「相馬さんっ!」
今日も、彼女の声がキッチンに響く。
「どうしたの、山田さん」
だけど、今日は珍しく佐藤くんは居なくて。
俺がキッチンを一人でまわしているから正直、山田さんの相手をしている暇なんてない。
手を止めずに料理を作り続ける。
「相馬さん、山田のこと好きですか?」
「えっ?どうしたの、いきなり…」
彼女の唐突な質問に少しだけ慌て、リズムよく切っていた包丁が自分の指を切ろうとした。
少し速まった鼓動を落ち着かせ、また野菜を切っていく。
「山田は相馬さんのこと、大好きです!優しいし、是非とも山田のお兄さんに…」
(あぁ、ね…お兄さんって意味で)
内心、がっかりしている自分がいるなんて認めたくないけれど。
自称16歳の彼女と俺とでは、4歳も離れている。
(いや…実際のところは4歳以上、か)
俺のタイプは金髪で、胸が大きくて、頭が悪くない人、だったはずなんだけど。
……いつから、だろう。
「ま…さん!相馬さんっ!」
「ん?」
「山田の話を聞かないで、何ボーっとしてるんですかっ!」
「ごめん、ごめん」
ぷくっと頬を膨らませて俺を睨むその仕草は、いかにも子供で。
そんなお子様を気になっているのは20歳を過ぎた、大人。
……これ、小鳥遊くんのこと言えないじゃん。
「山田のこと、好きですか?」
無邪気に聞いてくる彼女に「そうだね、」とだけ返事を返した。
君の好きと、俺の好きは別のもの。
残酷な質問だね、これは。
2013/07/02
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