「何でミツルはあんなのに付き合ってられんだ?」

エメラルドから言われた言葉にミツルはきょとん、とした。
首を傾げる黄緑色の髪を持つ少年に、金髪の髪をワックスで三日月の様に固めた少年が、長い眉毛を潜めて視線を窓の向こうへと移す。
つられてミツルも窓の向こうへと視線を移すと、そこには特に何も変わらないいつもの景色があった。

「……?あんなのって…?」

エメラルドの言っている意味が分からずにふわりとした髪を揺らして首を傾げると、エメラルドはじれったそうに声を荒げた。

「〜だからっ、あいつらだよっ!ルビーとサファイア!!」

「ルビーくんとサファイアちゃん?」

ミツルにとっても馴染みの二人の名前を出され、ミツルは目を丸くした。
エメラルドはもう一度視線を外(正確には外に居るルビーとサファイア)に向けた。

「いつでもどこでもいちゃいちゃと…っ。オレはあいつらに付き合ってらんないね!」

鼻息荒く、外の景色から顔を背けるとエメラルドは苦虫を10匹以上噛み潰したかの様な顔をした。
そんなエメラルドに苦笑して、ミツルは外で口喧嘩をしているルビーとサファイアを見つめた。
喧嘩をしているのに何処か楽しそうなルビーとサファイアを優しく微笑んで見守るミツルに、エメラルドは訝し気な視線を向けた。
その視線に応えたつもりなのか。
唐突にミツルは口を開いた。

「ボクにとって、ルビーくんは大事な親友なんだ。誰もがボクにポケモンを持たせるのは危険だと、そう諭した。けど、ルビーくんは違った。ルビーくんはボクがポケモンを捕まえるのを手伝ってくれたんだ。今の手持ちのカクレオンもロゼリアもルビーくんが居てくれたから友達になれたんだ」

「ミツル…」

「サファイアちゃんも大切。初対面なのに凄く優しく接してくれた。前のボクを知ってる人は病気が治っても、どこかよそよそしかったから…。あの明るい笑顔を見るとほっとするよね」

どこまでも優しく微笑むミツルにエメラルドは沈黙した。
ミツルがルビーとサファイアを大切に思う様に、エメラルドもまたルビーとサファイアを大切に思っているからだ。
ミツルと違ってエメラルドはその想いの丈を、ミツルの様に素直に口に出す事は出来ていないが。

「ミツルーッエメラルドッ!外でポケモンバトルばしたか!早う来ぃ!」

ガラリとミツルとエメラルドが見ていた窓から顔を出して、サファイアが笑った。

「ちょっと!ボクはダブルバトルなんて絶対にやらないからね」

横からルビーがサファイアに文句をつけてから、ミツルとエメラルドに笑顔を向ける。

「それよりもミツルくん、エメラルド。二人のポケモンの毛繕いさせてよ。絶対にbeautifulにしてみせるよ?」

「なんね!バトルが先ったい!」

「いーや、毛繕いが先だね!」

「バトル!」

「毛繕い!」

「いちゃいちゃするなーッ!!」

言い合いを始めたルビーとサファイアに、我慢の限界を迎えたエメラルドが怒声を浴びせる。

「バトルも毛繕いもするから、二人共ちょっと待っててよ。エメラルドくん、行こう?」

未だに口喧嘩をするルビーとサファイアを宥めて、ミツルはエメラルドに声を掛けた。



「ー…さっきの話の続きだけど、結論で言うと、ボクはルビーくんもサファイアちゃんも大好きなんだ。だから二人が仲良くしているのを見るのは苦じゃないし、嬉しいんだ。大切な人達が幸せそうに笑っているのを見るとこっちだって、嬉しいんだよ」

パタリとドアを閉めて、エメラルドの最初の問いに答えたミツルは玄関へと向かった。
ミツルに続いてエメラルドも玄関へと向かう。

「…あっそ」

両腕を頭の上で組んで、てこてこと歩くエメラルドの隣に並ぶと、ミツルは悪戯っ子がする様に、にやりと笑った。

「勿論、ボクはエメラルドくんも大好きだよ?皆で遊んだり、ずっと一緒にいられたら良いな」

「……先、行くぞ?」

「あ、待ってよ。エメラルドくん!」

先を歩くエメラルドの背を追いかけてミツルは走り出した。
エメラルドに悟られない様にこっそりと笑う。

ー…エメラルドくんも素直じゃないなぁ…。

目の前の少年の赤く染まった耳を眺めながら、ミツルは他の意地っ張り(ルビーとサファイア)を思い出した。



(二人共遅かよっ)
(そんなに待ってないじゃないか)
(あたしは、早ぅバトルばしたい)
(これだから野蛮人のバトル好きは)
(なんね!バトルが好きで何が悪かやの!)
(別に悪いなんて言ってないさ)
(じゃあ、何が言いたいん!?)
(そんな事も分かんないの?)
(いちゃつくなーッ!!!)
(あはは)


**************
エメラルドって直球で好きって言われると、ルサに対するいちゃつくなーッと同じくらいの音量で煩いとか言って逃げるか、スルーして逃げそうだなぁっていう妄想と、ミツルは病弱だった為に友達が出来ずに、周りに気を使われて生きてきたのかなっていう妄想から生まれた作品です。
ちなみに、エメラルドが逃げるのは照れ隠しです。

ミツルを含めてホウエンだと思うので、書きたい事が書けて良かった^∪^

一応、全部+表記で。
ルビー+サファイア+エメラルド+ミツルですよ。
ルサとミツエメではないですよー。


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