カントー最強のジム、トキワジムはその名の通りトキワシティにある。
そのトキワジムのジムリーダー、グリーンは毎日やって来る挑戦者や予約の為の電話対応、雑務等に追われ、忙しい毎日を過ごしていた。


今日もグリーンはジムに泊まりがけで残業を行っていた。
カタカタとパソコンのキーボードを打っていた指を止めると、グリーンはかけていた眼鏡を外して息を吐いた。
首を上下左右に動かし、軽いストレッチをしてグリーンは肩を揉むと、仕事を再開するべくキーボードに手を伸ばした。

「仕事熱心なのも良いけど、もう少し休んだら?身体壊すわよ?」

「ああ、すまない」

サイドテーブルに置かれた珈琲を一瞥して、グリーンは前を向いたまま礼を言った。

「……」

時間にして約一分。

グリーンは沈黙するとゆっくりと後ろを向いた。
そこには勝ち気な強い意志を瞳に宿した栗色の髪の少女が居た。
何をしに来たという質問は愚問だろう。
大抵、彼女は会いに来たと言いながら自分に厄介事を押し付けに来るのだ。
グリーンは溜息の代わりに別の質問を彼女に投げた。

「どうやって入って来た?」

彼女はきょとん、と目を丸くさせると微笑する。

「普通に門から入って来たわよ?」

「…鍵が掛かっている筈だが」

「あら、あーんな甘いセキュリティでこのブルーちゃんを防げると思って?」

どこから取り出したのか、ピッキング用具を両手に持って、ブルーが不敵に笑って見せるとグリーンは沈黙した。
否、馬鹿な質問をしたと自分を責めているのかもしれない。
グリーンは自分を落ち着かせる為にか、ブルーが用意した珈琲に口をつけた。
瞬間、彼は視線だけを動かしてブルーを見た。
自分が馴染んでいるものではない味に目を見張るグリーンにブルーは満足気に笑う。

「どう?悪くない味でしょ?」

「これは…」

「知り合いから貰ったのよ。あたしも飲むけど、貴方の方が頻繁に口にするんじゃないかと思ってね」

言外にグリーンの為に持って来たと言うブルーの言葉にグリーンは思案するように俯くと

「……少し、待っていろ」

と言って業務室を出て行った。


「早かったわね」

しばらくの時を置いて戻ってきたグリーンにブルーは声をかける。
何処から持って来たのかは分からないが、ブルーは椅子に腰かけて自由に過ごしていたらしい。
この部屋にあった進化に関する本から顔を上げて、彼女はグリーンを見上げた。

「それ、何?」

「見てのとおりだ」

ブルーの質問に素っ気なく答えるグリーンに、彼女はその形の整った柳眉を寄せた。

「そんな事分かってるわよ。あたしが聞きたいのはそんな下らない事じゃないわ。甘いものが嫌いなあんたが何故ソレを持っているのかって事」

ブルーが指差したその先には見た目から甘そうなケーキがあった。

「姉さんが持って来た」

「どうして?ナナミさんならグリーンの嫌いな物、持って来たりしないでしょう?」

「来客用にだ」

「あら、そう」

グリーンの答えに納得すると、ブルーはグリーンが用意したケーキを頬張った。
程良い甘さに口が綻ぶ。
目を細めてその甘さを堪能すると、彼女は珈琲を飲み干した。

「グリーン!このケーキ凄く美味しいわ!珈琲にも合うし!」

「…だろうな」

グリーンの言葉に違和感を覚えてブルーはグリーンを見た。

「どういう意味よ?」

「別に。ただ、お前が好きそうなケーキだと思っただけだ」

「甘い物は嫌いじゃないだろう?」

グリーンは微笑すると、ブルーの為のケーキを用意する為に業務室を後にした。

「…反則じゃない?アレ」

グリーンの穏やかな優しい微笑みを直視し、頬を紅潮させたブルーの呟きは誰に聞かれるでもなく、彼女しか居ないこの部屋へと消えていった。

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初グリブル。
小説として書いたのは初めてです。
私のイメージの中ではグリブルは物凄く落ち着いた大人のカップルなんですが、上手く書けませんね。
でも、書きたいことは書けたので満足です^∀^



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