愕に染まった。

「サスケくんは無事よ!ちゃんと生きてるわー!!」


死んだと思っていた、目の前で目を閉じたはずの、仲間の姿。
サスケは若干気恥ずかしそうに顔を背けながら、左手を上げている。何も変わらない、いつも通りのサスケの姿。


「サスケ......!?」
「ど、どうして......なんで、」

呆然と呟いたカナは、そこでハッと気付く。白があの時口にした、カナとナルトには意味の伝わらなかった言葉。
安心して下さいと、白は言わなかったか。

「(......白さん)」

心中でぼやいたカナは、そのままストンと腰が抜けて尻餅をついていた。青ざめていた顔がゆっくり元の色に戻っていく。カカシの手が柔らかくカナの頭を撫でた。

「よかったな、カナ......ナルトも」
「っ、オウ!」
「はい......はい......!!」

涙を堪えたような二人の声。
仮死状態だったためにまだ力が戻っていないのだろう、サクラに支えられたままだが、サスケは遠目で二人を見てか、呆れたように笑っている。サクラも泣き笑い状態、後ろのタズナも鼻をすするばかり。
カカシも穏やかに微笑んだ。

だがそんな空気に水をさす輩の声が、誰もの耳を突き刺した。

「オイオイオイオイ!お前ら安心しすぎ!」
「クソ忍者どもめ!せっかくの金ヅル殺してくれちゃってよォ!!」
「こうなったら町を襲って、金目のモンぜーんぶ頂いていくしかねェなあ!!」

再不斬の鬼の気配に呑まれていた武装集団、だが、その再不斬が倒れたのだ。今はもう再不斬も動けないとわかった途端、男たちの顔に勝ち誇った笑みが浮かぶ。
実際、カカシ含む第七班は今、そう戦えるチャクラも残っていない。見るからに満身創痍なのである。

「マズいな......」
「カカシセンセーってば、どかーっとやっつけちゃう術かなんかないの!?」
「無理だ。雷切に口寄せに写輪眼、チャクラを使い過ぎた」
「じゃあ、体術でなんとかとか」
「数を見ろ。体力だってそう残されちゃないだろ」

その間にも、「行くぞォーー!!」と先頭の男が声高々に拳を振り上げ、それを合図として群衆が唸り声と共に迫ってくる。それでも相手は一般人、喚き叫んでまで焦る相手ではないのだが、すぐに追い返せる手だてが今は見つからない。


ザクッ___


その時 木ノ葉側と軍勢の間に突き刺さったのが、一本の矢だった。

男達は驚いて身を引き、そして全員の視線は一点へと集中した。
矢の放たれた方向。そこにいたのは、ガトー一派の集団よりも一際大人数の集団。


「それ以上この島に近づく輩は、全島民の勢力を持って!生かしちゃァおかねェ!!」


最初に叫んだ男の後に、島民の怒声が響き渡る。その迫力にガトー一派は思わず後退する。目を見開いたナルトとカナが、島民たちの中に見慣れた小さな少年の姿を確認した。

「イナリくん!」
「イナリ!!」
「へへっ。ヒーローってのは、遅れて登場するもんだからね!」

ナルトが言っていたものと同じ言葉を言ってみせるイナリ。ナルトもまた、イナリにニッと笑って返してみせた。
島民達から戦闘意欲を貰ったナルトはもう躊躇しない。その手で慣れた印を組み、ぼぅんと煙が上がったあとには五人になったナルトがいた。

「影分身の術!」

そのかけ声をきいたカカシもまた、同じように印を組む。どうやら影分身程度でもハッタリにはなるらしい。

「影分身の術、カカシバージョン!」

その数はナルトの比ではない。橋を遮る程までに分身したカカシの姿を見て、軍勢は一気に身を引いた。それだけ力を分散しているため、実際一人一人の戦闘力はさほどもないのだが、そんな事実を男たちが知る由もない。もう今にも逃げ出しそうとしている軍勢に、カカシはとどめの一言を言っておいた。

