『 ありがとうございます 』
「はぁ〜…真さん、いつになったら帰ってくるのかしら。」
親友を見ていたらふとそう思ってしまった。
新一くんはまだ帰ってこないけれど、最近の蘭は嬉しそう。
理由は電話だってことは、すぐに分かった。
最近、休み時間になるといつもだれかと電話してる。
あんなに嬉しそうに話してるんだから、きっと新一くんよね。
「あ〜ぁ、真さんの声が聞きたい」
会いたいなんて、無理なこと言わないから
せめて声だけでも聞きたい。
『修行に行ってきます。』と言われてから二ヶ月くらい経ったのかしら?
どこの山奥に行って修行をしているのか分からないけど、真さんからの電話は一回もない。
わたしの気持ちを伝えるのは、一方通行なメールだけ。
教室の窓の近くで電話をしている蘭はすごく嬉しそうで、すごく笑顔だった。
* * *
「嬉しいな〜」
『なんでです?』
「だって、とうとう明日なんだなって思って。きっと園子、喜ぶと思いますよ」
『…そうだと、いいです///』
「じゃあ、授業が始まっちゃうので切りますね」
『あ、はい。忙しいときにすいません』
「大丈夫ですよ。園子の喜ぶ顔が見れるんですから」
* * *
「園子〜」
「どうしたの?蘭」
「明日、京極さんの誕生日ね」
「…そうね」
ずっと前から選んだおそろいのペアストラップ。
渡したかったけど、きっと真さんには渡せない。
蘭…ごめんね。
今のわたしには、蘭がすごく羨ましいの…
* * *
真さんの誕生日、一緒にお祝いしたかったけれど無理だった。
真さんは帰ってくる気配もないし、連絡もこない。
わたしは仮病で学校を休んだ。
滅多に休むことのないわたしを蘭はすごく心配してくれた。
でも、学校に行く気にはなれなかった。
「…真さん」
一日中、ベッドの中にいた。
食事もあまりとらずに。
蘭からのメールが何回か来てたけど、見ることもなくそのまま寝てしまった。
ぱっと目が覚めたとき、もう夜だった。
時計を見ると、七時半過ぎ。
部屋の電気をつけていなかったから、辺りは暗い。
電気をつけると携帯がなった。
―『 真さん 』
かかってくるはずのない人からの電話に驚いたが、わたしは電話をとった。
「もしもし…」
「園子…さんですか?」
間違うことのない、真さんの声。
「今、外に出れますか?あの…下で待ってます」
そう言われて切れた電話をベッドの上に投げ捨てるように置いて、パジャマを着ていることなど忘れて外へ出た。
「真…さん?」
「修行が終わるまでは会わないって勝手に決めていたのですが…
どうしても会いたくなってしまい、来てしまいました」
照れ屋の真さんはわたしの目を見れていない。
「…今日、学校を休んだって聞きました。体の調子はもう、大丈夫ですか?」
「えっ?…誰がそんなこと」
「毛利さんです。」
「蘭…?」
「はい。僕に連絡をくれたのも、毛利さんなんです。
最近、園子さんの元気がないから会いに来て欲しいと…」
「真さん…!」
「…はい」
「すごく…会いたかった」
わたしは真さんに抱きついた。
真さんは驚いていたけど、わたしを受け入れてくれた。
「ありがとうございます。…僕もです」
すごく良い親友と、すごく大切な人を持つことが出来て、心は幸せに満ちていた。
夜、寝る前にわたしは一言だけのメールを蘭に送った。
『蘭、ありがとう。』
これからもわたしの親友でいてね。
あとがき…というか、おまけ。
「園子さん…あの、こんな薄着で男の前に出るのは僕だけにして下さいね」
「えっ?あ///パジャマ!」
「…まぁ、薄着をするなと言っても園子さんは元気ですから僕の言うことを聞くとは思いませんが」
「真さ〜ん///」
「…そんな園子さんも、好きですから」
なんていうか…真さんらしいというか、なんというか…(笑
普段は言わないけれど、『好き』っていう気持ちを伝えるとなれば直球で言いそうなイメージがあります。
初めての京園なので、雰囲気です…
雰囲気で楽しんでいただければ幸いです。
500HITありがとうございます。
2012/02/19
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