緑が青々と覆い繁るこの島に生息しているのはポケモンだけである。
いつから人がその島に住まなくなったのかは分からない。
もしかしたら、最初から人は住んでいなかったかもしれない。
ただ、無人島について判明している事がある。
その島に関して「ある噂」あるいは「言い伝え」が残っているのだ。
その噂を知る者は口々に声を揃えてこう喋る。
あの島に入ってはいけない。あの島は呪われている。とー…
「着いたぜ。無人島ーっ!」
ひゃっほーいと叫んで、ゴールドは1番に船から下りていく。
「ちょっとゴールド!危ないでしょ。飛び降りないの!」
ゴールドを追いかけてクリスタルが2番目。
「あん?細かい事は気にすんなって!」
「細かくないわよ!もっと周囲に気を配るべきだって言ってるの!」
「それが細けーっつーんだよ!」
飽きもせずに喧嘩を繰り返すゴールドとクリスタルを呆れて見ながらシルバーが下りる。
「………」
青ざめた顔色のルビーがサファイアに支えられながら船から下りて、後にエメラルドが若干心配そうに二人の後ろ姿を見つめながら6番目に下りる。
「無人島っていってもポケモンは居るんですよね。どんなポケモンが居るのか楽しみですねー」
「イエローはどっちかっていうと、森で寝るのが楽しみなんじゃないか?」
「そんな事ありません!…そりゃあ、ちょっとは思いましたけど…」
「ははは!正直だな!」
レッドとイエローが仲良く下りていき、続いてパール、ダイヤモンド、プラチナが船から下りようと階段に足を下ろす。
「オイラ、無人島に入るのなんて初めてだよ〜。楽しみだなぁー」
「オレも初めてだ!ダイヤ、何がネタに使えるか分からないから、しっかりと周りを見ておこうな!」
「お嬢様/お嬢さんは無人島初めて/か?」
ダイヤモンドとパールが振り返ってプラチナを見上げる。
「私も無人島は初めてです」
「そっかぁ〜。ならオイラ達と一緒だねー」
「そうだなー」
ダイヤモンドとパールの言葉にプラチナは目を瞬かせて繰り返した。
「一緒ですか…?」
「そうそう。一緒!」
一緒。ただ、それだけなのに。
たった2文字のその言葉が、こんなにも胸をあたたかくさせるのはどうしてでしょうか?
「…?お嬢さん、なんで笑ってるの?」
「笑っていません」
「笑ってたよ〜?」
「笑っていま…っ!?」
「お嬢さん!/お嬢様!」
プラチナが足を踏み外し、頭から落ちそうになった所を先に下りていたパールとダイヤモンドが受け止める。
「痛た…。お嬢さん無事?」
「怪我はない?お嬢様〜」
「二人が守って下さったので無事です」
しっかりとプラチナを抱き止めて、パールとダイヤモンドはプラチナに安否の確認をする。
言葉通り怪我一つないプラチナは、パールとダイヤモンドに守って下さってありがとうございます、と頭を下げた。
「よっ!流石、お嬢様を守るナイトなだけはあるなっ!」
口笛を吹いて冷やかすゴールドにパールが苦笑を返した時に、ブルーの凛とした声と手を叩く音が無人島に響いた。
「皆、静かに!遊びたくて浮足立つのも分かるけど、先ずは衣食住を確保するのが先よ!遊んだりするのはそれから!」
颯爽とブルーが船から地面に降り立つと、最後にグリーンが船から下りて、図鑑所有者全員が無人島に集まった。
「衣食住って…洋服と食べ物はもう揃ってるじゃないですか」
パールが首を傾げるとブルーは口角を上げて笑った。
「甘いわね、パール。今は確かに食べ物には困らないわ。でも今現在ある食料で何日も持つ保証はあるの?ないからこそ、アタシ達は食料確保をする必要があるのよ」
「…そうですね」
ブルーの正論に完膚なきまでに叩きのめされたパールは弱々しく頷いた。
「それは分かりましたけど…。洋服はどうするんですか?ブルーさんの理屈だと洋服だって同じ事が言えますよ。いくら替えが何着かあっても不測の事態だって考えられますし…」
クリスタルがブルーに問うとブルーは人差し指を船酔いから少しずつ回復してきているルビーに向けた。
「そこは大丈夫よ。ルビーが何とかしてくれるわ」
ルビーに衣類全般を放り投げるかの様に一任するブルーにクリスタルは引き攣った笑顔を浮かべた。
「という訳で、食料と寝所の確保が必要なのは理解出来たわよね?」
ブルーが全員の顔を見て確認すると皆、一同に頷いた。
「そこで食料と寝所を確保するのにチームを二つに分けて探す事にするわ。先ず、アタシ達カントーとシルバー達ジョウトは寝所の確保、ホウエンとシンオウは食料確保」
ブルーが指を二本立てて説明する。
そして人差し指を太陽に向けて空を見上げると、下を指差してブルーは説明を続けた。
「皆、日が沈む前に再びここに戻って来る事!分かったら、それぞれ確保しに向かっていいわ」
行くわよ、グリーン達!とブルーがグリーンの腕を引っ張って森の中へと入っていく。
ブルーの後をレッドとイエローがゆっくりと追っていく。
「おっしゃ!行くぜ!シルバー、クリス!」
拳を掲げて、ゴールドが先陣を切って森の中へと進んでいく。
「ゴールド、待ちなさい!先走らないの!」
「……」
ゴールドを追いかけて、クリスタルとシルバーが森の中へと入っていくのを残ったホウエンメンバーとシンオウメンバーが見送った。