暗い森の中をシルバーとグリーンは目的の髑髏マークが記されてある場所に向かって進んでいた。
身長的な関係からシルバーが地図を持ち、グリーンがランプで地図と辺りを照らしている。
「…次はあの木を曲がれば良いんじゃないか?」
少し屈んで地図を覗くグリーンに頷いてシルバーは前方にある木を指差した。
「そうだと思います。あの木を右に曲がるんだと思います」
「そうか。…足元、木の枝と石がごろごろしてるから気をつけろよ」
グリーンの忠告に素直に礼を言うとシルバーはちらりとグリーンを一瞥した。
「…何だ?」
シルバーの視線に気付いていたグリーンはシルバーに問い掛けた。
シルバーは俯いて沈黙すると、グリーンを見上げて口を開いた。
「グリーン先輩は、姉さんの事をどう思ってますか?」
思い出すのは今日の出来事だ。
姉さんが転んで倒れそうだったのを支えて助けたのはグリーン先輩だった。
少しだけ頬を紅潮させて礼を述べた姉さんは多分きっとグリーン先輩の事が好きなんだろう。
多分とかそういった憶測の域を出ないけど、長年一緒にいた弟の勘だ。
外れていないと思う。
分からないのはグリーン先輩の事だ。
姉さんの事は嫌っていないだろうけど、どう思っているのかが分からない。
せっかく誰もいない状況で聞けるのだ。
聞かない手はない。
率直に疑問をぶつけたグリーン先輩の反応は芳しくない物だった。
無言で眉間に皺を寄せるグリーンを直視したシルバーは不安になった。
そんなにまずい事を聞いてしまったのだろうか。
じっと黙って答えを待っているとやがてグリーンは重い口を開くようにゆっくりと答えた。
「ブルーは仲間だ。それ以外に思う事はない」
「…そうですか。変な事を聞いてすみませんでした」
グリーンの返答を聞いてシルバーの心に奇妙な感情が落ちてきた。
安堵と苛立ちと空しさとがないまぜになったぐちゃぐちゃとした感情が彼の心の中に渦を巻く。
「…どうやら着いたみたいだな」
グリーンに声を掛けられシルバーは周囲に視線を巡らせた。
地図とブルーが書きこんだ情報を元に判断する。
「多分、そうですね」
「……シルバー」
「はい。気付いてます」
グリーンがシルバーを呼び、シルバーがグリーンに答えた時。
不意に一枚の葉が舞い落ちた。
じり…。
土を踏みにじり、グリーンとシルバーはそれぞれの手にモンスターボールを構えた。
グリーンは目を閉じて神経を研ぎ澄ます。
あえて目に頼らずに五感ー…聴覚を使って周囲に気を張るグリーンを守るようにシルバーは移動した。
「…そこだ!」
グリーンが投げた場所に向かってシルバーも同時にモンスターボールを投げる。
「ハッサム、はさみうち!」
「マニューラ、騙し討ち!」
鋭い鋼鉄の爪と刃がそこにあったものを切り裂いた。
戻って来たマニューラとハッサムの納得のいかないような変な表情にシルバーとグリーンは怪訝に眉を寄せた。
「どうかしたのか?」
「何があった?」
彼等が同時に尋ねた瞬間、もぞりともぼこりとも何とも形容し難い音が鳴り、闇が津波となってシルバーとグリーンを飲み込んだ。