カントー、ジョウト、ホウエン、シンオウ地方はそれぞれ距離がある。
カントーとジョウトは距離が近い方であるが、シンオウとホウエンはかなりの距離の差がある。
そんな距離のある各地方の図鑑所有者が集まるとなると、当然一泊は覚悟しなければならない。
だが13人もの人数が泊まれる家があるはずもないので(プラチナ嬢の家を除いて)毎回お泊り会を実施する時は、グリーンが管理するトキワジムで泊まることになっている。


ルビーとサファイアは他の図鑑所有者とお別れをすると、サファイアが口笛を吹いて呼び出したトロピウスー…とろろに乗って家路へと向かった。

「楽しかったとね!お泊り会」

「そうだね。皆と会うのも久しぶりだったし」

昨日の事を思い出したのか、きゃいきゃいとはしゃぐサファイアに彼女が落ちない様に手を握って、ルビーは笑いかけた。

「でも、気になるこつがあるったい」

「え、何が?」

「なして、昨日ゴールドさんはあげにボロボロやったんやろうか…」

サファイアはブルー達と買い物に出掛けてから、帰ってきた時に見たボロボロのゴールドを思い出しながら言った。
確か、達成感に溢れた清々しい表情をしたシルバーさんと妙に爽やかな顔をしたルビーが満面の笑みで「何でもない」と言っていたが、その後ろでは疲れきった表情をしたエメラルドと何故か涙目のパールが居た気がするのだ。

「さぁ?何でだろうね?」

飄々と笑って知らないと返すルビーをしばらく見つめたサファイアは、諦めたのか大きな溜息を吐いた。


そして翌日。

「つまり、一昨日あった事が気になって仕方がないって事?」

タマムシシティのデパートに新しく出来た喫茶店で紅茶を一口、口にしたブルーは目の前で落ち着かなさそうに座って、今までの事を説明したサファイアにそう確認をした。
サファイアは頷いて肯定の意を示す。

「そうですったい。クリスさんに聞いても、苦笑してはぐらかすだけやし、イエローさんに聞いてみても笑っていつものじゃれあいですよっち言うとるし…ブルーさんなら何か知っとるんやないかと思って…」

ブルーは店員がお待たせ致しましたと言って持って来たオレンの実を中心とした季節のきのみを沢山使った華やかなケーキをフォークで優雅に口に運ぶと、ゆっくりと咀嚼した。

「サファイアも食べたら?美味しいわよ?」

にこり、と笑ってブルーが促すと、サファイアは自分が頼んだタルトを口に運んだ。
もぐもぐと咀嚼してごっくんとタルトを飲み込むサファイアの姿を見て、ブルーはこの前テレビで見た遠い地方のポケモンを思い出していた。

「愛されてるのよ」

「へ?」

突然、ブルーが口に出した言葉に、サファイアが素っ頓狂な声を上げる。

「だから、サファイアはルビーに愛されてるって事なのよ」

「なっ…」

愛されてるという単語に過剰に反応するサファイアをからかうように、ニヤニヤと笑ってブルーは続けた。

「あんなに想われてるなんて羨ましいわぁ。アタシなんか、そういった事少しもないんだもの。あいつもちょっとはルビーを見習えっての」

頬杖をついて唇を尖らすブルー。
そんな彼女の変化に気付く余裕が無いサファイアは顔を真っ赤にさせて、ごちそうさまですったい!と言ってお金をテーブルに叩き付けるように置くと、逃げるように喫茶店を出て行った。
サファイアが見えなくなるまで、サファイアを見送ったブルーは紅茶を飲んで苦笑した。

「…まぁ、ルビーの場合はやり過ぎな気もするけど…面白いから別に良いわよね」


**************
help me!の後日談別バージョン。

一度ボツにしたのを書き直したもの。
あの女子五人組の中であの騒動の真相全てを把握しているのはブルーとクリス。
理解していないのはプラチナで、勘違いしているのはイエロー。
サファイアは疑いを持っているが、ルビーにはぐらかされてうやむやなまま。


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