父ちゃんの手伝いを終えて、秘密基地についてみればそこにはルビーが居た。
あたしに背を向けて、裁縫箱の中身を広げている様子を見ると、またポケモンの衣装でも作っているんだろう。

「ルビー?」

一応、声をかけてみる。

「……」

反応なし。
分かっていた事だけど、ルビーは一度集中し始めると周りの音が聞こえなくなる。
今回も例にもれなく同じ事で。

仕方なか。
心の中でそっと溜息をついて、あたしは秘密基地にあるクッションに腰を下ろした。
集中してるルビーの邪魔をするのは流石に気が引けて、テレビをつけたり、ちゃもと組み手をするのは自重する。

暇過ぎるったい…。

大きめなホエルオーのクッションを抱きしめて、ごろごろしているのにも飽きたあたしはちらりとルビーを見た。
相変わらず黙々と服を作る作業に集中していて、こちらには見向きもしない。

あたしがここに居ることすら気付いてないんやろか?

気をつけてはいるが、身じろぐ音や気配を消す事は出来てないのだ。
ちょっとくらい、気付いてくれたって良かやないの…。

面白くなくて、ルビーの背中によっかかる。
これだけ集中しているのだ。
多分、これくらい気付かない。

ルビーのばかちん。
早う気付け。

胸中で悪態をついて、あたしは瞳を閉じた。



「ー…よし。出来たっ!」

完成した服を広げてその全体像を眺めてボクは満足する。
流石ボク。
中々の出来栄えだ。
同じデザインのものを他人が作ってもこうはならないだろう。
ボクだから、出来るのだ。
早速POPO達に着せてみよう。

「POー…」

呼び掛けようとして口を閉じる。

「…サファイア?」

いつからここに居たのだろうか。
すやすやと寝息をたてて眠るサファイアがボクの後ろで横たわっている。

「…多分、信頼されてるって事なんだろうけど」

健やかな寝顔を眺めてルビーは困った様に苦笑した。

無防備過ぎるよ。
ボクだって、一応男なんだから。
まぁ、だからといってキミの泣き顔なんて見たくもないから、そんな野蛮な事はしないけどね。
さて、この無防備過ぎるお姫様を起こすとしますか。


サファイアおきてっ!


(ルビー?)

(おはよう。サファイア)



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