「さーて。やるかァ?」
「やっ、やりませぇーん!!」

その眼光に軍勢は一目散である。我先にと走り出した群衆は、来る時に使用した船へと転がり込み、すぐさま出航して遠ざかっていく。中には焦り過ぎて海に落ちてしまった者もいるが───とにかく、これで全てが終わった。

島民たちは誰からともなくお互いの顔を合わせ、両手を天高く上げていた。


「やったァーー!!」


歓声が上がる。今まで島民たちの胸の中にかかっていた靄は消えていった。島にまた平和が訪れると誰もが喜んだ。

ボンっと影分身を散らしたナルトとカカシ。ナルトはニシシといつもの笑みで彼らを見て、カカシも安堵の溜め息をついている。カナはようやく立ち上がり、滲み出る喜びを口元に滲ませた。


だが不意に振り向いた時、見えた影に、カナはこくりと唾を呑み込んでいた。


再不斬。


ゆっくりとそちらへカナの足が向かう。かけるべき言葉も見当たらないまま、しかし、そうせずにはいられなかった。
歓声がどんどん遠くなっていく。見えない隔たりがあるかのように。

その傍に行き着いた時、カナはそっとしゃがみこんでいた。

「再不斬......さん」
「......風羽の、小娘か......」

再不斬の声は擦れるほどにもう弱かった。鋭かった眼光ももう朧げだ。もうあまり光を掴めてもいないのだろう、再不斬の反応は遅い。
カナは言いようもないやるせなさを感じていた。
白の最期の願いは、紛れもなく、再不斬が生きていくことだっただろうのに。

「フッ......」
「......え?」
「初めて、お前を見た時......甘っちょろい雰囲気とかが、お前は白に似ていると、そう思っていた......だが、今となると、全然、似ていない気がする......なんでだろうな......」

なんとか再不斬の声を拾ったカナは、初めはその意味を掴みとれないでいた。
だが、徐々に感じ始めたのは、白の想いを聞いていた時にカナの心にぽっかりと空いた穴、それを埋めていくような、そんな感情だった。

カナの眉が情けなく歪んだ。目頭が熱くなるのを感じ、両手を目に宛てがった。

「当たり前じゃ、ないですか......!」

漏らした声は震えていた。

「再不斬さんと......あなたと、ずっと一緒にいたのは......!これからも一緒にいれるはずだったのはっ......白さん、だけなんですから......!!」


報われていた。白は、知らなかっただけだった。二人は互いに必要としていた。他の誰かでは駄目だった。この二人でなければ、駄目だったのだ。
白は、報われていたのだ。


小さな嗚咽が聴こえたのかもしれない。再不斬が、呆れたような笑い声を零していた。

「......また泣いてるのか、カナ」

その時、ざっとカナの背後に歩きよった人影。振り返ったカナの目に担当上忍が映る。カナが慌てて応える前に、その手がカナの頭を一撫でし、同じように再不斬の脇にしゃがんだ。

「カカシか......終わった、みたいだな......」
「......ああ」

かけられた声にカカシは応じた。

「カカシ......頼みが、ある」
「......なんだ」
「アイツの顔が、見てえんだ...」

その言葉に、カカシはいつになく顔を歪めて、それから静かにああ、と返した。
黙ってしまったカナはそっと立ち上がって身を引く。カカシは再不斬の体を抱き上げ、静かに白に近づいていった。

するとその時、再不斬の頬に冷たいものが当たっていた。
それは、雪。季節外れの、雪だった。


「(白よ......泣いているのか......?)」


雪のように真っ白だった少年、白。
白の傍に横たえられた再不斬は、朧げな目で、そうっと白の顔を覗き込む。ぽとりと白の目元に落ちた雪が涙のように流れていった。再不斬の目にも、涙が滲む。

「ずっと、傍にいたんだ......せめて、最期もお前のそばで......」

その頬にゆっくりと雫が伝う。

「できるなら......お前と、同じところに...行きてぇなぁ......オレも...」

感情を捨てきれなかった鬼と、道具。その二人の静寂の中の最期を見届けながら、カカシは思った。

行けるさ、再不斬。二人、一緒に。


 
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