リーフに呼び出されたファイアはマサラの外れにある空き地にリザードンの背に乗って飛んで来た。
「話って何?」
空き地にある土管に座るリーフの隣に腰掛け、話し掛ける。
リーフはちらりとファイアを見ると頬を染めてもじもじと動いた。
リーフの仕種を見たファイアは半眼になって眉を寄せる。
リーフがこういった態度を取る時は決まって「好きな人が出来た」という恋愛の類の話をするからだ。
何だよ。
またかよ。
勘弁してくれよ。
どーせ、また兄貴の自慢話でもするんだろ。
ファイアはリーフの兄、グリーンを思い出して辟易した。
なかば顔が良いものだから周りの女にもてはやされているグリーンは調子にのっているとファイアは思う。
そんなグリーンを溺愛しているのが隣で頬を染める少女、リーフ。
好きな人が出来たと言って報告しに来るこの幼なじみは好きな人を語っている内にいつの間にか兄をどれだけ好いているのかという話に話題がすり変わっている事に気付いているのだろうか。
気付いていないからこそ、こうして毎回ファイアの元にやって来るのだろうけど。
正直ファイアにはグリーンの良さが理解出来ない。
グリーンを慕うリーフには申し訳ないと思うが、自分の兄の方が百倍良い所がたくさんあると思う。
「あのね、私ね…」
ぼーっとしていたファイアはハッとしてリーフを見た。
「レッド兄が好きなの」
赤い顔と潤んだ瞳でじっとファイアを見つめてリーフは言った。
「はあぁっ…!?」
驚きのあまり立ち上がるとリーフは本当よ、とファイアを見上げた。
「何でよりによって兄さんな訳!?グリーンが好きなんじゃないのかよ!」
「兄さんは家族として好きなの」
きょとんとしてからリーフは答えた。
「駄目だ!リーフに兄さんは任せられない!絶対渡せない!」
大声で首を振るファイアにリーフはむぅと頬を膨らませてファイアを睨んだ。
「何よ!協力してくれたって良いじゃない!幼なじみでしょ?」
「断固断る!」
「ケチ!」
「グリーンにしとけよ!」
「兄さんはそういう対象じゃないの!ファイア、ブラコン過ぎるわよ。卒業しなさい!」
「お前こそ、ブラコン卒業しろよ!ついでに兄さんに手を出すな!」
「嫌よ!好きだもん」
「諦めろ!」
「嫌!」
睨み合って喧嘩するファイアとリーフはじりじりと間合いを取るとモンスターボールを構える。
「リザードン!」
「フシギバナ!」
ボールを高く投げてリザードンとフシギバナがそれぞれのボールから飛び出した。
「火炎放射!」
「葉っぱカッター!」
口論からポケモンバトルへと発展したリーフとファイアは白熱のバトルを繰り広げた。
(あ、ねえ。見てよ、グリーン。ファイアとリーフがバトルしてる)
(あ?ああ…そうだな。にしても何であの二人あんな恐えー顔でバトってんだ?)
(さあ?)
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ブラコンなリーフとファイア。
この後、空き地は大惨事になります。
そして近所の人に怒られます。