「――お待たせ致しました。トマトの冷製パスタと五穀米オムライスでございます」
「わー」
「うまそー」

イエローの前に五穀米オムライス、レッドの前にトマトの冷製パスタが置かれる。

「ごゆっくりどうぞ」

店員が伝票を置いてすぐに立ち去って行く。目の前に出てきた素晴らしいメニューにお腹が鳴った。

「んじゃ、いただきます」
「いただきます」

二人は手を合わせて食事の挨拶してから食事を始めた。

「美味いー」
「玉子がふわふわですー。あっ」
「どうした?」

頬を真っ赤に染めたイエローが見ている先、パスタを巻いたフォークを口に運びながら先を見る。思わず持っていたフォークを落としてしまうほどの衝撃が待っていた。見た先ではブルーがグリーンに『はい、あーん』とやらをしていたのだ。しかも、嫌がるであろうグリーンがおとなしく『はい、あーん』を受け入れ、笑顔でそれを食しているではないか。更に今度はグリーンがブルーに『はい、あーん』をしていた。もう、夢でも見ているのではないかと思うぐらい不自然なグリーンに、二人は顔を赤らめるばかり。

「レッドさん……」
「どうした?」
「嫌じゃなければ何ですけど……ボクたちもしてみません?」
「え?」
「嫌ならいいんですよ!わがまま言ってごめんなさい!」

勇気を振り絞ったイエローの顔は今にも湯気が出てきそうなぐらい真っ赤で可愛らしい。滅多にわがままを言わないイエローが今、可愛らしいわがままを言っている。ここでそのわがままを叶えないのは男としてよくない。落としたフォークを取り、食べやすい大きさに巻いて差し出した。

「よっ、よーし。ほら、あーん」
「いっ、いただきます。トマトの酸味がいいですね」

小さな口に運ばれたパスタは冷製とだけあって今の火照った体にはありがたい冷たさで思わず頬がほころんだ。

「今度はボクがしますね。はい、あーん」
「いただきますっ!」

ふわふわの卵が口の中で広がり、五穀米の香ばしさが甘い卵とマッチしている。

「このオムライスも美味いー」

リラックス出来たらしい二人を、のほほんとした雰囲気が包み込む。いつも通りのおしゃべりをしながらパスタとオムライスを完食した二人に、店員がデザートを持ってきた。頼んでいないデザートに首を傾げると、店員があるテーブルを指してデザートを置いた。

「あちらのお客様からです」
「!!」

店員が指したテーブルにはウインクをして手を振るブルーと、頬杖をついて口許を吊り上げ笑っているグリーンの姿があった。大口を開けて呆然としている二人に、席を立って近づいてくる。

「ホホホ。二人とも変装はまあまあ上手いけど、尾行が下手すぎるわ」
「バレバレだ」

イエローの隣にブルーが、レッドの隣にグリーンが座り、にやにやと笑っていた。変装していたのになぜバレてしまったのか。頭の中はなぜバレてしまったのか、でいっぱいで、デザートの存在など忘れている。

「あっ、あの、いつ、いつ頃からボクたちに気がついていたんですか?」
「えーと、雑貨屋さんからかしら?」
「おい、ピカチュウのマグカップで何を飲む予定だ?」
「まだ未定……です」
「ピカチュウのマグカップで騒ぎすぎだったなぁ、レッド」
「ほら、この話はあとでいいから。せっかくデザートが台無しになっちゃう前に食べなさい」

ブルーに言われてデザートの存在を思い出した。丸々大きなホットケーキにどっさりとのったイチゴと生クリームと、バニラアイスにチョコレートソースとイチゴソースがかかった美味しそうなデザート……なはず。二人は味わえないまま、あの瞬間を見られたという羞恥でホットケーキの上にのっているアイス同様、溶けてしまいそうだった。デザートを口にしたイエローとレッドは隣にいる二人と目を合わせることが出来ず、ただ一言、「デザートありがとうございます」としか言えなかった。
この尾行作戦から一ヶ月の間、ブルーとグリーンから笑いのネタにされたのは言うまでもなく。尾行はしても騒がず静かに。今後の教訓になりそうだ。もう二度とすることはないだろうが……。


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神山さんのサイト「初恋いちご」にてキリ番を踏ませて頂き、リクエストをして書いて頂いたものです。
神山さん、ありがとうございました(^人^)

レッドとイエローが探偵の真似をしてグリーンとイエローを尾行する話、とても面白かったです!
服の出所とかも注目するところで、この後二人はゴールドとルビーからどうなったのか問い詰められたりするのでしょう(笑)
しかし、恥ずかしさ故に絶対に口は割らない二人。
本屋では自由人過ぎるレッドに振り回されるイエローが可愛過ぎて…イエロー頑張って!と応援したくなる程です。
実況中継も見所の一つですが、一番の見所は不思議の国のアリスをモチーフにしたカフェでの「あーん」です!
グリブルとレイエの「あーん」は萌え禿げる事間違い無しです!
皆様育毛剤のご用意を!(笑)

神山さん、こんなに素敵な小説を書いて下さり、ありがとうございました!



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