目の前で顔を真っ赤に染めて座る彼女の何て可愛らしい事か。



サファイアの告白から五年が経過した現在、ルビーとサファイアは多少幼さは残るが、立派な青少年へと成長していた。
この五年の間、様々な事があった。
エメラルドと出会い、エメラルドと他の図鑑所有者と共にバトルフロンティアにて起こった事件を解決したり、図鑑所有者と連絡を取って集まり色々な行事を行ったりと、忙しいが楽しくもある日々を過ごしていた。
そんなゆっくりと重ねられていく日々の時間の中で、人は少しずつ歩んで成長していく。
それは、サファイアやルビーも例外ではなく。
五年の月日で二人は「恋人」という関係へと発展した。


さて、この二人。
恋人になったのは良いものの、未だ清い交際を続けている。
異性との不純交際が良い訳ではない。
だが、仮にも彼氏、彼女の間柄の男女が一緒に居て何も起こらないというのも問題だろう。
せめて。
せめて手を繋ぐだの、口づけの一つでもするだのしても良いと思われる。



「ねぇ、サファイア」

「ん?なんね」

ルビーとサファイアは彼等の秘密基地に居て、それぞれ好きな事をしていた。
ルビーは針を裁縫箱に片付けると、エネコ型のテレビでポケモンの格闘番組を見ているサファイアに呼び掛けた。
サファイアはルビーに顔を向けずに、カイリキーとオコリザルのプロレスを凝視して返事をする。

「キス、して良い?」

「んなっ…!?」

驚いて振り向くサファイアに詰め寄って、ルビーはサファイアの手を絡めとる様に握った。

「る、ルルッるびー?」

「サファイア」

冷汗を流しながら、左右に目を泳がせて頬を朱に染めて逃げ道を探すサファイアを彼女の名前を呼んで視線一つで黙らせると、ルビーはずいっとサファイアとの距離を縮める。

近かーッ!

ばくばくと心臓を激しく鼓動させ、心中で叫ぶサファイアの心の声はルビーに聞こえる筈もなく。
違いの吐息を感じる程までの距離でルビーはクスリと笑った。
柔らかな微笑みに思わずドキリとして、先程とは別の意味で心臓が高鳴る。

「サファイア、君が好きだ」

「…っ!」

「好きなんだ。君の事が好き過ぎてどうしようもなくなる」

「…ルビ…っ!」

「ねぇ、君はどうなの?サファイアは僕の事好き?」

至近距離で自分の事が好きか聞いてくるルビーをサファイアは自分の口元に手を当てて涙目で見上げた。
顔を真っ赤にさせて涙目で見上げてくるサファイアを見て、ルビーの背筋に何かぞわりとしたものが駆け上がる。

…やばい。
もう一度、キスしたい。

自分の欲求に素直に従おうとルビーがサファイアの頤に指をかけようとした瞬間、サファイアがルビーの指を掴んだ。
ぎゅうっとルビーの指を握ってサファイアが口を開く。

「〜っ…だいすき」

そう言うとサファイアご自慢の馬鹿力でルビーを突き飛ばして、サファイアは秘密基地から逃げ出した。



「〜ッ、痛た…」

したたか後頭部を壁に打ち付けたルビーは帽子の上から打ってしまった所を抑えて、起き上がった。

「berry cute…」

まさかサファイアが大好きと言ってくれるなんて。
逃げられた為にセカンドキスは出来なかったが、逆に逃げられて良かったのかもしれない。

「…反則だよ」

潤んだ瞳で見つめて、顔を真っ赤にさせて、だいすきと言い終わる頃には羞恥に堪えられなくてその藍い瞳を閉じるなんて。
まるで次のキスを待っているかの様なそんな表情。
あんな顔をするなんて反則だ。
心臓に悪い。


先程のサファイアと同じくらいに頬を朱に染めたルビーは、自分のポーカーフェースが崩れているのをサファイアに見られなくて良かったと安堵の溜息を吐いた。



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ルサでファーストキス的な。
私にしては甘く書けた……筈。
砂を吐く程の甘い小説が書ける人を尊敬してます。


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