図鑑所有者は定期的に集まる事がある。
それが全員であったり、特定の地方だけであったりと内容は様々だ。
時には男だけで集まったり、その逆も然りで女のみで集まる事もある。
いわば女子会だ。
女同士で男が居ないが故に普段は言えないような愚痴を吐き出したり、悩みを打ち明けたり、恋の話ー…コイバナで盛り上がったりする。
主にその発足者はブルーであるのだが、今日は視点を変えてみようと思う。
…そう。
何も女子会とは人間同士で行うだけの物ではないのだ。
女が集まり、お喋りをする。
それが女子会ならその定義はポケモンにも当て嵌まるだろう。

「…という訳でこっそり皆の輪から抜け出してこうして私達女だけで集まったのだが…」

黄色と赤色の毛が何とも美しいバシャーモことちゃもは長い前置きを置いてから周囲を見回した。

右からブルーの手持ちであるプクリンことぷりり、イエローの手持ち、ピカチューことチュチュ、クリスタルの手持ち、ムチュールのムーピョン、最後にプラチナの手持ち、エンペルトである。
彼女達と自分の主人を思い浮かべたちゃもはそれぞれのんびりとしている面々にそっと視線をやった。

「私がサファイア達を真似て女子会を発足させたのは一つの議論において、皆の意見や近況を聞いておきたいからなんだ」

「一つの議論ですか?」

真面目な性格のエンペルトがちゃもを真っ直ぐに見る。
主人譲りの好奇心がその瞳に見え隠れするのを見抜きながら、ちゃもは頷いた。

「ああ。…簡単に言うと自分の主人の色事に対してどう思うか、なんだが…」

「自分の主人って…ブルーとか〜?」

能天気な性格のぷりりが空を見上げてのほほんと尋ねた。
晴天の青空は彼女の主人の瞳を思い起こす色をしている。

「ああ、そうだ。私ならサファイア。ぷりりならブルーさん。ムーピョンならクリスタルさん。チュチュならイエローさん。エンペルトならプラチナだな」

「どう思うって…例えばイエローやレッドの恋愛関係についてじれったいな、早くくっつけ、とかで良いの?」

おっとりとチュチュが小首を傾げる。

「議題は「主人の色事に対してどう思うか」だから、そう取ってくれても構わない」

「じゃあ纏めると「主人の傍で彼女達の恋愛の行く末を見守る私達の溜まったストレスを発散しよう!」っていう事で良いかしら?」

それまで黙っていたムーピョンが小さな手を挙手して自分なりの解釈を述べた。

「だったら私が一番手で!…皆、イエローがレッドの事が好きなの…知ってるわよね?」

ちらりと自分以外に視線を向けると皆、一様に頷いた。

「でも肝心のレッドがイエローの気持ちに全然気付かないのよ!」

「ああ、あの鈍感さんじゃあね〜」

ピンク色の丸みをおびた体が愛らしいぷりりが分かる分かると頷く。
それに呼応してチュチュがじたばたと手足を動かした。

「イエローもイエローで恥ずかしがって顔を真っ赤にするから、結局何の進展もないのよ!?」

「それ凄い分かる!」

赤い頬に微弱な電気を走らせ、本気でもどかしがるチュチュにちゃもが僅かに興奮した様子で身を乗り出した。

「サファイアも自分からあの時の事…つまり告白した時の事や、好きって言葉が言い出せなくっていつも顔を赤くしてどもってしまうんだ」

「それでルビー様のあの性格ですから、それを面白がって何の事だい?ほらほら言ってご覧よ?とからかって喧嘩が勃発する訳ですか」

冷静に分析したエンペルトに「そうなんだ!もどかしいにも程がある!」とちゃもは地面に拳を叩き付けた。

「喧嘩って言えば、ゴールドとクリスタルよ。お互い気になってる癖に妙な意地を張って喧嘩になるんだから。素直になれば上手くいくと思うのに…」

溜息をついてムーピョンは地面を見つめた。
俯いた動作から彼女の首の下からぶら下がる星のペンダントがチャリ…と音をたてて揺れた。

「意地っ張り。素直じゃないと言えばプラチナお嬢様はどうなの〜?」

どこから持って来たのか。
モモンの実にかじりついてぷりりがふにゃっと笑った。

