「隕石が落ちる…ねぇ…」

育て屋から預かった卵を抱えてゴールドはぼやいた。

「隕石?」

「落ちるのか?」

「ゴールド、何言ってるの?」

それぞれから違う反応を返されたゴールドは自分を含めた四人が見えやすい様にとノートパソコンをテーブルへと置く。

「これ、ツイッターっつーんだけどよ。このツィートの中で似たようなっつーか同じ文が書かれてんだろ?リツィートっていう奴なんだけど、まぁ、それは良いとして。誰だか知んねーけど、17日に隕石が落ちるって言い出してる奴がいんだよ」

「ノストラダムスの予言か?」

「マヤ文明?」

左右からパソコンの画面を覗き込んで各々思った事を口にするシルバーとエメラルド。

「んーな大したもんじゃねーよ。どっかの誰かがテキトーに呟いたんじゃねーの?」

「ああ、だから『隕石が落ちる…ねぇ…』って呟いてたの?」

得心がいった様にクリスタルが笑うとゴールドは「そーいうこった」と肯定した。

「ねー、ゴールドさんとクリスタルさん。それからシルバーさん」

まじまじとパソコン画面を見ていたエメラルドが長い眉毛を寄せて先輩へと話し掛ける。
先輩三人が頷いてエメラルドを促すと、エメラルドはパソコン画面に書かれた文章を読み上げた。

「もしも隕石が落ちるなら俺なら落ちる前にメイドカフェ全制覇するわwwって書いてあるけど、皆ならどうする?」

「そんなの、決まってんじゃねーか。クルミちゃんのサイン貰ってデートして、それから世の中のギャルをナンパして、他地方の名物を食いまくんに決まってんだろ!」

「サイテーね」

ゴールドに向けてクリスタルが冷たい視線を浴びせる。

「んだとぉ?だったら、おめーはどーなんだよ?さぞかし高尚な事をやるんだろーな?」

「私だったらまだ捕獲してないポケモンの捕獲とジョンバニ先生のポケモン塾の皆を遊園地とかに連れていってあげたいわ」

「おーおー。流石真面目な学級委員長様なだけはある事で。今度は学級委員長じゃなくて聖人君子でも目指すつもりかよ?」

「その言い方はないんじゃない!?私はただ皆に喜んで欲しいだけよ!」

ぎゃーぎゃーとゴールドとクリスタルの言い合いが始まる。
ゴールドとクリスタルの突発的な喧嘩等、慣れっこのエメラルドとシルバーは彼等を放置して二人で会話を進める。

「また始まったな」

「いつもの事だよね」

「いい加減突っ掛かる事を止めれば良いのにねー」

「無理だな。あいつは好きな奴程いじめたいがき大将みたいな奴だ」

「あーあ…。ところでシルバーさん」

「何だ?」

「シルバーさんは何がしたいの?」

だらだらとした会話の流れをエメラルドの質問が変える。

「オレか?オレは…」

シルバーが返答する前にゴールドの元気な声がシルバーとエメラルドの会話に割り込んだ。

「シル公は姉さんと一緒に居たい、だろ!シスコンだもんなー、シルバーちゃんは」

途中から会話を聞いていたのか、ゴールドがにやにやと笑う。

「黙れ。ゴールド。そうだな、オレは隕石が落ちる前にゴールドを抹殺する」

「ひでぇ!」

「自業自得よ、ゴールド。シルバーをからかうから…」

ショックを受けるゴールドを慰める者は誰も居ない。
彼に向けられるのはクリスタルの呆れた視線とエメラルドの苦笑、それからシルバーの殺気立った無言のプレッシャーだけである。

「そういうお前はどうなんだ?」

「え、オレ?」

シルバーがエメラルドに聞き返すとエメラルドは驚いて目を丸くする。
長く垂れた袖を自分へと向けて問い返すとシルバーから首肯が返ってくる。

「うーん…。隕石が落ちる前に、クリスタルさんやゴールドさん、シルバーさんにレッドさん達、後ラティアスとラティオスとジュカイン達と靴屋に会いたい…と思う」

長い眉毛を寄せて指折りで数えるエメラルド。
無意識にか、避けられている名前がある事にエメラルドは気付いているのだろうか。
ゴールドがにやにやと含み笑いをし、クリスタルとシルバーが小さく微笑を零す。

「エメラルド君。ルビー君とサファイアちゃんには会いたくないの?」

くすりと微笑んだクリスタルが小首を傾げてエメラルドに問い掛けると、エメラルドは顔を真っ赤にしてぼそぼそと呟いた。

「あー…えーと、い、一応あいつらにも会いたい………かもしれない」

目を左右に動かして照れを隠そうとするエメラルドにゴールドが飛び付く。

「かーっ!可愛い奴め!」

「わっ!?ゴールドさん?何するんだよっ!」

わしゃわしゃとクロワッサンの形をした髪を掻き回す。
ワックスで固められた金色の髪は無惨にも崩れ、さらさらとしたストレートの髪が流れる。

「でも本当に可愛いわ」

「だな」

「クリスタルさんとシルバーさんまで!」

クリスタルがエメラルドの頭を撫で、シルバーがくしゃりとエメラルドの頭を撫でる。

「仕方ねーだろ?可愛いんだから!」

ゴールドが止めとばかりに追い討ちをかける。

「…っつ、可愛いって言うなーーっっ!!!」

エメラルドが怒号を飛ばすが彼を囲む先輩三人は気にせず、エメラルドを愛で続ける。
そんな微笑ましい光景が今日、ジョウトの第二研究所では展開されていた。

**************
皆でエメラルドを愛で隊、隊員No.3、ゴールド。No.4、クリスタル。No.5、シルバー。
No.1とNo.2はルビーとサファイアで会長と副会長をしていると良い。


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