ああ、まったく面白いったら。
ブルーはきりりとした表情のしたで高陽する気持ちを抑えるのに必死であった。
ブルーの目の前に居るのは生徒会体験入会の希望者4名。
左からパール、ダイヤモンド、プラチナ、サファイアというらしい。
せっかちそうだが礼儀正しそうな金髪の少年、パール。
おっとりとしていて和やかな雰囲気を醸し出す少年、ダイヤモンド。
知性を持ち、凛とした佇まいの少女、プラチナ。
元気が取り柄と言えそうだが、それだけではない何かを持っている少女、サファイア。
一人一人個性があって楽しそうだ。
つまりはブルーの好みだともいえる。
「それじゃあ生徒会室に案内するわ。ついてきなさい」
自分の元に訪れたプラチナ達を生徒会室に案内しようとブルーは踵を返した。
「ブルー先輩いつ帰って来るのかしら」
書類を整理しながらクリスタルは誰ともなしに呟いた。
同じ生徒会室に居て書類整理の作業をしているシルバーがクリスタルを一瞥する。
「…そのうち帰ってくるんじゃないか」
入会希望者を引き連れて。
ぼそりとクリスタルが呟いた言葉に対して返答を返すと彼女は溜息を吐いた。
「本当はちゃんと生徒会室に居て欲しいんだけど…」
ついさっきだって入会希望者が訪れたのだ。
そういった時に会長であるブルーが居てくれなければ示しがつかない。
副会長であるグリーンが剣道部に赴いて、居ないのであればなおさらだ。
そうぼやけばシルバーは不思議そうな顔をして首を傾げた。
「さっきの入会希望者は気にしてなさそうだったが」
「そういう意味じゃなくて…」
がくりと肩を落とすクリスタルが説明をしようと口を開いた瞬間に生徒会室の扉が開いた。
「ただいまっ!体験入会希望者を連れて来たわ」
「姉さん、遅かったね」
帰ってきたブルーをシルバーが出迎える。
「そうかしら?でもちゃんと収穫はあったわよ。紹介するわね。左からパール、ダイヤモンド、プラチナ、サファイアよ」
順番に簡単に紹介してブルーはシルバーから視線をパール達に移した。
「で、こっちがシルバー。向こうに居るのがクリスタルよ」
「よろしくお願いします!」
「よろしく」
「よろしくね」
クリスタル達とパール達が挨拶を終えるとブルーはそれじゃあ生徒会の活動内容を教えるわと説明を始めた。
「簡単に説明すれば主な仕事内容は生徒に関する事全てよ。今回みたいなオリエンテーションとか学校で執り行われる行事は全て生徒会が管理するし、文化祭みたいな行事ではお金も発生するからそれに伴う雑務もアタシ達の仕事。今、クリスとシルバーが取り組んでる書類整理も勿論仕事。…ところでプラチナ。貴女は生徒会って何の為にあると思う?」
さらさらと良く回るその口で生徒会の仕事内容を説明したブルーはプラチナに質問をした。
突然白羽の矢がたったプラチナは驚いて瞬きをする。
そして少し俯くとしばし考え込んでから面を上げた。
自分の考えを纏めているのか、ゆっくりと口を開く。
「…つまりは生徒の為に動ける事があれば動く。それが生徒会といった解釈で宜しいのでしょうか?」
ブルーのかい摘まんだ説明を受けたプラチナは念のための確認をした。
生徒会とは生徒の為にある。
そう明言したプラチナの返答にブルーは満足そうに笑った。
「まあ、そんなところよ!」
大正解よ!と笑うとブルーはでもね…と指を一本立てた。
他に何かあるのだろうかと首を傾げるプラチナ達の反応ににやりと笑んで返すとブルーは悪戯を企む子供の様な表情をした。
「一つ、大事な事があるのよ。生徒会の権限についてよ。さっき生徒会は生徒の為にあるって言ったわよね?それはつまり生徒から要望があったらそれを叶えるって意味でもあるのよ。それからここで一番重要なのがその生徒会長であるのがこのアタシ、ブルーで。そのアタシが面白い事が大好きって事実の事。オリエンテーションでも言ったと思うけど、高校生活の三年間をつまらないものにはしたくないのよ。だから、アタシはこの権限を使って楽しい行事を沢山作るわ!」
