Valentine Day [ 8/14 ]

一人、泣きながら家まで走った。
「ただいま」も言わずに自分の部屋へ行き、ひたすら泣いた。



「一人で思い上がってただけや…恥ずかしい…」


平次はただ、ファンの子から逃げたかっただけ。



 * * *




夜、友達から電話がかかってきた。


「和葉?こんな遅くに服部くんとデートなんてええやないの〜」


「え…アタシ家に居るけど…」

「え?あ…じゃ、じゃあ見間違いかも!ごめんね、気にしないで!」


ツーツーと電話が切れたあと、頭を過ぎるのは今日の女の子。


(昨日渡してたのって…チョコ…やったんかな)


「チョコ…1回でもちゃんと平次に渡せば良かった…」



眠れないのを無理に寝ようと、アタシはぎゅっと目をつぶる。

いつ寝ることができたのかは分からない。
気づいたら、もう朝だった。





「…いってきます」

ラッピングを綺麗にして頑張って作ったチョコもアタシには必要のないもの。

昨日のうちに鞄から出して、机の上に置いておいた。
それも今日起きてみたら、ない。

お父ちゃんが間違って食べたのかもしれない。



お父ちゃんの分はちゃんと作ってあったけど…でも、それでもいい。

アタシは朝食もあまりとらずにそのまま学校へと行った。



 * * *



「服部先輩に渡しておいてくれませんか?」

「服部くんに渡して!」

「先輩に渡して下さい!」



アタシは毎年のように平次のファンの子からチョコを渡される。
「堂々と平次に渡せばいいんとちゃうん?」なんて心で思っても、そんなこと言えない。

それが一番出来ていないのはアタシやから。



いつもこっそり隠れて…ファンの子のチョコと一緒に渡しているから。


今年も、女の子から渡された大量のチョコを両手に持つ。

こうしている自分がどんなに惨めか…
そんなこと、平次に分かってもらおうなんて思ってない。


でも、アタシにチョコを渡すのはやめて欲しい…
みんなのこと、言える立場ちゃうけど…



「…平次には可愛らしい彼女さんが居るんよ…」





2012/02/15



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