空に浮遊する少女を発見した少年は走る速度を緩めた。
極力息を整えようと努力するが、久しぶりに全力で走った為に息が整わない。
大量の汗をかいて少年は大声を出した。

「ねぇ、天使さん。今日の晩御飯はシチューなんだけど、シチューは好き?」

少女は驚いた様子で少年を振り返ると、嫌いじゃなかよと答えた。
少女の答えに笑顔を深めると少年は踵を返して少女に手を振った。

「良かった!あまり遅くならないうちに帰ってきてね!」

軽い足取りで走る少年は上機嫌らしく、鼻歌でも歌いだしてしまいそうだった。
自然と笑みが顔に浮かび、少年は心の中で少女に話し掛けた。


天使さんは知らないでしょう?
ボクはずっと世界がつまらなかった。
欲望に塗れた世界など必要ないと見限ったんだ。
冷めた気持ちで生きるボクの世界をぶち壊したのは空から振ってきたー…天使。
君と出逢えたからボクはもう一度この世界で生きていこうって思えたんだ。
君の藍色の瞳が黒と白と灰色だった世界に色鮮やかな色彩をくれたんだ。
ああ、なんて世界は楽しいんだろう。
君が隣に居るのならどんな世界だってきっと楽しい。




「…おイ。アレで良かったのカ?」

大木の上で少年と少女のやりとりを一部始終見ていた青年は隣に並ぶ女性に確認した。

「ああ。…アレで良いんだ。…随分良い顔付きになった」

目を細めて少年達を眩しそうに眺めたカガリは満足そうに笑った。

「俺はお前が分からン。どういった経緯で俺やホムラやあのガキ達がお前の琴線に触れたのかすら理解できン」

「…フン。ただの気まぐれさ」

「そーかヨ」

ホカゲが投げやりに言うとカガリはホカゲをちらりと一瞥して瞳を閉じた。




出会ったのはあの子も覚えていないだろう遥か昔の事。
一度だけ関わったあの子供ともう一度再会するとは思わなかった。
再会した子供は当然あたしの事なんざ覚えちゃいなかったが。
それよりもあの時の澄んだ純粋な瞳が絶望に染まり、濁っていた事実に驚いた。
このままじゃあいけない。
瞬時に判断して子供の手を引いて森に連れ帰った。
あの時の自分の判断は間違っていなかった。
今、あの子供は真っ直ぐに笑っているから。
光を見出だして懸命に生きようとしているから。
あたしはあの子供の笑う顔を見たかったんだ。
曇りのない晴れやかな笑顔を。




カガリは瞳を開いて空を見上げた。

「綺麗な空だ」

蒼く澄み渡る空は晴れやかな門出を祝福しているようで。
これから先の未来もこんな空があの子供達の上にあると良いとカガリは祈った。



**************
随分時間が掛かってしまいました。
魔女宅パロのルビー視点をお待ちして下さっていた皆様、本当にお待たせ致しました!
ルビー君視点ですが、お話を締め括る為にカガリさんの視点も入れました。
始めから決めてあった設定と話の内容を詰め込んだらカオスな話に…。
お楽しみ頂けたら嬉しいです^^*

こちらはちょっとした設定です。ルビー、サファイア、カガリ、ホカゲの設定なんぞがあります。
興味のある方はどうぞ→設定




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