Trick or Treat !! 2013 [ 1/14 ]

「Trick or Treat!!」

「なんやねん、いきなり」

んふふ、と笑顔で俺を見下ろして来たのは俺の幼馴染み。
貴重な昼休み、俺は屋上での昼寝を邪魔された。
嬉しそうにしっぽ揺らして何があったっちゅうねん。

「お菓子ちょうだい?」

手のひらを俺に向けて早く早くとお菓子をねだる。

「なんや腹でも減ったんか?」
「ちゃうよ〜!」

ぷくっと頬を膨らませて怒る仕草をする。
ころころと表情が変わって、見ていて飽きひんのがコイツのええとこや。

「ほんなら何で菓子なんか…」

しゃあない、とポケットの中に何か入っていないかごそごそと探る。
手のひらに小さく何かが当たった。

「これでええか」

手には小さなチョコレート。
何でこないな甘いものがポケットに入っとるのかは俺自身分からんかったが今はまぁ、別にそんなことどうでもええ。

それを和葉へと渡す。


「…あ、うん。おおきに」

菓子が欲しいと言って来たのはコイツやのに、なんだか浮かない顔をしよる。


「なんや、欲しくないんか?」

「…平次なら、持ってへんと思ったのに」


小さな声で言ったことを俺は聞き逃さなかった。



「は?どういうことや」

「…平次やったらお菓子なんか持ってへんやろなぁって」

「持ってないほうが良かったんか?」

「…いたずら、出来るなぁ思うて」


…なんや、コイツ。可愛ええやんけ。

俺に悪戯したくて菓子なんぞ貰いにくるフリしよったのか。


ちょっと勿体無いことしてもうたな。
悪戯…。和葉が言う、悪戯ってなんやったんやろ。

そんなことを考えていると、和葉は「お菓子おおきに、ほなアタシ行くね」と行ってしまった。


(Trick or Treat…)

「あぁ、今日はハロウィンか」


ようやく思い出した俺は、和葉が居るであろう教室へと向かった。





「Trick or Treat!」
「はい、お菓子」
「和葉おおきに〜」
「わたしも〜!」
「はいはい、みんなの分もあるって」
「やった!和葉は用意ええよね」

次々とお菓子を配って行く和葉。
女子達が和葉の周りに居るから、邪魔はせんとこうと思う。
それに、俺も女子達に見つかったら後々面倒やしな。

菓子渡されても、甘いもん苦手やし。
菓子持ってへんから悪戯されるかもしれへんし。
絶対嫌や。悪戯なんぞ、誰が好き好んでされるねんアホ。

もし誰か、言うなら…和葉やろな。
アイツやったらまぁ、許したってもええかと不思議と思う。


「あ、お菓子終わってもうた〜」
「え〜?」
「教室にあるんよ、とってくるな?」

和葉が女子から離れる。

今や。そう思うと同時に、悪い考えが頭を過ぎる。
笑いを堪えきれず上がる口角をそのまま、俺は和葉の腕を掴んだ。

「和葉、」
「あ、平次。どうしたのん?」
「ええからまぁ、こっち来い」
「え?」

和葉の腕を引っ張ったまま人が居らん廊下へと連れてきた。

「なんよ、何か用あるんやったら向こうでもええやんか」
「ん?俺は別に人の居るとこでもええけど、な?」

「せやったら…」
「Trick or Treat?」

「え?」

「菓子くれるん?それとも…俺に悪戯されるか?」


「今、ちょうどお菓子切らしててん!」
「ほ〜?」
「せ、せやけど教室戻ればお菓子あるし…!」
「ほんで?」
「せやからちょっと待って?」

「待てへん、」


「んっ…!」



ちゅ、と音を立てて悪戯ともお菓子ともとれる褒美をもらった。


「甘いわ」

「なん…っ///」


なんや、もう食べたんか。

さっき俺があげたチョコレート。



「ま、今日はこのへんで許したるわ」


昼寝の邪魔も、悪戯もな。


2013/10/31

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