2011/11/11 『ポッキーの日』 [ 13/14 ]



ピンポーン―…

チャイムの音が鳴る。


「おっ!服部達が来たんじゃねぇか?」

快斗は蘭よりも早く玄関へと走っていく。

「邪魔すんで〜…って黒羽?な、なんでお前が出迎えるんや?ここ、工藤ん家やろ。」


「まぁまぁ、いいじゃん!!あがれよ。」

「お前に言われのうても上がるつもりじゃ。」

「和葉ちゃん、久しぶり〜!!やっぱり和葉ちゃんは可愛―…」


バコッ―!!

服部に殴られた快斗は頭を抑えて目にはうっすらと涙を浮かべている。

「痛ぇ…殴らなくてもいいじゃねぇか!」

「そんな歯のうく台詞よぉ言えるな。そんなこと言っとったら和葉がつけあがるっちゅーねん!!それに、言わんでも俺は…嫌っちゅーほど和葉んこと知っとる。」

「…アホ。」

そんなやり取りを俺は端のほうで見ていたのだけれど、しびれを切らして俺は声をかけた。


「…その辺でいいか?」

「く、工藤?ひ、久しぶりやなぁ!!」

明らかに慌てている服部の後ろには、頬を赤く染めた和葉ちゃん。

「平次…工藤くんも言うてはるし、行こ?」

「せやな。」



「ほら、上がれよ。」

俺は蘭に言って服部と快斗、青子ちゃんの三人をリビングのほうへと向かわせた。

和葉ちゃんは服部の脱いだ靴と自分の靴をそろえている。
こんな所にまで感心させられる。

(服部には勿体ねぇな…)


まぁ、心の中でそう思ってしまったことは服部本人には言わないでおこう。


「和葉ちゃん。服部からは聞いてるか?」

「うん、聞いたで。黒羽くんと青子ちゃんのことやろ?
最初は驚いたけど、楽しそうやね。アタシも平次も楽しみにして来てんよ。」

和葉ちゃんは楽しそうに話す。

「じゃあ、宜しくね。和葉ちゃん。」

「任せといて!」

和葉ちゃんはそう言うと、リビングのほうへと向かって行った。


蘭が作ってくれた手料理がテーブルに並んでいる。


「おぉ〜美味そう!!」

快斗は既に箸を持っていて、早く食べたいようだ…

「…食えよ。」


俺が許可すると快斗は勢いよく食べ始めた。


「ん〜美味い!!」

「あっ、快斗!!」

「なんだ?」

「口にケチャップついてるよ?」

「あ、本当だ。さんきゅ。」


そんな会話や…


「平次!!もっとゆっくり食べてぇや!アタシ恥ずかしい…」

「なんでお前が恥ずかしいねん。俺は今、腹が減っとるから食う。それだけのことやろ。」


…と、そんな会話を聞いて俺と蘭は顔を見合わせて笑った。


「ねぇ、新一?」

「なんだ?」

「みんな仲がいいっていいわよね。」

「あぁ。そうだな。」



 * * *


「はぁ〜腹一杯だぁ!!もう食えない!!」

蘭ちゃんの手料理、美味くて満腹になるまで食っちまったよ。

それにしても新一のやつ、いつになったらポッキーゲーム始めるんだ?
そろそろ始めねえと服部のやつら帰っちまうんじゃ…


「快斗…もう腹一杯か?ポッキーの日だからポッキー用意してたんだけど。」


お!ようやくきたか!!


「それ、別腹。ポッキー食う!!みんなも食うだろ?」



 * * *


「はぁ〜腹一杯だぁ!!もう食えない!!」

俺も結構食いすぎたな。
せやけど工藤のやつ、いつになったら始めんのやろ?


