White day [ 6/14 ]



―「アタシ、平次のこと好き」






勇気を振り絞ってチョコを渡して告白してから一ヶ月。

アタシの生活はなんも変わらへんかった。





あんなこと勢いで言ってしまったし、学校で平次に会うたら目も合わせられへん…


そう思っていたはずなのに、そんなこと心配する必要は全くなかった。
平次は事件の捜査で学校に来てへんのや。



それがいいことなのか、悪いことなのかはアタシには分からへん。


ただ…告白の返事は貰ってないということ。




平次に「食ってんのはお前のチョコだけや」なんて言われて嬉しくなって
チョコ渡して、そのまま告白して…


でも、平次は返事をくれなかった。


平次が何かをアタシに言ってくれようとしたのは分かった。
せやけど平次の携帯が鳴って、「事件やから早う来て欲しい」って言われて…

平次はアタシを置いて行ってしまった。



確かに平次は「事件」って言葉を聞くと、頭の中は事件のことばっかりになってまうのは知ってるし、ちゃんと分かってたつもりやったけど…




「…なんか連絡くれてもええとちゃうのん?」



この一ヶ月間、何の連絡もなし。



「告白のことなんか忘れてるかも…」


普通の子やったらこんな心配したことも、これからする必要もないと思うけど
平次やったらこれがありえる話やからこわいんよ。



(あんなに頑張って告白したのに…忘れられてたら、アタシ立ち直れへんかも…)




「和葉、バレンタインに告白出来たんやって?良かったなぁ!」

親しい友達が、どこから聞いた情報なんかは分からないけどそう言ってくれた。
アタシは嬉しくて、頬が緩む。


「…う、うん///」



「服部くんもようやく和葉の可愛さに気づいたんやなぁ〜」なんて言うから、アタシは「まだ返事も聞いてへんし、そんなんとちゃうよ」って言った。


すると、「えぇ〜?!」って大きな声を出して驚かれた。


「せやって平次、事件のほうに行ってまうんやもん…」

「そんなのありえへん!!ちょっと和葉、こっち来て!」


そう言って席を立った友達に手を引かれ、連れてこられたのは学校の掲示物が貼られているボードの前。

なんだか人がたくさん居る。



「和葉、これ読んで!」

指差された先には一枚の紙。
大スクープと書いてある。



「服部平次!遠山和葉とようやく幼馴染みから恋人へ…えぇ〜っ?!何なん、これ!!」


「わたしもこれ見てようやく付き合ったんだなって思うてたんよ。」





「なんや、大勢で集まりよって。なんか面白いことでもあったんか?俺にも見せてみぃ。」


後ろから聞こえて来たのは事件でいないはずの平次の声。
手がのびてきて、ボードに貼ってあった紙をはがす。


「…遠山和葉がバレンタインに告白、服部平次はそのチョコを受け取り…」



内容を読んで、平次は黙る。


一気にその場の空気が凍りついた。


「…誰や、こんなしょうもないこと書きよった奴。」


読んでいた紙を片手で握りつぶし、発した声。
ものすごく…低い。


(平次めっちゃ怒ってる…)


「へい…じ、事件やったんとちゃうの…?」

話を逸らすために、話しかけるとアタシに対しては怒っていないようで少しだけ声が優しくなる。


「…終わった」

「そ…うなんや」


「それだけか?」

「え?あ…お、おかえり」

「…おう」


それでもまだ怒っている平次は、集まっている人達全員を睨みつけてからアタシの腕を引っ張って教室へと入って行った。



教室に入ると、誰も居なくて二人きり。
クラスのみんなも他のクラスの人も平次に睨まれたから固まってるのかも。


「和葉…お前、なんでそんなに辛そうな顔やねん」

「だって…」


アタシが黙ると平次はアタシの頭をぽんと軽く叩き、言った。


「あんな記事書いた奴、俺がすぐにでも見つけてしばいたるさかい安心…「そうやないよ。」

「違うんか?」

否定されたことに少し驚いたようで、平次の目は真ん丸やった。



「別にあの記事のことは…嫌やったけど、どうせいつかは知られることやし…ええんよ。」


そう言ったら、また同じ質問が返ってきた。


「そんなら何でそんなに辛そうな顔しててんのや」



「平次…帰って来へんのやもん…」

「俺…か?」

「…うん」

「それは…スマン」


「…うん」



アタシは平次に申し訳なくて、顔を見れへんかった。


「まだ何かあんのか?」


覗き込んでくる平次を避けてしまう。


「…ごめんな、平次」

「どうしてお前が謝らなアカンねん」

「…アタシがあんなこと言わなかったら、あんな記事書かれることもなかったんよ。」




「ええわ、そんなん。気にしてへんし」

「…。」

「せやからお前も気にすんな。」

「…うん。」


「それより明日、お前に話があんねん。いつもの待ち合わせの場所に来てくれるか?」

「話…?」

「話や、話。」

「今じゃ…駄目なん?」

「ええから、来い!」


そう言われてアタシは頷いた。

「…うん、分かった」




 * * *



自分から呼び出しておいて、今日もまた平次は遅刻してきた。


「スマン、遅れたわ。」

「大丈夫や。こう見えて待つのは慣れてるから」


ちょっと嫌味っぽく言ったら、平次は困ったようにスマンって謝った。



「ホワイトデーやろ?これ、お返し。」

「え?」


平次が居なくて、そんなこと考えもしてへんかった。

今日、ホワイトデーなんや。



「ありがとう、平次」

アタシは平次から小さな箱を貰う。



平次がこんなことしてくれると思ってへんかった。
そう思って平次を見ると、急に真剣な顔をしている。


「ずっと変な気持ちやってん。早う帰ってはっきりさせたろ思ってたんにお前のことばっか考えてもうて…思ったより事件解決すんの遅れてやな…」


平次の口から出てきた言葉は、意外だった。


「アタシのこと…?」

「事件の捜査の時も頭からあの言葉が離れんくて…」



―「アタシ、平次のこと好き」


この言葉のことなんやろうか。




「ずっと…考えててん。あの言葉の意味…」


そう言ってアタシの目をじっと見つめる。


「…自惚れてもええんよな?バレンタインの時のあれって…」


平次の目はアタシをずっと見つめる。
そう見つめられるとアタシも恥ずかしい…




「付き合うとか、よう分からへんけど…俺も、和葉が好きや。」



「…今、なんて?」



耳を疑ってしまった。
そんなこと、平次の口から聞けると思っていなかったから。





「何回も言わすな…アホ」


平次が…照れてる?

さっきまでアタシの目をじっと見ていた平次は下を向いていて顔が見えない。



「…和葉が好きや」

「…これ、夢とちゃうの?」

「夢な訳あるかい。」



不思議と涙が溢れてきた。

「…っ………」


急に黙って、平次はアタシの方を向いたのだろう。
頬に伝う涙を見て、平次は動揺しているみたいやった。


「おまっ…なんで泣くねん!」

「だって…嬉しくて―…っ…」


涙は止まる気配がなく、自分で止めようとしても余計に涙が出てきてしまう。
嬉し涙流すとは思わなかった。




「はぁ〜…」


呆れと優しさが半分ずつ位含まれた溜息が聞こえたかと思うと
アタシは平次の腕に抱きしめられた。




「ホンマ…泣き虫やなぁ」






END


2012/03/14



あとがき

さて…平次が和葉ちゃんへプレゼントした
「箱の中身はなんだろなっ♪」

知っている人は知っている…うさぎさんですよ(笑

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