グリーンとブルーを追って本屋に入ったレッドとイエローは、グリーンが向かうであろう、あるコーナーの本棚に向かった。そのコーナーとは、ポケモン育成論で、育てる者として、ジムリーダーとして更なる向上を目指すには欠かせない本なのだ。

「グリーンさんはすごいですね。って、あれ?レッドさん?」

先程まで一緒にいたレッドの姿がない。慌てて辺りを見回すも姿はなく、雑誌を立ち読みする女子高校生や参考書を探す中学生、絵本を買って欲しいと母親に駄々をこねる男の子が目に入るばかりだ。いったいどこに消えてしまったのか。おろおろと困っていると、ひょっこり本棚の陰からレッドが雑誌を持って現れた。

「ちょっとレッドさん!どこに行っていたんですか!」
「そういえば、月刊ポケモンバトルを買うの忘れてたな〜って」
「もう!見失ったらどうするつもりですか!」
「ごめんごめん」

ご立腹なイエローの頭を撫でて機嫌を直してもらおうとしたが、そっぽを向かれてしまい、仕方なくそっぽを向いた方を除くと、ブルーとグリーンの姿がなくなっていた。話している間に移動してしまったようだ。二人は冷静を装いながら店内を歩き回った。

「あ、いた!」

レッドが指を差した先、ファッション雑誌のコーナーでブルーが雑誌を立ち読みしていた。その隣にグリーンの姿はない。イエローは「レジを見てきます」と言って、その場から離れていった。しばらくするとイエローが帰って来た。

「レジにグリーンさんがいました。ブルーさんのところにグリーンさんが戻ったら、ゆっくり二人のあとを追って出ましょう」
「あ、本買ってくる」
「急いで買って来て下さい!」

慌ててレジに向かうレッドとグリーンがすれ違う。バレてしまうのではないかとハラハラしたが、案外バレずにグリーンの横を通りすぎたのでレッドもイエローも胸を撫で下ろした。
グリーンがブルーと合流して出口に向かっている後ろから、イエローがゆっくりとついて行く。二人がレジを通過したとき、レッドもちょうど会計が済み、レジから離れていたのでイエローは側に駆け寄り、出口に向かって歩いた。外では二人がデパートに向かって歩いていた。見失わない距離を保ちながら二人のことを追い掛ける。
しばらく歩くと不思議の国のアリスをイメージしたようなカフェに二人は入って行った。思わず、自分たちでは入ったことのない、いや、自分たちには不釣り合いのカフェの前で立ち止まってしまった。少し入るのを躊躇ってしまうほどの外見にレッドとイエローは顔を見合わせて苦笑いを溢してしまった。

「どうします?」
「入ってみるか?今日はいつもと格好が違うし」
「そうですね。今日は勢いに任せてみましょう!」
「よし!」
「いざ!」

いつもとは違う格好、変装をしている自分たちに怖いものはないとばかりに二人はカフェの扉を開けた。すると、そこには可愛らしいピンク色のチェック柄でフリルのついたジャンパースカートに身を包み、頭には同じくピンク色のチェック柄のフリルつきのカチューシャ、白いソックス、ピンク色のエナメルの靴を履いた女性の店員が迎えてくれた。

「いらっしゃいませ。二名様でよろしいですか?」
「はっ、はいぃ!」

レッドがぎこちない返事をすると、店員は笑顔で「お席までご案内致します」と言い、歩いて行った。店員のあとをついて行くとグリーンとブルーからよく見える席に案内されてしまった。さすがに断れるはずもなく、おとなしく案内された席に座って二人を観察することにした。
丁寧に開かれて出されたメニュー。一言掛けて立ち去って行く店員と交代でお冷やとおしぼりを持った違う店員が笑顔でそれを置いて行く。

「ご注文がお決まりになりましたら、こちらのボタンでお呼び下さい。失礼致します」

テーブルに置いてあるボタンを指し、頭を下げて消えて行く店員。二人は冷静になり、心の中で叫んだ。ノリだけで不慣れな店に入ってはいけない、と。ゆっくり目の前のメニューから目を離してお互いを見る。どちらも余裕のない表情で笑えなかった。
このままではいけない。落ち着くためにも水を飲む。緊張で乾いた喉が潤うと、少しだけ気持ちが軽くなるのを感じた。これならいける。イエローはレッドに笑いかけ、緊張を解す。

「ありがとうな」
「いえいえ。とりあえず、決めましょう」
「そうだな」

いずれこの雰囲気にも慣れるだろう。郷に従えと言うことで、美味しそうな写真で食欲をそそるメニューの誘惑を受けながら、食べたいものを探すことにした。





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