「ルビー、次どっちに進めば良か?」

地図を持つルビーの前を少しだけ先に進んだサファイアは振り返って聞いた。

「ちょっとサファイア。ランプも持たないで先を歩かないでよ。危ないじゃないか」

「あたしは夜目が効くけん。心配なか!」

「あのねぇ…。…はぁ。流石、野生児。君にとってはこの森も庭みたいなものなんだね」

溜息をついて皮肉を言うルビーに頬を膨らませたサファイアは口を尖らせた。

「野生児で悪かったとね!」

つんっとそっぽを向くサファイアの隣に並び、ルビーはサファイアにランプを持たせる。

「本当にね。あんまりちょろちょろ動かれて迷子になっても探さないからね。…でも、君が居なくなったら先輩達も心配するだろうからいなくならないでよ」

サファイアの右手を握ってルビーはにっこりと笑った。

「やっぱり野生児には誰かが手綱を引いてあげなくちゃね」

「余計なお世話ったい!」

見せつけるように掲げられた自分の手をルビーから振り払おうと思い切り強く振る。
…がっちりと握られた手はルビーの手を解く事も出来ずにしっかりと彼の手の中に収まっていた。

「残念だったねぇ」

にやにやと目を細めて笑うルビーにサファイアの頬が紅潮する。

「離すったい!」

「嫌だ。それより君のランプでボクが持ってる地図を照らしてよ。地図が読めない」

ルビーに正論で反撃されたサファイアはぐっと言葉を詰まらせると渋々ランプを地図の手前に出した。

「OK。次はあっちだね。行くよ」

ぐいっとルビーに引っ張られる。
強く握られたサファイアの手にルビーの体温が伝わってきた。
少しだけ力を込めて握ってみる。
すると、ルビーからサファイアが込めた力より少しだけ上乗せされた力加減で握り返された。
ちらりと隣に居るルビーの顔を盗み見る。
ルビーは地図を読み解くのに集中しているのか、サファイアの視線には気付いていないようだった。

…ルビーの手、あったかか。
ルビーの体温があたしに伝わっとるようにあたしの体温もルビーに伝わっとるんやろか?
あたしは隣にルビーが居るだけで胸が苦しかよ。
動機が激しくてこん胸の鼓動も聞かれてるんじゃなかと思うと恥ずかしくなるったい。
ばってん、聞かれてしまいたいような気もすると。
そしたら、ルビーにも伝わるんやろか?
あたしのルビーに対するこん気持ち。

「サファイア、着いたよ」

ルビーに声を掛けられ、サファイアはハッと我に返った。

「何、ぼーっとしてるのさ。多分ここが例の宝物が隠された場所なんだと思うよ」

地図上に記された髑髏マークを目で追ったルビーにつられてサファイアもその髑髏マークを見た。

「…あたしは地図は分からんち」

俯いて告白するサファイアに小さく笑ってルビーはそうだったね、と返す。
恥ずかしさ故に小さくなるサファイアを優しげな瞳で見ていたルビーはふと目をすがめた。

「サファ「ルビー」

先程まで小さくなっていたサファイアはルビーの呼びかけを遮って彼を見た。
サファイアの目は気付いとると?と語っている。
気付いてるよ。
そういう意味を込めて頷くとルビーとサファイアは神経を尖らせた。
周囲の気配を探る。
明らかに異常な気配を放つ存在を探してルビーとサファイアは臨戦態勢を取った。

ガサリ。

叢が動いた。

次の瞬間、ルビーとサファイアの目は驚愕に見開かれた。


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