お帰りなさいとあいつがいつも言うからー…





珍しく朝早く起きてきたゴールドに、ゴールドの母親は目を丸くした。

「どうしたの?貴方が自分で起きてくるなんて珍しい…」

「あー、まああれだ。オレ今から出掛けて来るわ」

余計な詮索はごめんだと言わんばかりにゴールドは首を振るとキューを持って家を出た。




アサギシティの港ではクリスタルが待合室で乗船する為に時間を潰していた。

「思ったより早く着いちゃったわ…」

腕時計を見て時間を確認するとクリスタルは息をついた。
久しぶりに遠い地方でポケモンを捕獲しに旅に出るのだ。
最近はデスクワークが多かった為に肩が凝っていたから解消運動にもなるだろう。
クリスタルは図鑑を開き、これから向かう場所の情報を確認した。
イッシュと記入されたその地方のマップを眺めてクリスタルは指でマップをなぞった。

「確かエメラルド君と落ち合うのはカノコタウンのアララギ博士の研究所よね」

ホウエンから出発するエメラルドとは現地集合になっている。
カノコタウンで研究に勤しんでいるアララギ博士からある程度の情報を貰い、捕獲の旅に出る手筈になっているのだ。

ブオーッ。

船の汽笛がなった。
乗船出来る様になった合図だ。
クリスタルは腰を浮かせて立ち上がろうとした。

「クリス!」

バンと大きな音を立ててゴールドが待合室の扉を開けた。

「なっ…ゴールド!?」

汗をかいて立ち尽くすゴールドに駆け寄るクリスタルを引っ張って外に出すとゴールドは手に持っていた大量の名産品をクリスタルに手渡した。

「いきなりどうしたのよ?ていうかこれ、何?」

ゴールドから手渡されたフエン煎餅、いかり饅頭、タマムシプリンなどの各地方の名産品が大量に入った紙袋を抱えてクリスタルは首を傾げた。

「オレ様オススメの名産品詰め合わせセット!お前これから旅に出るんだろ?だったら、これ食って力つけとけ!」

ゴールドは親指を立てて笑った。
白い歯を見せて笑うゴールドとは反対にクリスタルは俯く。

「…馬鹿じゃないの?」

「あん?あんだと?」

「こんな事の為にわざわざこの食べ物かき集めて来たの?」

「そーだよ。悪ぃか?」

「…本当馬鹿ね」

きっと苦労しただろうに。
こんなにも大量の名産品をかき集めるのなんてこんな馬鹿しかやらない。

悪態をつきながら嬉しそうに笑うクリスタルを見たゴールドは怒る気力も失せてクリスタルの肩を軽く押した。

「いつ帰ってくんのか知らねーけどまぁ、頑張れや。いってこい」

拳を突き出すゴールドに合わせてクリスタルも拳を突き出す。
こつりと拳が重なるとクリスタルは明るい笑顔を浮かべた。

「いってきます!」

元気良く走っていくクリスタルを見送ってゴールドは微笑んだ。




放浪癖のあるオレをいつもあいつが迎えてくれるからたまにはオレから。






(いってきます!)


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初ゴークリ。
ゴールドとクリスは最早夫婦だと思うんだ。


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