そこは荒野の様な場所だった。
枯れ果てた草は植物本来の生気が失われ、頭を垂れるように項垂れている。
どしりと存在感を表していた岩はひびが入り、苔が生えてきている。
明かりといえばきらきらと己の存在を主張する僅かばかりの星や月の光だけであった。
その僅かばかりの光が地上を照らすのだが、影ばかりが濃くなり、この世界に陰影を落とす。
生き物の生活音はなく、静寂に満ちた荒れ地にぬらりと動く影があった。
その影はゆらり、ゆらりと揺れてからぴたりとその場に佇んだ。
そして。
「…っ、ククッ…、ハッ、アハハ、アハハハハハハハハッ!!!」
突然、小さな笑い声から愉悦の混じった声で狂った様に嗤い出した。
その声は幼い子供の様に甲高く、時に男の様に野太い。
かと思えば女の様に柔らかく、艶めかしい。
そして気付けば、老人の様にしゃがれた声で嗤っている。
ギョロリと爛々と光る眼が辺りを見回し、空を眺めた。
ー…嗚呼…そろそろだ。
随分長い間待った。
やっと…始まる。
語られなかったその先の。
新たに生まれたモノガタリの。
その「続き」が語られる。
ザワザワと周りが騒ぐ。
歓喜の声で。
悲観の声で。
愉悦の声で。
さぁ…モノガタリを始めましょう?
語り手の準備は整いました。
聞き手の皆さん、準備は宜しいでしょうか?
目を閉じて、耳を澄まして良くお聞きご覧下さい。
ー…昔々、あるところに…ー