「流石だね。水の都の名に恥じない」

キラキラと輝く水面を眺めてルビーは感心した。

「ルビー、あっちに海中バージョンちゅうもんがあると。行こう?」

サファイアに手を引かれ、階段を下る。
水槽の中を歩ける様に硝子で区切られた道を歩いてルビーは目を細めた。

「beautiful…」

見上げればマンタイン、テッポウオがゆったりと泳ぎ、左側を見ればラブカス同士が愛を深め合っている。

「あ!ルビー、見て見て!ミロカロスったい!」

サファイアが指差す先を見ると、ヒンバスとミロカロスが仲睦まじく寄り添っていた。
先程のラブカスみたいな恋人同士とは違う雰囲気にルビーは首を傾げる。

「親子かな?」

「兄弟かもしれんとよ?」

「まぁ、どっちにしたってボクのMIMIには負けるけどね」

両手を広げて自慢気に笑うルビーにサファイアは苦笑を返した。

「…確かに水の都やとは思うけど、やっぱり自然の方が良い気がするったい」

突然突飛な事を喋り出すサファイアをルビーは少し驚いて見た。
サファイアは何とも言い難い複雑な表情で硝子張りの向こうの海を眺めている。

「「水の都」っちゅうのは言い得て妙やね。人の手で創られたもんやけど、とても綺麗やなぁと思うと」

サファイアの視線の向こうでは水ポケモンがのびのびとしている。
ヒトデマン、スターミー、マリル、マリルリ、ヒンバス、ミロカロス、ブイゼル、プルリル、キバニアなどのカントー、ジョウト、ホウエン、シンオウ、イッシュのポケモン達が楽しそうにたゆたう姿を目を細めてサファイアは眩しそうに見つめる。

「ばってん、あたしは自然の美しさも負けとらんように思えるったい」

海より深いサファイアの瞳の色が一層蒼く濃い色になったように見えた。
昔のサファイアであったならば、人工のもんなんか論外ったい!と息を巻いていただろう。
けれど様々な体験をした今のサファイアは人の手で創られる美も理解出来るのだ。
人工と自然。
両方の美しさが理解出来るからこその葛藤なんだろう、と推測したルビーはサファイアに話し掛けた。

「ね、サファイア。今、楽しいかい?」

「何ね。いきなり」

「いいから答えて」

サファイアはぱちぱちと瞬きをするとうん、と頷いた。

「楽しかよ?」

「ボクも楽しい。この景色は綺麗だと思う。それでさ、ここから見える海だけじゃなくて、もっと別の海も見てみたいなぁって思ったんだよね」

話が変わっている。
サファイアは首を傾げたが、黙ってルビーの話に耳を傾けた。

「つまりはサファイアのじららに連れていって貰って海中デートをしませんか?っていうお誘いなんだけど」

受けてくれるかい?と小首を傾げるルビーにサファイアは赤面して頷いた。

「あ、やばい。そろそろ1時になる。ロビーに急がなくちゃ!」

腕時計で時間を確認してルビーとサファイアは慌てて走った。




「本日はご来場頂き真にありがとうございます!三時間と長めになっておりますが楽しんで頂けると思います、それでは早速始めましょう!」

肩につくかつかないかぐらいの髪の長さの女性がピィーっと口笛を吹いた。
ヒトデマンとスターミーが水面から飛び出して宙を舞う。

「スピードスター!」

女性の指示通に回転してヒトデマンとスターミーはスピードスターを打ち出す。
下からはいつの間に出てきたのだろうか。
トサキントとアズマオウが水面から顔を出し、バブルこうせんを放っていた。
シャボン玉に星が当たり、パチンと弾け飛ぶ。
きらきらと虹色の光が輝いた。
ヒトデマンとスターミーが描く軌跡にはウェルカムと書かれていた。

「まだ序の口よ。これからもっと凄いから」

盛大な拍手と大喝声の中、ブルーが誇らしげに笑った。

ジュゴンとパルシェンが冷凍ビームで水槽の表面を凍らせる。
ルージュラとムチュール、イノムーが氷の上を滑り、アイススケートを披露する。

「まあ…!」

プラチナが手を合わせて瞳を輝かす。

メノクラゲ、チョンチー、ホエルオー、ラプラスのバトルは観客を高ぶらせ、ギャラドス、ハクリュウ、ミロカロスは迫力満点の演舞を見せ、熱気を落ち着かせる様にミジュマル、ワニノコ、ゼニガメ、サニーゴ、マリルなどが可愛らしく遊ぶ姿に観客達の中で思わず微笑みが零れた。

サファイアを始めとする図鑑所有者は皆それぞれポケモン達が見せるショーに魅入っていた。

「サファイア」

ルビーは手を握ってサファイアの意識を自分に向けさせた。

「何ね?ルビー」

「明日あたり、二人っきりでデートしようよ」

耳元で囁くとサファイアは真っ赤になってはにかんだ。

「気が早かよ」

表情とあべこべのサファイアの言葉は照れ隠しの為のもの。
照れ隠しをするサファイアが愛しくてルビーはサファイアの頬にキスをした。
恋人達の睦言はポケモンショーに夢中になっている周りには全く聞こえていない。

「それでは最後にラブカス!お願い!」

ラブーッ。

オスとメスのラブカスが鳴くと空にハートが舞い散った。

「ご来場して下さった全てのお客様が愛で満たされますように…」

女性が祈るように終演を告げてショーは終了した。




水族館からの帰り道。
ブルー達と別れたルビーとサファイアはサファイアのトロピウスに乗って帰宅した。

「それじゃあまた明日」

「うん。寝坊しちゃいけんよ?」

サファイアの家の前でお別れをするとサファイアは笑って手を振った。

「大丈夫だよ。サファイアじゃないから」

「どげんこつ!」

ルビーのあまりにも失礼な物言いにサファイアが牙を剥いた。

「嘘。…明日、楽しみにしてる」

「……おやすみったい!」

妖艶に笑うルビーの笑顔に赤面したサファイアはそう言うと家の中へと逃げ帰った。
小さく息をついてルビーは自宅の玄関の扉を開けた。

明日の海中デートのプランを考えてくすりと微笑する。

ああ、明日が楽しみだなぁ。


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長らくお待たせ致しました!
申し訳ありません!

みんとさんリクエストの図鑑所有者ルサ中心のお話ですが、お題に添えているでしょうか…?
図鑑所有者で水族館に行くお話にさせて頂きましたが、表現力が乏しく分かりにくいような気もします。
書き直して欲しい箇所がありましたら、いつでもお申しつけ下さい。
書き直しを致しますので。

もしも気に入って下さるのなら幸いです^^
リクエストありがとうございました!
本当に遅くなってしまい、申し訳ありません。

皆で水族館!はリクエストして下さったみんとさんのみ、お持ち帰りOKです。


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