しんしんと雪が降る。

真っ白な空。
雲に覆われ、青が見えない。
冷たく降り積もるその雪はふわりと宙を舞う。
その光景は儚く美しい。
時にロマンティックに演出されるそれの成分を知ってしまうとそのロマンティックが半減されてしまう。
というのもロマンティックに感じるのも感じないのも人の心の機敏によって変わる物だからであって。
結局は「心」によって目の前に広がる景色なんてどんな色にも変わってしまうのだ。
心とは何と偉大なのだろう。
目を細めてブルーは目の前に広がる銀景色を眺めた。
寒い。
マフラーを巻き直すが寒さは変わらず。
白い息を吐く。
意味は無いと知りつつも手袋をした手を擦り合わせ、息で温めるのは幼少期に身についた癖の為だろうか。
顔に当たる雪の冷たさにふと思い出した。
今も心に突き刺さる過去。
これは生涯を掛けて抱えていくべきもの。
氷柱が心に突き刺さって痛みが、冷たさが、じわりじわりと浸蝕していく気がした。
瞼を閉じて世界から自分を遮断する。
そうして痛みに耐えていると、突然雪が止んだ。
訝しく思って瞳を開くと同時に頬に熱い物が当てられる。
驚愕して瞠目すると目の前には緑が。

「道端で寝るな。死にたいのか」

傘をブルーと自分の頭上に翳してアルミ缶を渡す。
隣に腰掛けたグリーンを瞬きをして見つめてからブルーは吹き出した。

「死ぬってそんな極端な」

「お前が冬眠しそうだったからな」

「失礼ねー!」

ニヒルな笑みを浮かべるグリーンを叩く。

「実際、そうだろう?」

「そんな訳ないでしょ?」

呆れた様に眉を下げて溜息をつく。
カシュリ。
アルミ缶の口を開けて一口飲むとペロリと唇を舐める。

「ミルクティー、ありがとね」

微笑んでお礼を言うと「ん」と返してグリーンはブルーの頭に積もる雪を払いのけた。
ブラック珈琲を飲んでぼーっと雪景色を眺める。

「…で、何でそんなに感傷に浸っていたんだ?」

「浸ってないし」

驚いてグリーンを見ると嘘をつけ、と呆れられた。

「断定しないでよねー」

笑えばごまかすな、と真剣な瞳で見つめられた。
何よ、何でこんな時だけそんな突っ込んで聞いてくんのよ。
乙女には聞かれたくない事の事情の一つや二つあんのよ、畜生。

「冬だからよ。人肌恋しい季節だから寂しくなったの!」

嘘と本音を混ぜ込んで降参するかの様に片手をひらひらさせるとグリーンに掴まれた。
手袋を脱がされてするりと片手を絡められる。
急激な温度の差に体がぶるりと震えた。

「ちょっと何すんの!」

返して、と手袋を要求するが、その手袋はブルーの元には帰らずにグリーンのコートのポケットへと姿を隠した。

「人肌が恋しいんだろう?温めてやる」

不敵に笑って立ち上がると空の缶珈琲を公園のゴミ箱へと放り投げる。
くるくると回ってカンと小気味良い音をたてて缶珈琲はゴミ箱の中へと入った。
ブルーもベンチから立ち上がり、グリーンを真似て缶を投げる。
グリーンの様な綺麗な螺旋を描かずに飛んでいった缶はゴインと音をたてて地面に落ちた。

「下手くそ」

「うるさいわねー」

二人で手を繋いで歩くとゴミ箱の傍に落下した缶を拾って捨てる。
他の缶と一緒くたになってリサイクルに回される運命にある缶を眺めてブルーは微笑を零した。
心に突き刺さっていた氷柱はいつの間にか降り続ける淡雪に溶かされていたらしい。
手の平からじわじわと広がる温もりに体温が僅かに上がった。


**************
ブルー姉さんの心にはきっと溶けない氷の様な物が突き刺さっている筈。
それはシルバーも同様で。
そんな彼女達の氷を溶かしてしまうのがカントー組とジョウト組だと良い。


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