ぽちゃり。
足を湖に入れてイエローは浮かない顔をしていた。
湖ではレッドがはしゃいでニョロボン達と泳いでいる。
ーどうしてボクはあの時、レッドさんを遠くに感じてしまったのだろう。
レッドさんは近くに居て、確かにここに居るのに。
突然、旅に出るとか言い出すけれど必ず帰ってくるのに。
不安になったのは何故?
考えれば考える程にイエローの心に黒いもやが霞んでいく。
「ひゃあっ!?」
突然イエローの顔に水がかかった。
「なっ…?」
驚いて顔を上げれば、目の前にはレッドが居た。
「レッドさん…?」
「イエロー、顔がびしょびしょだな」
可笑しそうに笑うレッドにイエローは笑って言い返した。
「レッドさんがかけたんじゃないですか」
「…やっとちゃんと、笑ったな」
「え?」
イエローの隣に腰掛けてレッドはイエローに向き合う。
「何か悩み事でもあるのか?」
「え、どうしてですか?」
レッドに心の中を見透かされた様な気持ちになってイエローはぎくりとした。
「元気がない様に見えたから。…もし、本当に何か悩み事があるならオレとか、ブルーとかに相談してみるのもありだと思う」
あんまり一人で抱え込むなよ。
そう言ってレッドはイエローの頭を撫でた。
イエローは迷いながらもレッドを見上げて口を開いた。
「レッー…」
「あーっ!レッド先輩みっけ!!」
「は」
「え」
「ゴールド?」
「ゴールドさん?」
ブルー先輩、グリーン先輩、レッド先輩達みつけたっスよー!
茂みから爆発頭を覗かせたゴールドは後ろを振り返って大声で叫んだ。
一方、レッド達は突然現れたゴールドに驚き、話の展開についていけずに呆然としている。
「ちょっとレッド!勝手な行動をとらないでよね!皆で探し回ったじゃないの!」
ずかずかと歩いてレッドに詰め寄るとブルーは眦を吊り上げてレッドを睨んだ。
「あ、わりぃ」
「…まぁ、良いわ。無事に見付かった事だし」
踵を返してレッドから離れるとブルーは戻るわよとゴールド達に声をかけた。
そのブルーの行動を見てグリーンは目を見張り、レッドは怯えるように震え出した。
「え…、ちょ、待てよブルー!」
慌ててブルーを呼び止めるとブルーは怪訝そうに眉を潜めてレッドに振り返った。
「悪かった!オレが悪かったから!だから何を企んでいるのか言ってくれ!」
半ば懇願するかのように頼み込むレッドにすました顔で別に何もないわよとブルーが言うと、レッドは悲鳴を上げて地に膝をつけた。
レッドの肩に手を置いてグリーンとゴールドがそれぞれにレッドに声をかける。
「ご愁傷様」
「レッド先輩ドンマイっス」
二人から死刑宣告をされたレッドはグリーンとゴールドの腕を縋るように掴んだ。
「グリーン、頼む!助けてくれ!」
「断る」
「ゴールド、一緒に…」
「嫌っス。レッド先輩一人で頑張って下さい」
首を横に振りレッドを拒絶するグリーンとゴールド。
二人の冷たい反応にレッドは悲鳴を上げた。
「グリーン、親友だろおぉっ!?」
「こんな場面で親友呼ばわりされたくないな」
「ゴールド、」
「レッド先輩、オレはレッド先輩の事尊敬してるっス。でも、オレも我が身が可愛いんで…」
くうっと涙を流し、レッド先輩の御冥福を祈ってます!と捨て台詞のような言葉を投げてゴールドはレッドから逃げた。
「薄情者ーっ!」
半泣きで叫ぶレッドや厄介事はごめんだといった様子のグリーン、ゴールドのやり取りを一部始終見ていたブルーは思わずツッコミをいれた。
「あんた達アタシに対して失礼じゃない?」
その呟きを耳にしたゴールドとレッドはその場で土下座でもするのかという勢いでブルーに頭を下げた。
「「すいませんでしたっ!!」」
「姉さん」
「どうしたの?シルバー」
ゴールドとレッドの謝罪を華麗にスルーしたブルーはシルバーに向き合った。
「あっちに丁度良い洞窟があるんだけど」
シルバーが指を差して示した方向にある洞窟を見てブルーは確かに丁度良さそうねと頷いた。
「ゴールドとレッドはいつまでそこで頭下げてんのよ。洞窟見に行くんだからさっさと動きなさい」
呆れた目でゴールドとレッドを一瞥するとブルーはシルバーと一緒に件の洞窟へと向かって行った。
クリスタルとイエロー、グリーンは先に行ってレッド達を待っているらしく洞窟の入口付近に立っている。
「……」
ゴールドとレッドは顔を見合わせて一分間沈黙すると慌てて先に行ったブルー達を追いかけた。