――停泊して五日が経ったときのこと。平和だった島に悲劇が訪れる。
 鳥たちが騒ぎながら空に逃げる姿が目撃された。今まで見たことのない反応に視線を遺跡のある方向に向けた。

「鳥たちの様子ばおかしか」

 野性の力だろう。聴覚のよいサファイアが鳥たちの鳴き声を聞いて不安そうに呟いた。

「それに火薬の匂いがするね」
「かなりの量ったい。ルビーも分かるとよ?」

 無言で縦に首を振る。遺跡に向かおうとサファイアは短剣を手に取った。

「ボクも戦うよ。みんなを集めるから」
「すまんち」

 ルビーはばらけていた仲間たちを集め、武器を持ってサファイアを先頭に遺跡を目指した。奥に進むにつれて火薬の酷く焦げた匂いが鼻をつくようになる。不快な匂いに顔を歪めて進むと遺跡の前に侵入者が立っていた。侵入者の足元には傷ついた動物たちが弱々しく倒れていた。

「酷い…」

 サファイアが震えた声でいう。手を強く握りしめ必死に怒りを抑えている。

「相手は銃を持っている。ボクたちが奴らを追い返すから。サファイアは安全な場所へ」
「でも!」
「お願い」
「ルビー!」

 頭を撫でてサファイアをなだめ、会ったときのような優しい微笑みを向けた瞬間。凛々しい顔を侵入者に向け、自分を先頭にエメラルドや仲間たちがあとを追って立ち向かっていく。

「なんだ、貴様ら」
「名乗るほどではありません。なるべくなら穏便に。争いは避けたい」

 お互いが武器を構えて先頭体勢に入っていた。緊迫した空気に、素直に物陰に隠れているサファイアが息を飲む。

「降参しろー」
「それは無理な話だな」
「決裂ですね。エメラルド」
「じょんじょろり〜!」

 エメラルドが持っていた銃を侵入者たちに向けて放つ。それを合図に銃撃戦が始まった。
 華麗な長剣裁きで侵入者に切りかかるルビー、器用に何丁という銃で侵入者の急所を外すエメラルド。次々に侵入者は地に膝をつき、地面に倒れていく。

「すごかー」
「そうですね」
「え?」

 驚愕しているサファイアの背後に周り、腕を首に回してサファイアを持ち上げる侵入者の船長。にたりと醜い笑いを浮かべてルビーたちの前に現れた。
 人質にされたサファイアにルビーの瞳孔が開く。船長に向けて銃を向けたエメラルドは、ルビーの瞳を見てヤバッと声を漏らす。こうなったルビーは何をするか分からない。

「どうなるか分かるだろう?」
「ルビー」

 サファイアのこめかみに向けられた銃口。抵抗すれば引き金が引かれてしまう。なんて卑怯な奴だ。
 ルビーは妖艶な表情を浮かべて片膝を地面につけた。船長は汚く笑い、ルビーに銃口を向ける。

「どうやら貴方はボクの触れてはいけない部分に触れてしまったらしい」
「はあ?」

 銃口を向けていたはずのルビーの姿はなく、ルビーのいた場所に落ちる帽子と訪れる激痛に船長は叫び声を上げる。長剣の柄で銃を持つ手を叩き上げたのだ。叩き上げられた銃はエメラルドが撃ち抜き、使い物にならないただの鉄の塊になり、渇いた地に落ちた。
 激痛で苦しむ船長はサファイアを離し、傷ついた手を抑える。隙をついて船長から離れたサファイアを腕に収めた。長剣を握った右手で顎を殴り、ふらついて倒れてきたところに思い切り峯打ちを決めた。
 気絶をして倒れる船長。無事にサファイアを救い出すことに成功したルビーは強く抱きしめた。

「よかった。君が傷つかないで」

 たった五日。たった五日でルビーはサファイアに恋心を持ち、彼女を、彼女が守るこの島を守りたいという感情を持ったようだ。エメラルドは分かったらしく、呆れて銃をしまった。

「これは、ここに永住だな。いちゃいちゃするなー。船長のバーカ、船長変われアーホ」
「いちゃいちゃってなんね?」
「んー。簡単にいうと愛し合うってことかな」
「??…ばっ!あたしはあんたのことば愛しとうなか!」

 真っ赤な顔をしてルビーを引きはがそうとする。しかし、男に力で勝てるわけもなく。決して居心地が悪いわけではない腕の中で暴れた。
 こんな初めての感情にサファイアは戸惑いを隠せず、気丈に睨んで見せる。これが恋というものだと理解出来なかった。抵抗が面倒になり、おとなしく腕の中に収まることにした。
 人の温もりに触れるのはいつぶりだろう。侵入してくる熱に少し心地よさを感じてしまった。

「ボクはサファイアと、サファイアの守りたいものも、どっちも守るから」

 心地よい体温に浸っていたが我に返る。

「好きにしたらよか!」
「よろしくね、サファイア」
「あたしもルビーを守るったい。ここの暮らしば簡単じゃなかとよ」
「毎日が戦いだね。汚れるのは嫌だけど、楽しいじゃないか」

 海賊と少女の情熱的な恋は始まったばかり。

おまけ

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神山さんが管理する「初恋いちご」にてハロウィン企画が開催されていましたので、参加させて頂き、書いて頂いた物です。
素敵な海賊ものルサ小説、ありがとうございます!
内容も素敵ながらおまけも素敵なのですよ!
ルサらしいルサにじょんじょろり〜が可愛らしいエメラルド。
おまけのゴールドは格好良さが彼の前髪の様に爆発しています。
カプはお任せだなんて無茶言ってごめんなさい!
本当にありがとうございました!


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