それは、ある春の日の出来事。

ぽかぽかとした春の陽射しに感化されてか、珍しくボクとサファイアは口喧嘩をせずに(今となっては恒例になっている)秘密基地で遊んでいた。
遊ぶというよりは二人で他愛もないお喋りをしているだけなんだけど。

他人から見たらどうでも良い会話。
意味もなく過ぎ去ってゆく時間。でもボク達にとっては、くすくすと笑い合うこの時間が、限りなく愛しい。

サファイアが内緒話をするようにボクの耳に両手を当てる。
嬉しそうに眼を細めて楽しかってぽそりと呟くから。
ボクも彼女の気持ちに同調する様に嬉しくなった。

ああ、しあわせ、だ。

ぽかぽか。

春の陽気と同じ様に暖かい気持ちになって今、この瞬間が永遠に続けば良いのに、なんて叶う筈のないことを願う。
そう願うけれどやっぱり時間が止まってくれる事はないのだ。
だってついさっきまで時間よ止まれ、なんて願っていたのに次の瞬間には彼女に悪戯をしたいなんて思うボクがいるのだから。

先程の彼女と同じ様にサファイアの耳に両手を当てる。

世界で一番君が好き

ぽそりと、でもはっきりとサファイアに聞こえるように呟くと、彼女は顔をマトマの実の様に真っ赤にさせた。
その反応はボクの言葉が彼女に届いたのだという紛れも無い証拠を表していて。
ボクは自分の企みが成功した事実に満足する。

サファイア、と呼びかけて彼女を引き寄せるとボクの腕の中に閉じ込める。
お日様の暖かい匂いのするサファイアの髪に口づけて。

今度は二人で。

「世界で一番/あんたが好きだよ/ったい

呟いた。

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甘いけどほのぼのとしたものが書きたかったんです。
少しでも伝わっているならば幸いです。


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