【one winter day SS】


冬の朝の凛とした空気を掻き分ける様に、馬を走らせた。
朝駆けと訓練の後は、なんとも言えぬ清々しさがあるが、壁の外で迎える朝には敵わないだろう。だが、壁の外ではこんな風に悠長にしている訳にもいかねぇ。

シャワー浴びて飯でも食うか……

厩舎から自室を目指し歩き出すと、走って来る足音が聞こえた。

「リヴァイ兵長! おはようございます!」

背後からの声に振り返れば、息を切らせたナマエが「これ、どうぞ」と……包みを俺に向かって差し出した。
咄嗟に受け取ったが、意味がわからねぇ。

「何だ……?」
「い、要らなければ……捨ててくださって結構ですっ!」
「だから……っ、オイっ!」

これは何だと訊く前に、ナマエは一礼して走り去った。

普段ならば朝から不愉快だと思う場面だろうが、俺は部屋へと急いだ。

香油か……香りも悪くねぇ……

シャワーを浴び、珍しく緊張しながら包みを開けたが、口角が上がった。

部屋に戻ると、ドアの前に幾つかの包みが置いてあるのを見て、今日が何の日か理解した。そして、朝一番に手渡された物、それがナマエからである事にも気分が上向いた。

これは、そういう意味と思って良いのか?

だが、こんな日だからという事で渡されたという確信は無い。しかし、密かに想う相手からとあっては、期待しない方がおかしいだろう。

手に取り、スッと髪に指を通して部屋を出た。



やはり、慣れねぇ事はするもんじゃねぇかと、団長室を出た俺は足早に執務室を目指した。
擦れ違う兵士が皆、俺を見ている気がして落ち着かねぇ。

それでも、仕事が終わるまでは風呂にも入れねぇ……と、諦めて書類を書いた。
そろそろ終業の鐘がなるだろう頃、落ち着かねぇ気分から解放されると思ったのだが、終業の鐘よりも先に俺の胸が早鐘を打った。

「失礼します」

書類を持って来たナマエに、俺を見て目を丸くした姿に……どうして良いかわからなくなった。

「あっ……この香り……」
「あぁ、折角だから使ってみたが、悪くねぇ……」
「好きなんです……」

好き……?

「その香り……」
「なんだ、香りか」
「えっ?」

俺の事かと思ったじゃねぇか……

咄嗟に失敗したと顔を背けたが、ナマエが一歩近寄った。

「私の好きな香りが大好きな兵長からするなんて、幸せです」
「そりゃ……」
「今日は、バレンタインデーですから」

そういう意味で、良いのか?

勘違いじゃ……ねぇんだな?

「なら、もっと近くに来い」
「は、はい」

近寄ったナマエを捕まえて、「どうせなら、こっちも欲しいんだが」と囁けば、耳まで赤くしたナマエは「どうぞ」と答えた。

End


素敵な一場面から、私の妄想はこの様に広がりました。
ぴの様、私のわがままにお応えいただいて、ありがとうございましたm(__)m

Happy valentine's day

幸せな時間でありますように。



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