始業式 [ 5/14 ]
春。
桜が満開に咲いて、お花見して。 平次と一緒に出かける機会も増えていって。
大好きな春。
…でも、この日だけは嫌い。
おそるおそる張り出された紙を見て、自分のクラスを確認する。 遠山和葉 六組。
隣で同じくクラスを確認している幼馴染みに聞いてみる。
「何組?」
「俺は三組やで。お前、どこのクラスやった?」
「…六組。」
小学校の頃からクラス替えが嫌いだった。
他の人と新しく友達になれるのは嬉しいし、それはいいことやと思う。 でも、平次と離れてしまうのが嫌やったから。
「また同じクラスかいな。あ〜、うるさい奴と一緒になってしもうたなぁ」 「アタシかて同じクラスになりたくてなったんやないで!」
そんな喧嘩をしつつ、奇跡的に小学校一年生から高校二年までずっと一緒のクラスやったのに。 …離れてしまった。
確かにいつかはそんなこともあるやろうって思ってたけど。 実際そうなるとすごく寂しい。
「さよか。ほな、またな」
平次は男友達と一緒にクラスへと向かってしまった。
* * *
ぼーっとしていたら、いつの間にか始業式は終わっていた。
帰りのホームルームも終わり、みんな帰って行く。 それでもアタシは何をする気にもなれなくて、一人放課後の教室で残っていた。
校庭で部活が始まっている。
「今日…平次、部活やったっけ?」
正直そんなこと忘れてしまった。
平次と一緒のクラスじゃないことが、こんなにもアタシに影響するなんて きっと平次が知ったら笑うと思う。
「居るんやったら、早う来いや」
教室のドアが開いて、平次が入って来た。
「…男友達と一緒に帰ったんとちゃうかったん?」
「お前こそ、女友達と一緒に帰らんかったんか?」
「―…。」
「全然来ぉへんし、帰ってしもたんかと思ってたんやけど。居るんなら早う来いや」
「平次帰ってる思ってたんやもん」
「俺は、お前が来る思って待ってたんや。」
「アタシのこと?」
「悪いか?」
ちょっと怒ってるのか平次はアタシから顔をそらしてそう言った。
「何ぼーっとしてんねん、帰んで?」
「あ、うん」
平次とクラスが離れてしまったのは寂しいけれど… でも、大丈夫みたい。
「しゃーないなぁ。俺が迎えに来たるから、帰りは教室で大人しゅう待っとけ」
「うんっ!分かった」
心はいつも繋がってるから。
2012/04/10
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