2011/11/11 『ポッキーの日』 [ 12/14 ]

「青子!!青子っ!!」


新一の家を出て青子のことを探している俺。




もう、一時間近くはこうして青子のことを探しているだろう。


あたりも夕焼けに染まり始めている。




「…もう帰っちまったのかな。」



そう思って諦めかけた時
今日、青子が着ていた水色のワンピースが目に入った。


俺は腕を掴み青子の名前を呼ぶ。



「青子!!どこに行ってたんだ―…」


「あの…どちら様で?」



見覚えのない顔に、俺はすぐさま腕を掴んでいた手を離した。



「…すいません。人…違いでした。」



きっともう…青子は家に帰ったんだろう。



そう思って俺も家へと帰ることにした。



あんなに楽しみにしていた日だったのに…

青子と喧嘩してしまうなんて考えもしなかった。




確かにみんなの前でポッキーゲームなんて考えた俺が悪かったかもしれないけど…



あんなににも青子に拒否されて悲しかった。



「俺だって…へこむんだよ。」



足取りも重く、自分の家へと着いたとき…



玄関に青子の姿があった。

「…青子?」


俺が呼ぶと青子は気づいたようで俺の方を見た。



 * * *



思い切って走ってきちゃったけど、快斗…怒ってないかな?



青子は快斗が家に帰ってくるのを待ちながら玄関の前で考えていた。



「…快斗のこと…好きなのにな…」



お子様な青子じゃ駄目だって考えると、どうしても素直になれない。


それに、ポッキーゲームなんて快斗が困るだけだもん。




あの時だって…




―「…やればいいんだろ?ポッキーゲーム。」



すごく困ったような顔してた…




快斗だって男の子だし、きっと好きな人くらいいるもんね。

そうだよね。


青子にこうやって構ってくれるのは幼馴染みだからだよ。


快斗の好きな人に勘違いされちゃったら悲しむのは快斗だもんね。

青子…快斗の悲しむ顔はみたくないよ…



「…青子?」



声のするほうをみると、快斗の姿があった。



 * * *



「…ごめんね。」



玄関の前にいる青子は俺の目をみてそう言った。


「…なんで青子が謝るんだよ。」


そう言ってから青子の手の赤さに気づいた。



「…ずっと…待ってたのか?」



青子の手は赤くなっている。

きっと寒さのせいだろう。


「…うん。」


青子は頷いたけど、すぐに赤くなった手を後ろに隠した。



「家…寄ってけよ。」

「…うん。」


青子を家に寄らせて温かいココアを入れてやった。



「ありがとう。」


お互いに何を話すでもなく、沈黙が流れる。




「快斗…?」


最初に沈黙を破ったのは青子だった。



 * * *



―工藤家にて―



「悪いことしてもうたかな?」


「なに服部が気にしてんだよ。大丈夫だよ。あれは照れだって。」


「…さよか?」


「平次、気にしすぎやよ。いつもアタシらがドッキリにかけられてんねんから、たまには黒羽くんも痛い目みたらええんとちゃう?」


「そうね。青子ちゃんも快斗くんも両思いなんだから、このくらいしても大丈夫よ。」



俺の心配をよそに、他の三人は笑いながらこわいことを言っている。




俺もドッキリにかけられっぱなしやったから、今回のことは自業自得やということにしておこう。



「ポッキーゲームくらいやればいいのにな?蘭。」


「…でも、恥ずかしいのは恥ずかしいわよ。」


「じゃ、向こう行ってポッキーゲームするか?」


「…べ、別にいいけど。」


工藤は去り際に俺の方を向いて笑いよった。



「…和葉?」

「アタシはやらへんで。」

「なっ…俺なにも言うてへんやろ!」


「俺もポッキーゲームしたいって言うんやったんと違うのん?」



「…。」



俺…和葉には勝たれへんわ。



 * * *



「快斗…今日はごめんね。」



青子はソファーに座りながら俺に言った。



「快斗にも好きな人くらいいるよね?」


(…へ?)



「それなのに青子とポッキーゲームなんて…」



(…青子、なに言ってんだ?)


「青子のこと…嫌いになっちゃった?」



(青子が元気なかったのはそれが原因か…)


「なに気ぃつかってんだよ!!お子ちゃま青子らしくねぇ。お子ちゃまはお子ちゃまらしくしてればいいんだよ。」



青子の頭をぽんっと軽く叩いた。




「急に静かになっちまうほうが余計に心配になるっつの…」(ぼそっ)



「え?」


「なっ、なんでもねぇよ!!それに、俺は青子のこと嫌いになったりしねぇよ。」


「快斗…///」


「青子は俺のこと、嫌いになっちまったのか?」



「そんなことない!青子は快斗のこと好きだよ!!」



元気一杯に笑う青子を見て、俺も笑みがこぼれた。




「それに―…俺くらいしか、お子ちゃま青子の面倒をみてくれるやつなんていないだろうからさ。」


「なにそれ〜!!快斗、ひどいっ!!」


「ほんとのことだろ〜お子ちゃま青子〜!!」


「も〜ぉ!!」




「ポッキー食うか?」

「あるの?」

「新一の家から貰ってきた!」


本当は新一が家を出るときに渡しくれたんだけど。


「食べる〜!!」


「さすがお子ちゃま。お菓子で機嫌が直るとは(笑」


「快斗〜っ!!」




青子が言う『好き』は、俺の『好き』と違うかもしれないけど


いつか、その『好き』が…俺と同じ『好き』になったらいいなって思う。




それまでは幼馴染みでいい。


青子はそうやって笑っててくれ。




END


2011/11/17

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