レッドとイエローの場合。
「レッドさーん!」
トキワの森を歩いていると後方からイエローのレッドを呼び止める声ととたとたと走る足音が聞こえて、レッドはトキワの森を歩く自分の足を止めて、振り返った。
「イエロー!」
「ピカッ!」
「チュッピカ!」
ピカとチュチュが走り出してレッドとイエローよりも早く出会って抱き合う。
互いの小さな手がぎゅっと体を抱きしめる。
小さくゆらゆらとチュチュの花かざりが風に揺れた。
恋人同士のピカとチュチュが仲睦まじくチュッチュと会話に花を咲かせていると遅れてやって来たレッドとイエローがピカ達の元へと合流した。
「どうしたんだ?イエロー」
「チュチュ達と日課の散歩に来たら、レッドさんが歩いているのを見かけたので、つい声をかけてしまったんです…」
えへへ、と笑うイエローにきゅんとレッドの胸が締め付けられる。
くっそ、可愛いなぁ…。
イエローの素直な笑顔に顔の筋肉が緩む。
ニヤニヤとした厭らしい笑みにならない様に慌てて気を引き締めるとレッドは「そっか」と爽やかに笑った。
「あの、レッドさん…」
ちらりとレッドを見上げるとレッドは「ん?」と優しくイエローを見下ろした。
もじもじとイエローは言葉にするのを躊躇って何度かレッドを見上げては視線を下に戻していたが、やがて覚悟を決めたイエローは大きく息を吸うと一息で自分の言いたい事を言い放った。
「…レ、レッドさんの好きなタイプって何ですか!?」
「オレの好きなタイプ?やっぱ電気系…いや、草も…でも水、ノーマル…飛行も捨て難い…」
ぶつぶつと呟いて、レッドは顎に手を置いて悩み出す。
「あはは…。レッドさん…」
そんなレッドの様子にイエローは苦笑いを返す。
レッドさん…。
サファイアさんと同じ事を言ってるや。
たまたまつけたテレビではホウエン地方の後輩二人が映っていて、そのインタビューの内容に興味を持った。
『好きなタイプ』
もしかしたらホウエン地方の八重歯がチャームポイントの元気な後輩と同じ事を言うかもしれない。
いや、その可能性の方が高いだろう。
でも、もしかしたら。
もしかしたらレッドの好みが分かるかもしれない。
僅かな希望を胸に、イエローはレッドに質問をぶつけてみた。
「でも何でそんな事を聞くんだ?」
不思議そうに首を傾げたレッドにイエローは正直に自分がどうしてレッドに急な質問をしたのか、その理由を話した。
「成る程なー。ルビーとサファイアがテレビに出てたのか。オレ、最近シロガネ山に篭ってばかりだったからなー」
修業に明け暮れた日々により、俗世に疎くなっていたレッドはからからと笑った。
「そ、そそれですね…」
「良く寝る娘」
「へ?」
「絵を描くのが好きで、昼寝が好きな娘がオレのタイプ」
「………」
「じゃあ、オレ、用事があるからここら辺で。またな!」
片手を上げてにっこりと笑うとレッドはピカを抱き抱えて颯爽とどこかへと消えていった。
そして、一人取り残されたイエローはというと。
無言のまま、レッドが言った好きなタイプを繰り返し反芻していた。
レッドさんの好きなタイプは良く寝る娘で、絵を描くのが好きで、昼寝…。
ある可能性が頭を過ぎると同時にぼんっと音をたてて赤面する。
「も、もしかして…ボクっ!?」
え、そんなまさか、でも本当に?いや、でもボクの勘違いかもしれない。
慌てた所でレッドは既にここからいなくなった後で。
イエローは混乱した頭のまま暫くの間、レッドの言葉の意味を考えて悩んだという。