『ここにいるから』





コナンから新一の姿に戻ってから一週間が過ぎた。

灰原は宮野志保には戻らないらしい。
未だに小学生として、「灰原哀」として生活をしている。


蘭には俺がコナンだったということを正直に話した。


組織との決着もついたから
もう、蘭が危険な目に合わされる心配もない。


俺がコナンになって工藤新一は蘭の傍から姿を消し、蘭を不安にさせた。
そして今度はコナンの姿から新一に戻って江戸川コナンは蘭の前から姿を消した。


コナンの姿で最後に「さよなら。」と言った時、蘭はすごく悲しい目をしていた。
必死に笑顔を作りながら…


これ以上、蘭を悲しませたくない…
隠す必要も、もうないのだから―…


「蘭?」


家に訪ねてきた蘭はソファーに座っている。
俺は蘭のために買っておいた紅茶を入れ、座っている蘭に
紅茶の入ったカップを差し出した。



「…ありがとう」


蘭は俺からカップを受け取り、紅茶を一口飲んだ。


「…。」

「…。」


二人の間に沈黙が流れる。


蘭の顔を見て、はっとした。
ぼーっとして、どこか遠くを見つめている蘭。



こんなに不安にさせてしまったのも俺のせい。

蘭に大きな負担をかけてしまったのも俺。

きっと蘭は俺がまたどこかへ行ってしまうのではないかと
心のどこかで思っているのかもしれない…



「蘭…」


俺はソファーに座っている蘭を後ろから抱きしめた。


「新一…?」


驚きが含まれた小さな声で俺の名前が呼ばれる。



「…俺はずっと蘭の傍にいるから。」



「…えっ?」と言う蘭の声が聞こえたが、俺は続ける。



「蘭、俺は…―『ここにいるから』」





「ありがとう、新一。」



その声は小さかったけれど、その声にはもう悲しみは含まれていなかった。


「ごめんな…心配かけちまって…」


そういって俺は後ろから抱きしめていた蘭の頬にキスをした。






※あとがき

新蘭の短編第二弾!!ちょい甘?
今回はコナンから新一に戻った後のお話を書いてみました。
蘭の不安と悲しみを新一はうまく取り除くことができましたね。
ちなみに新一が蘭を工藤宅に呼びました。
新一の両親は、海外に出張中。ということで、蘭にキスをしてしまった新一ですが誰にもばれることはありませんでした。「ばれたらよかったのに。」と思った方
ご期待に沿えず申し訳ございませんでした(笑


2011/12/05



 

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