自分の野望を語るブルーの後ろでクリスタルは頭を抱えた。
事実、合っている。
確かに合っているのだが、その説明は如何なものか。
だが細かい事を指摘すればブルーはそんな細かい事は気にしないの!と豪快に笑い飛ばすであろう事も想像出来るクリスタルは物言いたげな目でブルーを見つめるだけでそれを口に出す事はしなかった。
「で、ここで勧誘なんだけど。アタシと一緒にこの学校を楽しい行事で満たさない?勿論、有意義があってやりごたえのある行事にするつもりだし、生徒会に入れば退屈も後悔もさせないわ。…どう?」
あからさまな勧誘に少々驚いて目を見張る。
だがこの勧誘が魅力的に思えるのはそれをブルーが口にするからだろう。
他の人間が同じ言葉を口にしてもそれが魅力的なものとしてこの目には映らない。
ブルーだから信じられる。
彼女が言うから信じてみようと思える。
そう思わせる何かをブルーは持っていた。
「私は最初から生徒会に入る心積もりでこちらに参りました。ブルー生徒会長の言葉に惹かれたからです。貴女の今の言葉を聞いてもっと生徒会に入りたいと強く思いました。私に出来る事は少ないかもしれませんが、宜しくお願いします」
プラチナがぺこりと頭を下げた。
ブルーは喜色満面の顔でプラチナを迎え入れる。
「勿論よっ!入ってくれて嬉しいわっ!…他の三人はどうする?」
「俺達も生徒会に入ります!」
「これからよろしくお願いします〜」
気遣わしげにブルーが聞くと勢い良くパールが答えた。
のんびりとした口調でダイヤモンドが頭を下げる。
そうして六対の視線がサファイアに向けられた。
「あ…あたしは、…申し訳なかやけど遠慮させて貰うったい…」
気まずそうにサファイアは視線を下に向けてブルー達に謝った。
サファイアの気まずそうな表情に自分達に対して申し訳ないという感情以外の何かを感じとって、ブルーはサファイアに近付いて質問した。
「もしも違ったらごめんね。ねぇ、サファイア。貴女もしかして何か理由があるんじゃない?生徒会に入れない理由が」
ブルーにそう言われてサファイアは驚愕した。
驚きのあまりに瞠目し、口がぽっかりと空いてしまう。
急に失礼よね。
そう言って謝るブルーにサファイアは慌てて首を振った。
「そげんこつなか!ただ…驚いただけったい。いきなりほんまのこつ当てりよるから…」
「本当の事?」
首を傾げるブルーの声にはっとしたサファイアは一瞬、躊躇ってからぽつりと簡潔に説明した。
探しものばしとると。
ずっと前に約束したけん。
見つけなかといけんね。
「探しもの?」
「そげです。小さか頃に約束したったい。帰って来るのに随分時間がかかってしまっとうけど、それでも約束ば守る為に探さなきゃいけんね」
せやから放課後は探しものばあるけん。
生徒会や部活に入るこつは出来んと。
そう言って再度謝るサファイアを制して、ブルーは考え込む様に俯いた。
「ねぇ、確認なんだけど。サファイアは部活や生徒会に入りたいけど、探しものがあるから入れないのよね?」
「?そげです」
「じゃあ入りたい気持ちはあるのよね?」
ない、とは言い切れない。
楽しそうに部活見学を回る皆を見ていて、羨ましいと思わなかった訳ではないからだ。
けれど、サファイアにとって部活よりも約束の方が大事なのだ。
だから彼女は約束を選ぶ。
「入りたくなか訳なかです。ばってん、約束ば守る為に探しものばしたか」
「大丈夫よ。その約束守りながら部活動出来るから」
「え?」
あまりにも急な脈絡のないブルーの発言にサファイアは面食らってほうけた声を出した。
「サファイア、貴女サポーターにならない?」