「…プラチナお嬢様はそういったお相手がおりませんので私としてはお答えづらいですね」

「え、何で?パールとダイヤは?」

目を丸くしてチュチュがエンペルトを凝視する。
エンペルトに尋ねたぷりりもムーピョンもちゃもも皆驚いた様子でそれぞれ首を傾げていた。

「あのお二人はプラチナお嬢様にとって恋愛相手である前に大切な仲間なのです。…最もダイヤモンド様の方はプラチナお嬢様をどの様に思っていらっしゃるかは分かりませんが」

「えーっ!何、何!?ダイヤってプラチナの事好きなの!?」

「それは初耳だな」

「プラチナはそれに気付いてないの?」

「パールはダイヤの気持ちに気付いてないの〜?」

チュチュ、ちゃも、ムーピョン、ぷりりが一気に色めき立ち、口々に質問を投げ掛ける。
黄色い声とはこの事か。
盛り上がる面々をぱちくりと瞬いてエンペルトは真面目に答えた。

「私の目から見てなので主観が混じりますが、おそらくダイヤモンド様は少なからずもプラチナお嬢様を好ましく思っていられる様に見受けられます。プラチナお嬢様は気付いていらっしゃらないでしょう。もしも気付いていらっしゃる様なら何かしらの反応がある筈です。…ですが、そういった動作は見受けられません。パール様については…判断がつきません。ですが彼の性格からして何かしらの行動を起こす筈ですよ?…プラチナお嬢様やダイヤモンド様と同じ様に、彼にとってもお二人は大切な仲間なのでしょうから」

主人に似たのか、それとも傍に居続けた事で身についたのか、丁寧な物言いで答えてから、エンペルトはモモンの実を咀嚼するぷりりに顔を向けた。

「…ところでぷりりさんのご主人、ブルー様はグリーン様とどの様な関係性なのでしょうか?」

「え〜?ブルー?」

「確かにあの二人はどうなんだろう?」

「たまにグリーンとブルーが一緒に居る所をイエローと見かけるけど、付き合ってるって訳じゃなさそうなのよねー。まぁ、端から見たらラブラブカップルなんだけど」

「はっきりさせたいわね。…そこの所どうなの?」

口々に興味があるのかそれぞれ疑問や見解を勝手に述べる彼女達をモモンの実をかじりながらのほほんとマイペースに見つめたぷりりはごくんと飲み込み、驚愕の一言を放った。

「付き合ってないよ」

「…え、」

「だから付き合ってないんだってば〜」

「ええーーーーっっ!!!!??」

「皆驚きすぎ〜」

「だ、だって休日にデートする仲なのよね?」

「うん」

「たまにさりげないペアルックをしているんだろう?」

「うん」

「嘘でしょ…?じゃあ…じゃあ、何で付き合ってないのーっ!?」

「そこまでは知らないよ〜」

のほほんと耳をそよがせ、ぷりりは首をゆっくりと左右に振った。

「じゃあブルーはグリーンの事好きじゃないの?」

「良い男ねって」

「それだけ〜!?」

「何だその関係!?なんというか凄いもやもやする!」

頭を抱えるちゃもに尻尾を下げるチュチュ、溜息をつくムーピョンに瞬きを繰り返すエンペルト。
そしてどこまでものほほんとマイペースに笑うぷりりの耳に彼女達の主人の声が届いた。

「ちゃもーっ!」

「ぷりりー!」

「チュチューっ」

「エンペルトーっ」

「ムーピョン!」

あ、呼ばれてる。
そう思うと同時に主人の元へと体が動き出した。

「サファイアが呼んでるから行かなくちゃ…。皆また別の日に女子会をやろう」

ちゃもが提案すると全員が全員、了承として頷いた。
そして突然発足したポケモン同士の女子会は幕を閉じたのである。

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思い切り捏造です。
ポケスペコミックにて性格を調べたのですが、分からないものもあったり。
こんな会話をしてたら面白いと思います。


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