「快斗…もう腹一杯か?ポッキーの日だからポッキー用意してたんだけど。」


工藤、ようやくか。
黒羽の慌てた顔、早う見たいな。


「それ、別腹。ポッキー食う!!みんなも食うだろ?」


黒羽のやつも自分がはめられるとも知らんで…ノリノリやな。

俺も知らんふりしとかな。

「俺も食うわ。な?和葉。」

「うんっ!アタシも持って来てんねんで?」

和葉はバッグからポッキーを取り出した。


 * * *


「よし!!食うぞ…と言いたいとこだけど、その前に。」

「なんや?」

「どうしたの?」


「ゲームしないか?王様ゲーム!」

「いやらしいやっちゃなぁ。工藤、そんなんどこで覚えてきてん?」

「バーロー!そんなんじゃねぇよ。」


「新一、私はいいよ?」

蘭の助けがあって、和葉ちゃんも服部も賛成。

勿論、ドッキリを仕掛ける側だと思っている快斗は
待ってましたかというように青子ちゃんと一緒に賛成した。



「じゃあ、ルールな。簡単にしたから分かりやすいと思うんだけど。
一人ずつクジを引いてもらって、赤い印がついているのが王様。
あとはなにも書いてないから、命令は名指しで!!」

「簡単やな。」

「青子も分かった!!」

「うん、アタシも。」


「よし、じゃあこれを引いてくれ。」

蘭にクジを持ってもらって一人ずつクジを引いてもらった。

俺は予定通りに指に赤い塗料を塗っておいて引くときにクジにつけた。




「『「王様…だ〜れだ?」』」




まぁ…最初から決まってたけど、王様は俺。


「なんや、俺やないんかい。」

「青子が王様がよかったな〜」

「女の子なんやから、アタシ達の場合は王様やなくて「女王様」やよ。」


「よし、じゃあ王様が命令します。」


「なんですか〜?」

快斗は余裕の表情。
むしろ楽しんでいる。


―『では、快斗と青子ちゃん。ポッキーゲームしてください。』


俺の命令を聞くまでは―。


 * * *



「…え?」

俺は耳を疑った。

服部と和葉ちゃんじゃ……まてよ?もしかして、新一のやつ…

服部と手を組んで俺を逆ドッキリに?


「ほら。ポッキーゲームが嫌だったら、この中のものでもいいけど?」

そう言って渡されたのは俺が用意した罰ゲームの紙にそっくり…だけど
内容は俺仕様…

きっと工藤が用意したもの。




快斗

1、自分の正体を青子ちゃんにバラす
2、青子ちゃんに告白
3、魚を食う




三番は嫌がらせとしか思えないが、一つ目は絶対にムリ。
二つ目もムリにきまってる。



 * * *



「ポッキーゲームが嫌だったらこれでもいいって。」

蘭ちゃんから渡されたのは、小さな紙。


青子ちゃん

1、快斗に告白
2、一週間、快斗と手を繋いで登校
3、快斗のほっぺにキス




((絶対に…ムリ!!))


そう思った時…



「…やればいいんだろ?ポッキーゲーム。」



「えっ?ちょっと…快斗っ?」

「ん。」

快斗はポッキーをくわえて青子の顔を見た。
た…食べろってこと?


「あ、青子は嫌っ!!みんな見てるし…恥ずかしいもん!!」


なんだか分からないけど、涙が出た。

蘭ちゃんも和葉ちゃんも、付き合っているし…両思い。

青子は違うもん…

快斗は『青子みたいなのはお子様だ』とか言うし…
きっと快斗が好きなのは、もっと大人っぽい人だから…

だから…

「こんなこと出来ないっ!!」

「あっ…青子?」


快斗が青子のこと呼んでたけど…工藤くんの家から
逃げるかのように走り去った。


 * * *


「…あっ、青子?」


青子が走り去ったあと、工藤宅で俺は四人から睨まれていた。


「…な、なに?」


「なに?じゃないわよ!!なんで青子ちゃんのこと追いかけないの?早く!!」

「青子ちゃんのこと早う追いかけたって!!」


蘭ちゃんと和葉ちゃんに言われて俺は工藤宅をあとにした。



2011/11/13

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