少年は小さな頃から憧れを抱いていた。
彼の住む町、エンジュに伝わる伝説。
ホウオウという名のポケモンに生命を与えられた名の無き三匹のポケモン。
後にスイクン、ライコウ、エンテイと名付けられる大型のポケモン、その一匹のー…美しい毛並みの神秘的な雰囲気に包まれたスイクンに一目会いたいと憧れを抱き続けた少年は成長して青年へと変わる中、筋肉がつき、引き締まった肉体とは反対に幼少期に抱いた憧れを保ち続けー…スイクンハンターになるという夢を叶えた。
スイクンを探してエンジュを離れ、各地方を飛び回った。
時に里帰りの様にエンジュに帰っては親友とも呼べるエンジュシティのジムリーダー、マツバにスイクンにまつわる情報はないかと尋ね、伝説に出てくる焼けた塔に足を運んだ。
そんな青年の前で彼が探し続けた伝説が目を覚ました。
ー…つい先程知り合ったクリスタルという名の少女によって。
青年は歓喜に打ち奮えた。
長年探し続けた、追い求めてきた物が目の前で疾風の風を纏い、駆け抜けた。
灯台下暗しとはこの事か。
そう思いながらも青年はスイクンを追い掛けた。
興奮を抑えられないままに憧れの対象に相対する事を望んで。
それ程までに青年はー…ミナキは渇望していたのだ。
スイクンとの遭遇を。
そしてカントーまで追い掛けたミナキの目の前でー…スイクンはクリスタルを主人として認めた。
全力で闘って自分に勝ったポケモントレーナーに自らスイクンはその少女に頭を垂れたのだ。
その現場に居合わせたミナキは愕然とした。
クリスタルとスイクンの壮絶なる気迫に呑まれたミナキは闘いが終わり、その結果を見届けた後に悔しさと共に奇妙な爽快感に全身が満たされていた事実に驚愕し、目を見開いた。
しかし、即座に驚愕に彩られた表情をいつもの自分に戻し、水晶色の瞳を向けたクリスタルにミナキは柔らかい微笑みを浮かべた。
先程の闘いに絶賛の賛辞を送り、憧れのスイクンを手にした少女に憧れを追い続けたスイクンハンターは握手を求めた。
自らの夢と敗者特有の虚無感を携えて、憎らしくも愛しいライバルと認めたー…少女は戸惑いながらもどこか清々しい笑みを浮かべた青年が差し出した手に手を重ね、握った。
スイクンを失った青年はスイクンが人の手に渡っても変わらずスイクンを愛し続けた。
憧れの存在を追い求めた今までとは別の方法で青年はスイクンに接触を試みるのだが、それはまた別の話である。


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どれだけ機械的に感情が篭らない様に書けるか挑戦してみた。
ポケスペのミナキとクリスとは違うゲームの方のミナキとクリスタルです。


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