「山田さ〜ん」




あれ、ここにもいない。




「山田さん、どこにいるの〜?」




フロアでもなく、倉庫でもない……と。
食料の確認をしている訳でもないようだ。



いつもフラフラ〜っとしている彼女だから、きっとどこかにいると思って探していたのだけれど。




……全然、見つからない。





 * * *





「相馬さ〜ん?」



いない。……どこにも、いない。


最初にキッチンへ遊びに来たら、そこに相馬さんはいなくて。
食料補充でもしているのかと倉庫を見に行ったけれどそこにもいない。



「相馬さん……」



いつもキッチンにいるのに、どうしてなのか会いたいと思った時には会えなくて。
もう一度キッチンに戻ってみたけれど相馬さんの姿は無かった。





 * * *





(う〜ん、お店のほうも混んできたみたいだし、仕方ない……そろそろキッチンに戻ろうか)




俺が諦めてキッチンへと戻ると、そこから声が聞こえて来た。





「うわあぁ〜ん!!どうしてですかっ…これは、いじめですか?!」



「山田さんっ、どうしたの?!」




彼女がそこにいた、ということよりも涙を流している方の驚きが大きくて。
すぐに山田さんの方へ駆け寄ると、彼女も俺に気付いたようで勢いよく抱きついてきた。





「相馬さ〜ん!!どうして、どこにもいなかったんですか〜どこにいたんですかぁああ〜会えないかと思ったじゃないですか〜!!」




ぐしゃぐしゃになって泣きながら「相馬さんのバカ〜」と彼女は俺をバンバンと叩く。
そんな彼女をの頭を「よしよし」と優しく撫でてあげる。




「俺を探してたの?」




そう、尋ねると叩いていた手が止まる。
俺の制服の裾をキュッと掴んで泣き顔を隠すために彼女は下を向いた。




「山田……相馬さんに会いたかったのに―……相馬さんが、どこにもいないから」




彼女の小さな声が聞こえる。


きっと、すれ違いになってしまったんだろう。
俺は山田さんを。彼女は俺を探していた。



俺に会いたくて探してくれていた。そのことが嬉しくて。
普段なら絶対に言わないような本音を素直に言っていた。




「俺もね、探してたんだ。山田さんのこと」




そう伝えると彼女の顔が俺に向き、「本当ですか?」と聞いてきた。
黙って頷くと彼女は嬉しそうに微笑んだ。





「やっと会えましたね」



「そうだね」




2013/07/04



 




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