「ー…4月ね。今年は面白い事はあるのかしら…」
一人の少女がうっとりとした表情で校舎を見つめると、口角を上げて校舎の中へと入って行った。
桜の花びらがひらひらと風にのっては舞い降ちていく。
春の証とも言えるその花がホウエン学園の体育館に何枚か入っていく。
ホウエン学園では入学式が行われていた。
「ー…入学おめでとう!」
学園長のオーキドが新入生に歓迎の意を示して、入学式を締め括る。
騒がしい教室の中でサファイアはきょろきょろと辺りを見回した。
右も左も人、人、人。
当たり前の事だが、自分が志望した高校に入ったのだと実感する。
ー…帰って来たのだ。
これでやっと、あの時の約束を果たす事が出来るだろう。
サファイアは瞳を閉じて口元を緩めた。
ガラリ。
「皆、おはよう。私は君達の担任になるナギだ。これから一年間よろしく」
教室のドアを開けて、颯爽と入って来た水色の髪をした女性が、凛とした声で挨拶をした。
ナギに対してクラス全員が元気良く返事をする。
それに笑顔で返してナギは出席をとり始めた。
「それにしても担任の先生、いい人そうだったよな!」
SHRを終え、パールが腕を頭の上で組んで笑った。
「綺麗な人だったしね〜」
「優しそうな先生だったったい!」
パールの言葉にサファイアとダイヤモンドが笑って返す。
プラチナはその光景を楽しそうに見守っている。
「何より、皆で同じクラスになれたのが嬉しいですね」
感慨深く瞳を閉じるプラチナにダイヤモンドとパールは同調するように頷いた。
「確かに。これで丸々10年になるのかぁ…」
「これって凄い事だよね〜。オイラ達4人で同じクラスになったり、二人組で別れる事はあっても、全員で離れ離れになる事は無かったもんね〜」
「あたしがシンオウに引越して来てからやもんね」
きゃっきゃっと思い出話に花を咲かせながら、校舎を出る。
門を出て突き当たりを右に曲がるとパールとダイヤモンド、プラチナはサファイアに向き直った。
「それでは、サファイア。私達はこれで」
「うんっ!また明日」
「俺達は寮に帰るけど、気をつけてな」
「食べ物を奢ってくれるからって、知らない人についていっちゃ駄目だよ〜」
「お前じゃねーからねぇよ!」
「あははっ!気をつけて帰るち。大丈夫とよ!」
漫才を始めたパールとダイヤモンドに笑いかけると、サファイアは身を翻して走り去った。