ホウエン地方のミナモシティは人口密度が高い街だ。
ミナモシティにはミナモデパート等があり、そこに向かう人もいればデパートから買物を終えて出てくる人もいる。
キャップを後ろに被せ、前髪が爆発している少年ー…ゴールドもその一人であった。

何故、ジョウト出身でジョウトに居るはずの彼が、それなりの距離があるこの地方に居るのかというと…答えは簡単。観光に来ているからだ。

「やっぱ、ホウエンは良いねぇ〜。ジョウトには無えもんがいっぱいだ!フエンせんべいも上手ぇし、温泉はあったけーし、何よりここ!オレ好みのギャルがスゲー居る!!」

ホウエン地方、来て良かったな!エーたろう!と彼の肩に乗った相棒ー…エイパムに笑いかけるとエーたろうはきゃきゃきゃっと声を上げた。


せっかく観光に来ているのだから他に良い穴場は無いかと辺りを見回しながら探していると、ゴールドは「お」と声を上げた。
前方に見知った少女が居る。青いバンダナに青い洋服、剥き出しの肩にスパッツとくれば、ゴールドの頭の中には一人の人物しか思い浮かばない。

「野生児ギャルじゃねーか!」

ゴールドが声をかけると野生児ギャルと呼ばれた少女ー…サファイアが振り返った。
藍色の瞳が見開いてぽっかりと口が開く。

「ゴールドさん…?なして、こげな所におるんとですか?」

「ちょっくら観光に、な。そういうおめーは何でここに居るんだ?普段はフィールドワークとやらで森の中を、裸同然の姿で駆けずり回ってるってオシャレ小僧から聞いたぜ?」

「あたしは父ちゃんのおつかいでって…ルビーはそげなこつを周りに言い触らしとっとですか!?」

ゴールドの質問に素直に答えていたサファイアは、聞き捨てならない言葉に目を吊り上げてゴールドに詰め寄る。
サファイアの怒りに染まった顔を直視したゴールドはしまった、余計な事を言った。許せ、ルビー。と心の中で懺悔した。

「ま、まぁ。落ち着けって…それより、サファイア。お前この辺で良い穴場知ってるか?」

観光に来たのだからこの地方を楽しみたいと告げると、サファイアはきょとりとしてから、だったら良い場所があるったいとゴールドの腕を掴んで引っ張った。


自分から頼んだとはいえ、サファイアに街中の穴場(サファイア曰く)に連れ回されたゴールドは野生の力を持ったサファイアの体力について行けずにちょ…タンマ。休憩、とギブアップをサファイアに告げた。
たまたま近くにあった公園に入ると設置されてあるベンチに座る。
隣に腰掛けたサファイアを横目でちらりと見ると、買ってあったサイコソーダで喉を潤す。
サファイアもそれにならっておいしいみずを飲んでいる。
健康的だなと思いながらゴールドは良い機会だからと、気になっていた疑問をサファイアにぶつけてみた。

「オシャレ小僧と野生児ギャルって、付き合ってんの?」

ゴールドがそう言うと、サファイアは口に含んでいた水を思いっ切り外に吹き出した。

「な、なんばゆうとるんですか?いきなり…」

だらだらと口から零れていく水を眺めながら、やっぱそうなんじゃねーかと言うと、サファイアは立ち上がって否定する。

「そんなんじゃなかとです!」

いや、そんなめいいっぱい否定しなくても。
力が入りすぎてペットボトルが形を変えてるぞ?

赤面して何度も違うと言うサファイアを見上げて、ゴールドはサイコソーダから口を放した。

「でも、お前は好きなんだろ?オシャレ小僧のこと」

オレに嘘は通用しねーよ?とニヤリと笑ってやるとサファイアは観念したのか、大人しくベンチに座り直すとそうですったい…と小さく肯定した。

「あたしはルビーのこつ、好いとう思っとる…やけ、ルビーはあたしのこつ、どげん風に思っとるか分からんち。あん時の…告白も、返事も全部忘れとうし…」

サファイアは赤らめていた顔を俯かせた。
俯かせる寸前に見えたサファイアの目には涙が僅かに溜まっていた。
サファイアが顔を上げるのを待っているかのように、ゴールドは黙って彼女を見つめた。
少しの沈黙の後、自分の手を握りしめてサファイアはゆっくりと顔を上げる。
そうしてやはり、顔を上げた時と同じ様にゆっくりと口を開いた。

「仕方なかね。諦めるこつ出来なか…なら、想い続けるしか他に道はなかよ。どげんにルビーが忘れとうゆうたって、あたしがルビーば好きっちゅう事実は変わらんけんね」

切なそうに眉を下げて笑う顔に一種の儚さを覚えて、ゴールドは特徴的な白い帽子を被った少年を思い出す。
こんなに一途な想いを向けられるなんておめーも隅に置けねーな、なんて頭の中でルビーをひやかしていると、風にのって小さな声がゴールドの耳に届いた。
声のする方に顔を向けずに目を向けると、そこにはサファイアの想い人であり、ゴールドが思い浮かべていた少年ー…ルビーが居た。
何でここに居んだよ、と思いながら顔には出さずにサファイアに向き合う。

「よし!お前がそう言うんならオレは応援するぜ!」

頑張れよ、サファイアと言って頭を撫でるとサファイアは嬉しそうに笑った。
ゴールドはなんか妹が出来たみてーだなぁと心中で呟くと、ちらりとルビーの居る方を見た。
殺気を放っていると言っても良いほどの視線でこちらを睨んで来るルビーの姿を認めながら、サファイアの想いが通じ合う日が近いと良いと苦笑してゴールドはサファイアの頭を撫でた。


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envyのゴールド視点です。
ゴールドの口調もサファイアの口調も分かってないのが丸わかりですね。
だって二人の口調って難しいんですもの!
はい。開き直ってはいけないので漫画を読み返しながら勉強します。
勿論、本やインターネットでも調べます。
それにしても消化不良を起こしそうだ…
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