ルビーは現在、森の中にある洞窟の中に居る。
そこはサファイアとルビーの秘密基地となっていて、ルビーはそこで自分のポケモン達の洋服を作っていた。


ちくちくと静かな空間の中で集中しながら針を通していると、洞窟の中に誰かが入って来る気配がした。
こんな辺鄙な所にやって来るのなんてルビーの知る中では二人しか思い浮かばないので、彼は驚くことなく作業を行っていた。
その二人の内の一人…サファイアは無言でルビーの前に座ると彼に抱き着いた。

「危ないじゃないか!急に抱き着いてきて、怪我でもしたらどうするんだ!?」

流石に驚いたルビーは抱き着いてきたサファイアを受け止めながらも、器用に裁縫用具一式を彼女からどけた。


そして数十分。


「ねぇ、サファイアー」

「サファイアさーん」

「……」

ルビーが何度呼び掛けてもサファイアはルビーの胸に顔を埋めたまま微動だにしない。
ルビーは小さく溜息を吐くと、自分の腕の中で妙に落ち着いているサファイアに話し掛けた。

「サファイア、キミ、本当にどうしたの?ボクにいきなり抱き着いてきて」

何かあったのかい?とルビーは顔を隠してしまっている彼女を覗き込もうとサファイアの頭に手を伸ばした。

「音がするけん」

今まで一言も喋らなかったサファイアの言葉にルビーは伸ばした手を止める。

え…?
今、彼女は何て言ったのだろうか?

ルビーの思考に答えるようにサファイアは言葉を続けた。

「心臓の音がするけん」

「あんたが、生きとる音」

とくとくとく。
とくとくとく。

「小鳥みたいな小さか音。ばってん、ぬくかよ」

ぎゅうと先程よりも強く抱き着くとサファイアはルビーの胸に顔を擦り寄せた。
その仕種はエネコが甘えてくる姿と似ている。
ルビーはサファイアを抱きしめると彼女の頭に顎を乗せた。

あたたかい。
とくとく、とサファイアが言っていた心臓の音がする。
とくとくとく。
とくとくとく。
規則的な音がリズムを刻んでこの場を満たす。
温かくて優しい。
どこか落ち着く、リラックスできる。
安心する音にルビーはサファイアが言っていた事を理解する。

ああ、成る程。
これは確かに。

「暖かいね」

「ルビーもぬくかよ?」

サファイアが顔を上げたので、ルビーは彼女を自分と目線が合うように引き上げた。
そして再び彼女を抱きしめると、サファイアの肩に顎を乗せた。
サファイアもルビーに倣い、彼の肩に頭を預ける。

とくとくとく。
とくとくとく。

しばらくの間、ルビーとサファイアは互いを感じていた。
お互いの息遣いや心臓の音。
自分達が今、確かに存在している証を。

「なんか、不思議な気持ちったい」

「へぇ…どんな?」

「良く分からん。やけ、安心ば感じると。もう少しこうしていたか」

「奇遇だね。ボクもだよ」

とくとくとく。

不思議な程落ち着くその音だけを求めて、ルビーとサファイアは同時に目を閉じた。



**************
ル+サ。
お互いの存在に安心する。
そんな話が書きたかった。
恋愛感情無しで、でもお互いを大切に想っている。
この話の中でのルサはそんな感じ。
なのでル+サです。
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